COBOLプログラムの一般的なエラーとデバッグ戦略

COBOL (Common Business-Oriented Language) は、数十年にわたり、特に金融機関や大企業の基幹システムで活躍してきたプログラミング言語です。その堅牢性と信頼性から、今なお多くの重要なシステムがCOBOLで稼働しています。しかし、どんなプログラミング言語でも、開発や保守の過程でエラーに遭遇することは避けられません。特にCOBOLに慣れていない開発者にとっては、独特の構文や仕様がエラーの原因となることもあります。

このブログ記事では、COBOLプログラミングでよく遭遇する一般的なエラーの種類とその原因、そして効果的な対処方法やデバッグ戦略について詳しく解説します。エラーメッセージの意味を理解し、適切なデバッグ手法を身につけることで、開発効率を向上させ、より安定したCOBOLアプリケーションを構築することを目指しましょう! 💪

エラーの種類:コンパイル時 vs 実行時

COBOLプログラムで発生するエラーは、大きく分けて「コンパイル時エラー」と「実行時エラー」の2種類があります。それぞれの特徴と原因を理解することが、問題解決の第一歩です。

実行時エラー (Runtime Errors / ABEND)

コンパイルは正常に完了したものの、プログラムを実行している最中に発生するエラーです。データの不整合、予期せぬ入力、メモリ不足、ファイルアクセスに関する問題などが原因となります。メインフレーム環境などでは「ABEND(Abnormal End:異常終了)」と呼ばれ、特定のコード(アベンドコード)が出力されることが一般的です。実行時エラーは、特定の条件下でのみ発生することがあり、原因究明が難しい場合もあります。

よくあるコンパイル時エラーと対処法 🤔

ここでは、COBOL初心者が特に遭遇しやすいコンパイル時エラーとその対処法を見ていきましょう。

1. ピリオド忘れ・END句忘れ

原因: COBOLでは、多くの文(ステートメント)の終わりにピリオド.が必要です。また、IF文やPERFORM文などの範囲を示すEND-IFEND-PERFORMを記述し忘れることも、よくあるミスです。特に処理がネスト(入れ子)になっていると忘れやすくなります。

対処法: コンパイラのエラーメッセージを確認し、指摘された行の周辺でピリオドやEND句が抜けていないか確認します。エディタの構文ハイライト機能やインデント(字下げ)を整えることで、文の対応関係が見やすくなり、ミスを発見しやすくなります。


* ピリオド忘れの例
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. SAMPLE1
ENVIRONMENT DIVISION. * <-- ピリオド忘れ
DATA DIVISION.
...

* END-IF忘れの例
IF WS-CONDITION = "A"
   MOVE "OK" TO WS-STATUS
* END-IF  <-- ここにEND-IFが必要
ELSE
   MOVE "NG" TO WS-STATUS.
        

2. 未定義項目・スペルミス (Undefined Data Item / Misspelling)

原因: COBOLでは、使用する変数(データ項目)をDATA DIVISIONで事前に定義する必要があります。定義されていない項目を使おうとしたり、定義した名前と異なるスペルで記述したりすると、コンパイラはその項目を見つけられずエラーとなります。

対処法: エラーメッセージで指摘された項目名が、DATA DIVISIONFILE SECTIONWORKING-STORAGE SECTIONLINKAGE SECTIONなど)で正しく定義されているか確認します。大文字・小文字の区別(環境による)や、ハイフン-とアンダースコア_の混同にも注意が必要です。テキストエディタの検索機能を使って、該当する変数名が正しく定義・使用されているかチェックするのも有効です。


DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-COUNTER    PIC 9(5) VALUE ZERO.

PROCEDURE DIVISION.
    ADD 1 TO WS-COUNTOR. * <-- スペルミス (COUNTERのはず)
        

3. レベル番号の誤り (Invalid Level Number)

原因: DATA DIVISIONでデータ項目を定義する際、階層構造を示すためにレベル番号(01, 05, 10…)を使用します。このレベル番号の付け方には規則があり、例えば、下位の項目が上位の項目より小さいレベル番号を持つことはできません。

対処法: データ項目の階層構造とレベル番号の付け方が正しいか確認します。通常、01レベルが集団項目または独立項目を表し、それ以下のレベル(02~49)が従属項目を表します。インデントを適切につけることで、階層構造が視覚的にわかりやすくなります。


DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 EMPLOYEE-RECORD.
   05 EMPLOYEE-ID   PIC X(10).
   03 EMPLOYEE-NAME PIC X(30). * <-- レベル番号の誤り (05より小さくできない)
        

4. 区域外参照 (Out of Area / Coding Sheet Violation)

原因: 古い形式のCOBOL(固定形式)では、コードを記述できる桁位置(カラム)にルールがあります。標識領域(7桁目)、A領域(8-11桁)、B領域(12-72桁)などがあり、例えばDIVISION名やSECTION名、段落名、01レベル項目などはA領域から、それ以外の文はB領域から書き始める必要があります。このルールに違反するとエラーになります。

対処法: 使用しているCOBOLの形式(固定形式か自由形式か)を確認し、固定形式の場合は各要素を正しい領域に記述しているか確認します。多くの開発環境では、桁位置のガイドが表示されたり、自動で整形されたりする機能があります。

5. データ型の不一致 (Type Mismatch)

原因: COBOLはデータ型に厳密な言語です。例えば、数字項目(PIC 9)に文字データ(PIC X)をMOVE(代入)しようとしたり、その逆を行ったりするとコンパイルエラーになります。

対処法: MOVE文や比較演算などで、扱っているデータ項目の型(PIC句)が適切か確認します。型変換が必要な場合は、適切な関数(例:NUMVAL)を使用するか、データ定義を見直します。


DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-NUM    PIC 9(5).
01 WS-CHAR   PIC X(10) VALUE "ABCDE".

PROCEDURE DIVISION.
    MOVE WS-CHAR TO WS-NUM. * <-- 型の不一致エラー
        

よくある実行時エラー(ABEND)と対処法 ⚠️

コンパイルが通っても安心はできません。実行時に発生するエラー(アベンド)は、プログラムのロジックや扱うデータに起因することが多く、原因特定に時間がかかることもあります。ここでは代表的なアベンドコードとその原因、対処法を紹介します。

1. S0C7: データ例外 (Data Exception)

概要: COBOLプログラマが最もよく遭遇すると言っても過言ではないエラーの一つです。数値項目(特にCOMP-3 / パック10進数形式で定義された項目)に対して、演算や比較を行おうとした際に、その項目に数値として不正なデータ(スペースや文字など)が含まれている場合に発生します。2000年代初頭のシステム移行プロジェクトなどでも、データ移行時のチェック漏れにより頻発した事例が見られました。

原因:

  • 数字項目(PIC 9, PIC S9, USAGE IS COMPUTATIONAL-3 など)に数字以外の値(スペース、NULL文字、英字など)が格納されている。
  • 項目が初期化されていない(VALUE句での初期値設定漏れや、INITIALIZE文の実行漏れ)。
  • ファイルからの読み込みデータや、画面・別プログラムからの受け渡しデータが想定と異なる形式になっている。
  • ACCEPT文で入力されたデータが数字でない。

対処法:

  • ダンプ解析: アベンド時に出力されるダンプ(メモリ内容のスナップショット)を解析し、エラーが発生した命令(オフセットアドレス)と、その命令が扱っていたデータ項目の内容を確認します。多くの環境では、コンパイルリストとダンプを突き合わせることで、問題の箇所と不正なデータ内容を特定できます。
  • コードレビュー: エラー箇所周辺のMOVE文、COMPUTE文、IF文などを確認し、不正なデータが混入する可能性のあるロジックがないかレビューします。特に、文字項目から数字項目へのMOVEや、初期化処理の漏れに注意します。
  • データチェックの強化: ファイル読み込み後や外部からのデータ受け取り時に、IF NUMERIC 条件などを用いてデータが数字であるかをチェックする処理を追加します。ACCEPT文を使用する場合は、入力されたデータが数字であることを確認するバリデーション処理を入れます。
  • 初期化の徹底: WORKING-STORAGE SECTIONで定義する項目には、可能な限りVALUE句で初期値を設定します。処理の開始時やループの開始前などにINITIALIZE文を使って関連する項目を初期化することも有効です。

DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-NUM1      PIC S9(5) COMP-3. * 初期値なし
01 WS-NUM2      PIC S9(5) COMP-3 VALUE 10.
01 WS-RESULT    PIC S9(7) COMP-3.

PROCEDURE DIVISION.
* WS-NUM1 が初期化されていないため、不定な値が入っている可能性がある
* この状態で演算を行うと S0C7 が発生するリスクがある
    COMPUTE WS-RESULT = WS-NUM1 + WS-NUM2.

* 対処例:演算前に初期化する
    INITIALIZE WS-NUM1. * もしくは MOVE ZERO TO WS-NUM1.
    COMPUTE WS-RESULT = WS-NUM1 + WS-NUM2.

* 対処例:データチェック
    IF WS-NUM1 IS NUMERIC AND WS-NUM2 IS NUMERIC
        COMPUTE WS-RESULT = WS-NUM1 + WS-NUM2
    ELSE
        DISPLAY "Error: Non-numeric data found."
        * エラー処理
    END-IF.
        

2. S0C4: 保護例外 (Protection Exception)

概要: プログラムがアクセス権限のないメモリ領域にアクセスしようとした場合に発生します。

原因:

  • テーブル(配列)の添え字(インデックス)が範囲外になっている(例:10個しか要素がないテーブルの11番目にアクセスしようとした)。
  • LINKAGE SECTIONで定義された項目に対応する実パラメータがCALL元から渡されていない、またはサイズが異なり、不正なアドレスを参照している。
  • PERFORM ... VARYINGなどで使用する添え字変数の初期化や増減処理に誤りがある。
  • レコード長を超えるデータをファイルに書き込もうとした(WRITE命令)。
  • CALL先のプログラムが見つからない(ロードモジュールが存在しない)。
  • JCLで指定されたファイル(DD文)が存在しない、またはアクセスできない状態でファイル操作(OPEN, READ, WRITEなど)を行おうとした。

対処法:

  • ダンプ解析: S0C7と同様に、ダンプを解析してエラー発生箇所を特定します。特にレジスタの内容を確認し、不正なアドレスがどこから来たのかを追跡します。
  • 添え字・指標の確認: テーブル操作(OCCURS句)を行っている箇所で、添え字や指標(INDEX)の値がテーブルの定義範囲内に収まっているか確認します。ループ処理の前後の添え字の値や、SEARCH文、PERFORM ... VARYING文のロジックを重点的にチェックします。
  • CALL文とLINKAGE SECTIONの確認: CALL文のUSING句で渡している引数の数、型、長さが、呼び出される側のプログラムのLINKAGE SECTIONおよびPROCEDURE DIVISION USING句の定義と完全に一致しているか確認します。
  • ファイル定義とJCLの確認: ファイルI/Oに関連する箇所でエラーが発生している場合、FILE SECTIONFD句の定義(特にRECORD CONTAINSBLOCK CONTAINS)と、JCL(DD文)でのファイル指定(データセット名、DCBパラメータなど)が一致しているか確認します。
  • 領域サイズの確認: 大きなテーブルや大量のデータを扱う場合、WORKING-STORAGE SECTIONで十分なメモリ領域が確保されているか確認します。メインフレーム環境では、JCLのREGIONパラメータの見直しが必要な場合もあります。

DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 MY-TABLE.
   05 MY-ELEMENT PIC X(10) OCCURS 10 TIMES INDEXED BY IDX.
01 SUBSCRIPT    PIC 9(3).

PROCEDURE DIVISION.
* 添え字が範囲外になる例 (1から10のはずが11になる)
    PERFORM VARYING SUBSCRIPT FROM 1 BY 1 UNTIL SUBSCRIPT > 10
        MOVE SPACES TO MY-ELEMENT(SUBSCRIPT)
* ここでSUBSCRIPTは11になっている
    END-PERFORM.
* このアクセスでS0C4が発生する可能性がある
    DISPLAY MY-ELEMENT(SUBSCRIPT).

* 指標を使った安全な例
    SET IDX TO 1.
    SEARCH MY-TABLE
        AT END
            DISPLAY "Element not found"
        WHEN MY-ELEMENT(IDX) = "TARGET"
            DISPLAY "Element found at index: " IDX
    END-SEARCH.
        

3. S0C1: 命令実行例外 (Operation Exception)

概要: CPUが命令として解釈できない不正なコードを実行しようとした場合に発生します。

原因:

  • ファイルがOPENされていない状態でREADWRITEを実行しようとした。
  • CALLしようとした先のプログラムが存在しない、またはロードに失敗した(Linkage Editorのエラーなど)。
  • プログラムのロジックエラーにより、データ領域を命令として実行しようとしてしまった(例:GO TO文の飛び先が不正)。
  • テーブルの添え字が範囲外になり、意図しないメモリ領域(データ領域など)を命令として実行しようとした。

対処法:

  • ファイル状態の確認: ファイルI/O命令の前に、ファイルが正しくOPENされているか確認します。OPEN文の実行を忘れていないか、OPENが失敗していないか(FILE STATUSコードを確認)をチェックします。
  • CALL文の確認: CALLしているプログラム名が正しいか、そのプログラムが実行環境に正しく配置(リンク)されているか確認します。
  • プログラムフローの確認: GO TO文やPERFORM文の流れを追い、意図しない箇所に処理が飛んでいないか確認します。特に、添え字やパラメータの値によって処理経路が変わる箇所に注意します。
  • ダンプ解析: S0C4と同様に、ダンプを解析してエラー発生直前の命令やレジスタの内容を確認し、なぜ不正なコードを実行しようとしたのかを突き止めます。

4. S0CB: 10進除算例外 (Decimal Divide Exception)

概要: ゼロ除算(0で割り算)を行おうとした場合に発生します。

原因: DIVIDE文やCOMPUTE文で、除数(割る数)となる項目にゼロが入っている。

対処法: 割り算を行う前に、除数となる項目がゼロでないことをIF文などでチェックします。ゼロの場合は、割り算をスキップするか、エラー処理を行います。


DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 DIVIDEND   PIC S9(7) VALUE 100.
01 DIVISOR    PIC S9(5) VALUE 0.
01 QUOTIENT   PIC S9(7).

PROCEDURE DIVISION.
* このままだと S0CB が発生する
*   DIVIDE DIVIDEND BY DIVISOR GIVING QUOTIENT.

* 対処法:ゼロチェックを行う
    IF DIVISOR NOT = ZERO
        DIVIDE DIVIDEND BY DIVISOR GIVING QUOTIENT
    ELSE
        DISPLAY "Error: Division by zero attempted."
        MOVE ZERO TO QUOTIENT  * または適切なエラー処理
    END-IF.
        

5. S0CA: 10進数桁あふれ例外 (Decimal Overflow Exception)

概要: 演算(加算、減算、乗算など)の結果が、結果を格納する項目の桁数(PIC句で定義されたサイズ)を超えてしまった場合に発生します。

原因: 計算結果を格納するデータ項目の桁数が不足している。

対処法:

  • 演算結果を格納するデータ項目のPIC句を見直し、十分な桁数を確保します。特に乗算では桁数が大きく増える可能性があるため注意が必要です。
  • ADD, SUBTRACT, MULTIPLY, DIVIDE文でON SIZE ERROR句を使用し、桁あふれが発生した場合の処理(エラーメッセージ表示、処理中断など)を記述します。
  • COMPUTE文でもON SIZE ERROR句が使用できます。

DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 NUM1      PIC 9(5) VALUE 99999.
01 NUM2      PIC 9(5) VALUE 1.
01 RESULT1   PIC 9(5). * 桁数が足りない (99999 + 1 = 100000)

PROCEDURE DIVISION.
* このままだと S0CA が発生する可能性がある
*   ADD NUM1, NUM2 GIVING RESULT1.

* 対処法1:結果項目の桁数を増やす
* 01 RESULT1   PIC 9(6).

* 対処法2:ON SIZE ERROR を使う
    ADD NUM1, NUM2 GIVING RESULT1
        ON SIZE ERROR
            DISPLAY "Error: Size error occurred during addition."
            * エラー処理
    END-ADD.
        

6. ファイルI/Oエラー (File Status Codes)

概要: ファイルのOPEN, CLOSE, READ, WRITE, REWRITE, DELETEなどの操作時に発生するエラーです。アベンドには直結しない場合もありますが、FILE STATUS句で指定した項目に2桁のコードが設定されるため、これを確認することでエラーの原因を特定できます。

よくあるFile Statusコードと原因:

コード 意味 主な原因
10 ファイルの終わりに到達 (End of File) 順次読み込み(READ)で、ファイルにこれ以上読み込むレコードがない。これは正常な終了を示すことが多い。
22 重複キーエラー (Duplicate Key) 索引ファイル(Indexed file)で、一意であるべきキーを持つレコードをWRITEまたはREWRITEしようとした。
23 レコードが見つからない (Record Not Found) 索引ファイルや相対ファイル(Relative file)で、指定したキーや相対レコード番号に対応するレコードが存在しない状態でREAD, REWRITE, DELETEしようとした。
24 ディスクスペース不足 (Disk Space Full) / 境界違反 ファイルへの書き込み中にディスクの空き容量がなくなった。または、相対ファイルや索引ファイルの境界を超えて書き込もうとした。
30 永続的エラー (Permanent Error) ハードウェア障害、OSエラー、ファイル破損など、回復不能なI/Oエラー。JCLのDD文とプログラムのSELECT句の指定が不一致(例:ファイル編成が違う)な場合などにも発生。
35 ファイルが見つからない (File Not Found) OPEN INPUTOPEN I-Oしようとしたファイルが存在しない。JCLのDD文の指定誤りや、ファイルが削除されている可能性。
39 ファイル属性不一致 (File Attribute Conflict) プログラムのSELECT句やFD句で指定したファイル属性(編成、レコード長、キー情報など)と、実際のファイルの属性が一致しない。
41 ファイルが既に開いている (File Already Open) 既にOPENされているファイルを再度OPENしようとした。
42 ファイルが開かれていない (File Not Open) CLOSE, READ, WRITEなどの操作を、OPENされていないファイルに対して行おうとした。
43 直前のREADが不成功 (READ Not Successful) DELETEREWRITEは、直前のREADが成功していることが前提。READがEOF(10)やエラーで失敗した後にこれらの操作を行おうとした。
44 レコード長エラー (Record Length Error) WRITEREWRITEで、FD句で定義されたレコード長を超える、または(可変長の場合)許容範囲外の長さのレコードを書き込もうとした。
46 READ試行エラー (Attempt to READ past EOF) ファイルの終端に達した後(FILE STATUS ’10’の後)に、さらにREADを実行しようとした。
47 ファイルモード不一致 (File Mode Mismatch – READ) INPUTまたはI-OモードでOPENされていないファイルに対してREADを実行しようとした。
48 ファイルモード不一致 (File Mode Mismatch – WRITE) OUTPUT, I-O, またはEXTENDモードでOPENされていないファイルに対してWRITEを実行しようとした。
49 ファイルモード不一致 (File Mode Mismatch – REWRITE/DELETE) I-OモードでOPENされていないファイルに対してREWRITEまたはDELETEを実行しようとした。
9x システム依存エラー/その他 OSやファイルシステム固有のエラー、COBOLランタイムシステムのエラーなど。詳細な原因は、システムのマニュアルや追加のエラーメッセージを確認する必要がある。例えば、’90’は論理エラー、’92’はロジックエラーなど。

対処法:

  • 各ファイルI/O命令の直後に、FILE STATUS句で指定した項目の値をチェックする処理を必ず記述します。
  • エラーコードに応じた処理(エラーメッセージ表示、処理中断、代替処理など)を実装します。特に’00’(正常終了)と’10’(EOF)以外はエラーとして扱うのが一般的です。
  • JCLのファイル定義(DD文)とプログラム内のファイル定義(SELECT句、FD句)に齟齬がないか、入念に確認します。
  • ファイルが存在すること、アクセス権限があることを確認します。

ENVIRONMENT DIVISION.
INPUT-OUTPUT SECTION.
FILE-CONTROL.
    SELECT INPUT-FILE ASSIGN TO INFILE
        FILE STATUS IS WS-INFILE-STATUS. * FILE STATUS句を追加
DATA DIVISION.
FILE SECTION.
FD INPUT-FILE
   RECORD CONTAINS 80 CHARACTERS.
01 INPUT-RECORD PIC X(80).
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-INFILE-STATUS PIC XX. * 2桁の英数字項目で定義
   88 INFILE-OK         VALUE "00".
   88 INFILE-EOF        VALUE "10".

PROCEDURE DIVISION.
    OPEN INPUT INPUT-FILE.
    IF NOT INFILE-OK
        DISPLAY "Error opening input file. Status: " WS-INFILE-STATUS
        STOP RUN
    END-IF.

    READ INPUT-FILE
        AT END
            MOVE "10" TO WS-INFILE-STATUS * EOFの場合もSTATUSに設定
    END-READ.

    PERFORM UNTIL INFILE-EOF
        IF NOT INFILE-OK *> '00'でも'10'でもない場合エラー
            DISPLAY "Error reading input file. Status: " WS-INFILE-STATUS
            CLOSE INPUT-FILE
            STOP RUN
        END-IF

        * レコード処理 ...

        READ INPUT-FILE
            AT END
                MOVE "10" TO WS-INFILE-STATUS
        END-READ
    END-PERFORM.

    CLOSE INPUT-FILE.
    IF NOT INFILE-OK
        DISPLAY "Error closing input file. Status: " WS-INFILE-STATUS
    END-IF.

    STOP RUN.
        

効果的なデバッグ戦略 💡

エラーの原因を特定し、修正するためには、体系的なデバッグアプローチが重要です。

  • メッセージとコードの理解: コンパイラが出力するエラーメッセージや、実行時エラーで示されるアベンドコード、ファイルステータスコードの意味を正確に理解することが基本です。
  • DISPLAY文の活用: 最もシンプルで古典的ながら、依然として強力なデバッグ手法です。処理の節目や変数の値が変化する箇所でDISPLAY文を挿入し、プログラムの実行状況や変数の内容を追跡します。「DISPLAY 'DEBUG: Paragraph-A START.'」や「DISPLAY 'DEBUG: WS-CUSTOMER-ID = ' WS-CUSTOMER-ID」のように、目印となる文字列と変数名を一緒に出力すると分かりやすくなります。
  • ダンプ解析: メインフレーム環境などでは、アベンド時にメモリダンプが出力されることが一般的です。ダンプリストとコンパイルリスト(変数や命令のアドレス情報が含まれる)を突き合わせることで、エラー発生時のプログラムの状態(レジスタ内容、変数値など)を詳細に把握できます。S0C7やS0C4などのメモリエラーでは特に有効です。
  • デバッガツールの利用: IBM Debug Tool、Micro Focus Animator、Fujitsu NetCOBOL Debuggerなど、多くのCOBOL開発環境には高機能なデバッガツールが用意されています。これらを使うと、以下のようなことが可能です。
    • ブレークポイント設定: プログラムの特定の行で実行を一時停止させる。
    • ステップ実行: 一行ずつプログラムを実行し、処理の流れを確認する。
    • 変数監視: 特定の変数の値をリアルタイムで表示・追跡する。
    • 値の変更: デバッグ中に変数の値を強制的に変更し、特定の条件下での動作をシミュレートする。
  • READY TRACE / RESET TRACE (旧): 古いCOBOL方言には、実行された段落名や文番号をトレース出力するREADY TRACE文と、それを解除するRESET TRACE文がありましたが、現在ではデバッガツールの利用が推奨されます。
  • 問題の切り分け: エラーが発生する最小限の条件を見つけるようにします。特定の入力データでのみ発生するのか、特定の処理ロジックを通った場合に発生するのかなどを切り分けることで、原因箇所を絞り込みやすくなります。
  • コードレビューとペアプログラミング: 自分だけでは気づかないロジックの誤りや単純なミスを、他の開発者に見てもらうことで発見できることがあります。

エラーを未然に防ぐために ✅

エラーを修正することも重要ですが、そもそもエラーを作り込まないための予防策も大切です。

  • コーディング規約の遵守: 変数名の命名規則、インデントスタイル、コメントの書き方など、一貫した規約に従うことで、コードの可読性が向上し、エラーを発見しやすくなります。
  • 初期化の徹底: 特に数値項目やテーブル項目は、使用前に必ず初期化(VALUE句、INITIALIZE文、MOVE ZEROなど)する習慣をつけましょう。S0C7エラーの多くは初期化漏れが原因です。
  • データ検証の実施: 外部から受け取るデータ(ファイル、画面入力、パラメータなど)は、期待通りの形式・範囲であるかを必ずチェックします。IF NUMERIC, IF ALPHABETICなどの条件式や、より詳細なバリデーションロジックを実装します。
  • ファイルステータスの確認: すべてのファイルI/O命令の後には、FILE STATUSコードを確認し、エラーハンドリングを行うことを徹底します。
  • モジュール化とテスト: 複雑な処理は適切な単位でサブルーチン(別プログラムや内部手続き)に分割し、各モジュールを個別にテストできるように設計します。これにより、テストが容易になり、問題発生時の原因特定も迅速になります。
  • 十分なテストケース: 正常系だけでなく、異常系(想定されるエラーパターン)や境界値(許容される最大値・最小値など)を含むテストケースを作成し、網羅的なテストを実施します。
  • 継続的な学習: COBOLの仕様やベストプラクティス、利用している開発環境の機能を学び続けることが、質の高いコードを書くための基礎となります。

まとめ

COBOLプログラミングにおけるエラーは、開発者にとって避けて通れない課題です。しかし、一般的なエラーの種類とその原因、そして効果的なデバッグ手法を理解していれば、恐れる必要はありません。コンパイル時エラーから実行時エラー(アベンド)まで、それぞれの特徴を把握し、DISPLAY文、ダンプ解析、デバッガツールなどを適切に使い分けることで、効率的に問題を解決できます。

さらに、エラーを未然に防ぐためのコーディング習慣(初期化の徹底、データ検証、ファイルステータス確認など)を身につけることが、長期的に見て高品質なCOBOLアプリケーションを維持する鍵となります。エラーは学びの機会と捉え、一つ一つの経験を次に活かしていきましょう! Happy COBOLing! 🎉