AI技術、特に自然言語処理や画像認識の発展に伴い、「ベクトルデータベース」への注目が高まっています。その中でも、オープンソースのベクトルデータベースとして人気を集めているのが Weaviate です。 Weaviateは、データをベクトルとして効率的に保存・検索することに特化しており、AIネイティブなアプリケーション開発を強力にサポートします。
この記事では、Python開発者向けに、Weaviateを操作するための公式ライブラリである Weaviate Pythonクライアント (weaviate-client) について、その基本から応用までを詳細に解説します。特に、パフォーマンスと開発者体験が大幅に向上した最新の v4クライアント を中心に説明を進めていきます。 ベクトル検索やRAG(Retrieval-Augmented Generation)に興味がある方、WeaviateをPythonプロジェクトに導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。✨
Weaviateとは?
Weaviateは、Go言語で書かれたオープンソースのベクトルデータベースです。非構造化データ(テキスト、画像、音声など)を数値ベクトル(Embedding)に変換し、そのベクトル間の類似度に基づいて高速な検索(ベクトル検索、セマンティック検索)を行うことができます。
従来のキーワード検索とは異なり、ベクトル検索はデータの「意味」を捉えて検索できるため、より関連性の高い結果を得ることが可能です。例えば、「犬の画像」で検索した場合、キーワード検索ではファイル名やタグに「犬」が含まれるものしか見つけられませんが、ベクトル検索では犬が写っている画像をその内容に基づいて見つけ出すことができます。🐶
Weaviateの特徴は以下の通りです:
- AIネイティブ: 機械学習モデル(Vectorizerモジュール)を組み込むことができ、データのベクトル化や分類などをデータベース内部で実行できます。これにより、開発者はベクトル化のプロセスを意識することなく、アプリケーション開発に集中できます。
- スケーラビリティ: クラウドネイティブな設計で、大量のデータや高負荷なクエリにも対応可能です。
- 柔軟性: スタンドアロンでの利用はもちろん、様々なモジュールを組み合わせることで機能を拡張できます(例:OpenAI, Cohere, Hugging Faceなどのモデル連携)。
- 多様な検索機能: ベクトル検索だけでなく、従来のキーワード検索(BM25F)や、両者を組み合わせたハイブリッド検索、さらには検索結果を元に文章生成を行う生成検索(RAG)もサポートしています。
Weaviateは、レコメンデーションシステム、セマンティック検索エンジン、質問応答システム、異常検知など、幅広いAIアプリケーションの基盤として活用されています。
Weaviate Pythonクライアント (v4) のインストール
Weaviate Pythonクライアントを利用するには、まずPython環境が必要です。公式にはPython 3.8以上がサポートされています (v4.11.3時点)。インストールはpipコマンドを使って簡単に行えます。
最新の安定版 (v4系) をインストールするには、以下のコマンドを実行します。v4クライアントはgRPCを内部的に利用することで、v3クライアントと比較して大幅なパフォーマンス向上が図られています。特にバッチ処理やクエリ速度が改善されています。
pip install -U weaviate-client
注意点: v4クライアントはWeaviateサーバーのバージョン 1.23.7 以降が必要です。また、v4クライアントはgRPCを使用するため、WeaviateサーバーのgRPCポート(デフォルト: 50051)への接続が許可されている必要があります。Docker ComposeでWeaviateを起動している場合は、`ports` の設定で `50051:50051` が公開されていることを確認してください。
もし以前のv3クライアントから移行する場合は、公式の 移行ガイド を参照してください。APIの設計が大きく変更されているため、コードの修正が必要です。
Weaviateへの接続 🔌
Pythonクライアントを使ってWeaviateインスタンスに接続する方法はいくつかあります。v4クライアントでは、接続方法に応じた便利なヘルパー関数が用意されています。
1. ローカルインスタンスへの接続
Docker Composeなどでローカルマシン上でWeaviateを実行している場合に最も一般的な方法です。
import weaviate
import os
# Weaviateがデフォルト設定 (http://localhost:8080, grpc://localhost:50051) で動作している場合
# 認証が無効な場合
client = weaviate.connect_to_local()
# Weaviateが異なるポートや認証設定で動作している場合
# client = weaviate.connect_to_local(
# host="localhost",
# port=8080,
# grpc_port=50051,
# auth_client_secret=weaviate.AuthApiKey(api_key="YOUR-WEAVIATE-API-KEY"), # 認証が必要な場合
# headers={
# "X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY"), # 外部APIキー(例: OpenAI)
# "X-Cohere-Api-Key": os.getenv("COHERE_APIKEY"),
# }
# )
try:
# 接続を確認
print(f"Client is ready: {client.is_ready()}")
# ここにWeaviate操作のコードを記述
finally:
# 接続を閉じる (v4クライアントでは重要!)
client.close()
print("Connection closed.")
v4クライアントでは、client.close()
を呼び出して接続を明示的に閉じることが推奨されています。`try…finally` ブロックを使用すると、エラーが発生した場合でも確実に接続が閉じられます。
2. Weaviate Cloud Services (WCS) への接続
Weaviateが提供するマネージドサービスであるWCS上のインスタンスに接続します。
import weaviate
import os
# WCSコンソールから取得した情報を設定
wcs_url = "YOUR-WCS-INSTANCE-URL" # 例: "https://my-sandbox-cluster.weaviate.network"
wcs_api_key = os.getenv("WCS_API_KEY")
openai_api_key = os.getenv("OPENAI_APIKEY") # 例としてOpenAIのAPIキー
client = weaviate.connect_to_wcs(
cluster_url=wcs_url,
auth_client_secret=weaviate.AuthApiKey(api_key=wcs_api_key),
headers={
"X-OpenAI-Api-Key": openai_api_key, # WCSで使用するモジュールに応じたAPIキー
}
)
try:
print(f"Client is ready: {client.is_ready()}")
# WCSインスタンスに対する操作
finally:
client.close()
print("Connection closed.")
WCSの場合、RESTのエンドポイントURLを指定するだけで、クライアントが自動的にgRPC接続も設定してくれます。
3. Embedded Weaviate への接続
アプリケーション内にWeaviateデータベースを直接組み込む方法です。小規模なプロジェクトやテスト環境で便利です。
import weaviate
import os
# 環境変数で永続化ディレクトリやバージョンを指定可能
# persistence_data_path = "./weaviate_data"
# version = "1.24.1" # 特定のバージョンを指定
client = weaviate.connect_to_embedded(
# version=version,
# persistence_data_path=persistence_data_path,
headers={
"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY"),
}
)
try:
print(f"Client is ready: {client.is_ready()}")
# Embedded Weaviateに対する操作
finally:
client.close()
print("Connection closed.")
Embedded Weaviate は、初回実行時にDockerイメージをダウンロードするため、少し時間がかかる場合があります。
4. 直接的な接続 (高度な設定)
ヘルパー関数を使わず、より詳細な接続パラメータを指定したい場合は、`WeaviateClient` クラスを直接インスタンス化します。
import weaviate
from weaviate.connect import ConnectionParams
from weaviate.auth import AuthApiKey
from weaviate.classes.init import AdditionalConfig, Timeout
import os
client = weaviate.WeaviateClient(
connection_params=ConnectionParams.from_params(
http_host="localhost",
http_port=8080,
http_secure=False,
grpc_host="localhost",
grpc_port=50051,
grpc_secure=False,
),
auth_client_secret=AuthApiKey(api_key="YOUR-WEAVIATE-API-KEY"), # 認証が必要な場合
additional_headers={
"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")
},
additional_config=AdditionalConfig(
timeout=Timeout(init=30, query=60, insert=120), # タイムアウト設定 (秒)
trust_env=False, # 環境変数からのSSL証明書読み込みを制御
),
skip_init_checks=False # 起動時の接続チェックをスキップするか
)
try:
# 直接インスタンス化した場合、手動でconnect()を呼び出す必要がある
client.connect()
print(f"Client is ready: {client.is_ready()}")
# 操作...
finally:
client.close()
print("Connection closed.")
スキーマ管理 (コレクションの定義) 🏛️
Weaviateにデータを格納する前に、「コレクション (Collection)」(旧バージョンではクラス (Class))のスキーマを定義する必要があります。スキーマは、格納するデータの構造(プロパティとそのデータ型)、使用するベクトル化モジュール(Vectorizer)、インデックス設定などを指定します。
v4クライアントでは、スキーマ定義がよりPythonicになり、型安全性が向上しました。`weaviate.classes.config` モジュール以下のクラスを使って定義します。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc # weaviate.classesのエイリアスとしてwvcを使用
import os
client = weaviate.connect_to_local(
headers={
"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY"),
}
)
try:
# コレクション名の指定
collection_name = "MyNewCollection"
# 既存のコレクションがあれば削除 (開発・テスト用)
if client.collections.exists(collection_name):
print(f"Deleting existing collection: {collection_name}")
client.collections.delete(collection_name)
print(f"Creating collection: {collection_name}")
# コレクションの作成
my_collection = client.collections.create(
name=collection_name,
# Vectorizerの設定: ここではOpenAIのtext-embedding-ada-002を使用
vectorizer_config=wvc.config.Configure.Vectorizer.text2vec_openai(),
# 生成モジュール(RAG用)の設定: ここではOpenAI (GPT-3.5 Turbo)を使用
generative_config=wvc.config.Configure.Generative.openai(),
# プロパティの定義
properties=[
wvc.config.Property(
name="title",
data_type=wvc.config.DataType.TEXT,
description="記事のタイトル",
# このプロパティをベクトル化に含めるか (デフォルト: True)
# skip_vectorization=False,
# このプロパティにベクトルインデックスを作成するか (デフォルト: True)
# index_filterable=True,
# index_searchable=True,
),
wvc.config.Property(
name="content",
data_type=wvc.config.DataType.TEXT,
description="記事の本文",
),
wvc.config.Property(
name="word_count",
data_type=wvc.config.DataType.INT,
description="記事の単語数",
skip_vectorization=True, # 単語数はベクトル化しない
index_filterable=True, # フィルタリング可能にする
index_searchable=False, # キーワード検索対象外にする
),
wvc.config.Property(
name="publish_date",
data_type=wvc.config.DataType.DATE,
description="公開日",
),
],
# 他のオプション:
# vector_index_config=wvc.config.Configure.VectorIndex.hnsw( ... ), # ANNインデックスの設定
# sharding_config=wvc.config.Configure.Sharding.multi_tenant( ... ), #シャーディング設定
# replication_config=wvc.config.Configure.Replication.simple(factor=3), # レプリケーション設定
)
print(f"Collection '{collection_name}' created successfully.")
# 作成されたコレクションのスキーマ情報を取得
schema = client.collections.get(collection_name).config.get()
print("\nCollection Schema:")
print(schema)
finally:
client.close()
上記の例では、`MyNewCollection` という名前のコレクションを作成しています。
- `vectorizer_config` で `text2vec_openai` を指定し、OpenAIのモデルを使ってテキストプロパティ (`title`, `content`) からベクトルを自動生成するように設定しています。APIキーは接続時の `headers` で渡します。
- `generative_config` で `openai` を指定し、後述する生成検索(RAG)でOpenAIのモデルを利用できるようにしています。
- `properties` で、格納するデータの各フィールド(プロパティ)の名前、データ型 (`TEXT`, `INT`, `DATE` など)、説明、ベクトル化やインデックス作成に関する設定を行っています。
- `skip_vectorization=True` とすると、そのプロパティはベクトル計算の対象外となります。
- `index_filterable=True` とすると、そのプロパティを後述するフィルタリング(`where`句)の条件として使用できます。
- `index_searchable=True` とすると、そのプロパティをキーワード検索(BM25F)の対象に含めることができます。
データ型には `TEXT`, `INT`, `NUMBER` (浮動小数点), `DATE`, `BOOL`, `UUID`, `GEO_COORDINATES`, `PHONE_NUMBER`, `BLOB`, そして他のコレクションへの参照を表す `CROSS_REFERENCE` などがあります。 Vectorizerには `text2vec-openai`, `text2vec-cohere`, `text2vec-huggingface`, `multi2vec-clip` (画像+テキスト), `img2vec-neural` など、様々なモデルやモジュールが用意されています。`none` を指定すれば、ベクトル化をWeaviate側で行わず、自前で計算したベクトルを登録することも可能です。
データ操作 (CRUD) 💾
スキーマを定義したら、データの挿入(Create)、取得(Read)、更新(Update)、削除(Delete)といった操作を行います。v4クライアントでは、コレクションオブジェクト(`client.collections.get(“CollectionName”)` で取得)を通してこれらの操作を実行します。
1. データ挿入 (Insert)
単一のオブジェクトを挿入するには、コレクションオブジェクトの `data.insert()` メソッドを使用します。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
import uuid
from datetime import datetime, timezone
client = weaviate.connect_to_local(
headers={"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")}
)
collection_name = "MyNewCollection"
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 挿入するデータ (辞書形式)
data_properties = {
"title": "Weaviate Python Client v4 解説",
"content": "新しいv4クライアントはgRPCを採用し、大幅に高速化されました...",
"word_count": 550,
"publish_date": datetime.now(timezone.utc) # UTCで日時を指定
}
# 単一オブジェクトの挿入
inserted_uuid = my_collection.data.insert(
properties=data_properties,
# uuid=uuid.uuid4() # UUIDを自分で指定することも可能
# vector=[0.1, 0.2, ...] # vectorizer=Noneの場合、ベクトルを直接指定
)
print(f"Object inserted with UUID: {inserted_uuid}")
# 複数オブジェクトを一括挿入 (insert_many)
data_objects_to_insert = [
wvc.data.DataObject(
properties={
"title": "ベクトル検索の基本",
"content": "ベクトル検索は意味的な類似性に基づいてデータを検索します。",
"word_count": 300,
"publish_date": datetime(2024, 1, 1, 10, 0, 0, tzinfo=timezone.utc)
},
# uuid=uuid.uuid5(uuid.NAMESPACE_DNS, "vector-search-basics") # UUIDを指定
),
wvc.data.DataObject(
properties={
"title": "RAGとは何か?",
"content": "Retrieval-Augmented Generationは、検索と生成を組み合わせた技術です。",
"word_count": 420,
"publish_date": datetime(2024, 2, 15, 14, 30, 0, tzinfo=timezone.utc)
}
# vector=... # vectorizer=noneの場合
)
]
insert_result = my_collection.data.insert_many(data_objects_to_insert)
print("\nMultiple objects inserted:")
if insert_result.has_errors:
print(f" Errors occurred: {insert_result.errors}")
else:
print(f" Successfully inserted {len(insert_result.all_responses)} objects.")
for i, resp in enumerate(insert_result.all_responses):
print(f" - Object {i+1} UUID: {resp}")
finally:
client.close()
`data.insert()` は挿入されたオブジェクトのUUIDを返します。`data.insert_many()` は複数の `DataObject` をリストで受け取り、一括で挿入します。`DataObject` を使うことで、プロパティだけでなくUUIDやベクトルも個別に指定できます。`insert_many` の戻り値 (`BatchObjectReturn`) で、エラーの有無や各オブジェクトの挿入結果を確認できます。
バッチ挿入 (Batching)
大量のデータを効率的に挿入するには、バッチ処理が不可欠です。v4クライアントでは、より柔軟なバッチ設定が可能になりました。コレクションオブジェクトの `batch.dynamic()` や `batch.fixed_size()`, `batch.rate_limit()` をコンテキストマネージャ (`with`) と組み合わせて使用します。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
import time
client = weaviate.connect_to_local(
headers={"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")}
)
collection_name = "MyNewCollection"
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 大量のサンプルデータ (実際にはファイルから読み込むなど)
articles_data = [
{
"title": f"Article Title {i}",
"content": f"This is the content for article {i}. " * 10,
"word_count": 100 + i,
"publish_date": datetime(2024, 3, i % 30 + 1, tzinfo=timezone.utc)
} for i in range(1, 101) # 100件のデータ
]
start_time = time.time()
print("\nStarting batch import...")
# Dynamic Batching: Weaviateがバッチサイズを自動調整 (推奨)
with my_collection.batch.dynamic() as batch:
for data in articles_data:
batch.add_object(
properties=data
# uuid=...
# vector=...
)
# コンテキストマネージャを抜ける際に自動的にフラッシュされる
# Fixed Size Batching: バッチサイズを固定 (例: 10件ごと)
# with my_collection.batch.fixed_size(batch_size=10) as batch:
# for data in articles_data:
# batch.add_object(properties=data)
# Rate Limit Batching: 1分あたりのオブジェクト数を制限 (例: 1分あたり50件)
# 外部APIのレート制限対策に有効
# with my_collection.batch.rate_limit(requests_per_minute=50) as batch:
# for data in articles_data:
# batch.add_object(properties=data)
end_time = time.time()
print(f"Batch import finished in {end_time - start_time:.2f} seconds.")
# バッチ処理結果の確認 (エラーハンドリング)
if batch.number_errors > 0:
print(f"Errors occurred during batch import: {batch.errors}")
finally:
client.close()
`batch.dynamic()` は、Weaviateサーバーがネットワーク状況などを考慮して最適なバッチサイズを動的に決定するため、多くの場合で推奨されます。 `batch.fixed_size()` は、指定した件数ごとにデータを送信します。 `batch.rate_limit()` は、外部API(特にVectorizerとして利用する場合)のレート制限を超えないように、1分あたりのリクエスト数を制御したい場合に便利です。 バッチ処理中に発生したエラーは `batch.number_errors` や `batch.errors` で確認できます。
2. データ取得 (Read/Fetch)
UUIDを指定して特定のオブジェクトを取得するには `data.fetch_object_by_id()` を使用します。複数のUUIDを指定する場合は `data.fetch_objects()` を使います。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
client = weaviate.connect_to_local()
collection_name = "MyNewCollection"
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 挿入時に取得したUUID、または検索で見つけたUUIDを使う
target_uuid = inserted_uuid # 上の挿入例で取得したUUID
# UUIDを指定して単一オブジェクトを取得
fetched_object = my_collection.data.fetch_object_by_id(uuid=target_uuid)
if fetched_object:
print("\nFetched Object by UUID:")
print(f" UUID: {fetched_object.uuid}")
print(f" Properties: {fetched_object.properties}")
# print(f" Vector: {fetched_object.vector}") # ベクトルも取得可能 (別途指定が必要な場合あり)
else:
print(f"\nObject with UUID {target_uuid} not found.")
# 複数のUUIDで取得
uuids_to_fetch = [inserted_uuid, insert_result.all_responses[0]] # insert_manyの結果など
fetched_objects = my_collection.data.fetch_objects(limit=len(uuids_to_fetch)) # limitで最大数を指定
print("\nFetched Multiple Objects by UUIDs:")
for obj in fetched_objects.objects:
print(f" UUID: {obj.uuid}, Title: {obj.properties.get('title')}")
finally:
client.close()
検索については、次のセクションで詳しく説明します。
3. データ更新 (Update)
既存のオブジェクトのプロパティを更新するには `data.update()` を使用します。更新したいプロパティのみを指定します。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
client = weaviate.connect_to_local()
collection_name = "MyNewCollection"
target_uuid = inserted_uuid # 更新対象のUUID
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 更新するプロパティ
updated_properties = {
"title": "Weaviate Python Client v4 完全解説 (更新版)",
"word_count": 600
}
# オブジェクトの更新
my_collection.data.update(
uuid=target_uuid,
properties=updated_properties,
# vector=[...] # ベクトルを更新する場合
)
print(f"\nObject {target_uuid} updated.")
# 更新後のオブジェクトを確認
updated_object = my_collection.data.fetch_object_by_id(uuid=target_uuid)
if updated_object:
print("Updated Properties:")
print(updated_object.properties)
finally:
client.close()
`data.replace()` を使うと、指定したプロパティ以外は削除され、指定したプロパティで完全に置き換えられます。
4. データ削除 (Delete)
UUIDを指定して単一のオブジェクトを削除するには `data.delete_by_id()` を使用します。複数のオブジェクトを条件で削除する場合は `data.delete_many()` を使用します(フィルタリングの知識が必要)。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
client = weaviate.connect_to_local()
collection_name = "MyNewCollection"
uuid_to_delete = insert_result.all_responses[1] # insert_manyで追加した2番目のオブジェクトのUUID
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# UUIDを指定して単一オブジェクトを削除
my_collection.data.delete_by_id(uuid=uuid_to_delete)
print(f"\nObject {uuid_to_delete} deleted.")
# 削除されたか確認 (fetch_object_by_id は None を返すはず)
deleted_obj_check = my_collection.data.fetch_object_by_id(uuid=uuid_to_delete)
if not deleted_obj_check:
print(f"Confirmed: Object {uuid_to_delete} no longer exists.")
# 条件に一致する複数オブジェクトを削除 (例: word_countが150未満のものを削除)
# delete_many には Filter が必要
delete_filter = wvc.query.Filter.by_property("word_count").less_than(150)
delete_result = my_collection.data.delete_many(
where=delete_filter
)
print(f"\nDeleted {delete_result.successful} objects matching the filter.")
print(f"Failed to delete {delete_result.failed} objects.")
if delete_result.failed > 0:
print(f"Errors: {delete_result.errors}")
finally:
client.close()
`delete_many()` では `where` パラメータにフィルタ条件を指定します。フィルタリングについては次の検索セクションで詳しく触れます。
検索クエリの実行 🔍
Weaviateの真価は、その強力な検索機能にあります。Pythonクライアント (v4) では、コレクションオブジェクトの `query` サブモジュールを使って様々な種類の検索を実行できます。v4ではクエリAPIも刷新され、より直感的で表現力豊かになりました。
1. ベクトル検索 (Vector Search / Semantic Search)
データの内容や意味に基づいて類似したオブジェクトを検索します。テキストによる検索 (`near_text`) や、ベクトルそのものによる検索 (`near_vector`) が可能です。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
client = weaviate.connect_to_local(
headers={"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")}
)
collection_name = "MyNewCollection"
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 検索クエリテキスト
query_text = "機械学習モデルのスケーリングについて"
print(f"\nPerforming near_text search for: '{query_text}'")
# near_text検索の実行
response = my_collection.query.near_text(
query=query_text,
limit=3, # 返却する結果の最大数
# certainty=0.7, # 類似度の閾値 (0から1)。distanceと排他的。
distance=0.3, # 距離の閾値 (小さいほど類似)。certaintyと排他的。
# return_metadata=wvc.query.MetadataQuery(uuid=True, distance=True, certainty=True), # UUIDや距離/類似度をメタデータとして取得
return_properties=["title", "publish_date", "word_count"] # 返却するプロパティを指定 (指定しない場合は全プロパティ)
)
print("\nNear Text Search Results:")
if not response.objects:
print(" No results found.")
else:
for obj in response.objects:
print(f" UUID: {obj.uuid}")
print(f" Title: {obj.properties['title']}")
print(f" Publish Date: {obj.properties['publish_date']}")
print(f" Word Count: {obj.properties['word_count']}")
# メタデータを要求した場合
if obj.metadata:
print(f" Distance: {obj.metadata.distance:.4f}")
# print(f" Certainty: {obj.metadata.certainty:.4f}")
print("-" * 10)
# near_vector検索 (ベクトルが分かっている場合)
# target_vector = [0.1, 0.2, ..., 0.9] # 検索に使用するベクトル
# response_vec = my_collection.query.near_vector(
# near_vector=target_vector,
# limit=3,
# distance=0.3,
# return_metadata=wvc.query.MetadataQuery(distance=True),
# return_properties=["title"]
# )
# print("\nNear Vector Search Results:")
# for obj in response_vec.objects:
# print(f" Title: {obj.properties['title']}, Distance: {obj.metadata.distance:.4f}")
finally:
client.close()
`near_text` は、指定された `query` テキストを、コレクション作成時に設定したVectorizer(この例では `text2vec-openai`)を使ってベクトル化し、そのベクトルに近いオブジェクトを探します。 `limit` で取得件数を制限し、`certainty` または `distance` で類似度の閾値を設定できます(両方は指定できません)。`certainty` は類似度(1に近いほど類似)、`distance` はベクトル間の距離(0に近いほど類似)を表します。どちらを使うかは、使用するベクトルインデックスの種類や好みによります。 `return_metadata` で、UUID、距離、類似度などのメタデータを取得できます。 `return_properties` で取得するプロパティを絞り込むと、レスポンスサイズを小さくできます。
2. ハイブリッド検索 (Hybrid Search)
ベクトル検索(意味的な類似性)と従来のキーワード検索(BM25Fアルゴリズムによるテキストマッチング)を組み合わせて、両方の長所を活かした検索を行います。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
client = weaviate.connect_to_local(
headers={"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")}
)
collection_name = "MyNewCollection"
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 検索クエリテキスト
query_text = "python クライアント"
# キーワード検索用のクエリ (ベクトル検索と同じでも良い)
keyword_query = "python client"
print(f"\nPerforming hybrid search for: '{query_text}' (keyword: '{keyword_query}')")
# hybrid検索の実行
response = my_collection.query.hybrid(
query=query_text, # ベクトル検索用のクエリ
query_properties=["title", "content"], # キーワード検索の対象プロパティ (指定しなければ全TEXTプロパティ)
# alpha=0.75, # ベクトル検索の重み (0から1、デフォルト: 0.5)。1で純粋なベクトル検索、0で純粋なキーワード検索。
limit=5,
return_metadata=wvc.query.MetadataQuery(score=True), # ハイブリッド検索では score (統合スコア) が返される
return_properties=["title", "word_count"]
)
print("\nHybrid Search Results:")
if not response.objects:
print(" No results found.")
else:
for obj in response.objects:
print(f" UUID: {obj.uuid}")
print(f" Title: {obj.properties['title']}")
print(f" Word Count: {obj.properties['word_count']}")
if obj.metadata:
print(f" Score: {obj.metadata.score:.4f}") # 統合スコア
print("-" * 10)
finally:
client.close()
`hybrid` メソッドを使用します。`query` はベクトル検索部分に使われ、`query_properties` で指定されたプロパティに対してキーワード検索(BM25F)が行われます。 `alpha` パラメータでベクトル検索とキーワード検索の重み付けを調整できます。`alpha=0.5` がデフォルトで、両者を均等に扱います。`alpha=1.0` ならベクトル検索のみ、`alpha=0.0` ならキーワード検索のみと同じ結果になります。 メタデータとして `score` を要求すると、ベクトル検索とキーワード検索の結果を統合したスコアが返されます。
3. 生成検索 (Generative Search / RAG) 🤖
検索結果を大規模言語モデル(LLM)に入力し、質問に対する回答や要約などを生成させる機能です。Retrieval-Augmented Generation (RAG) とも呼ばれます。コレクション作成時に `generative_config` で生成モデル(例: OpenAI, Cohere, PaLM など)を指定しておく必要があります。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
client = weaviate.connect_to_local(
headers={"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")}
)
collection_name = "MyNewCollection" # generative_configでOpenAIが設定されている前提
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# 生成検索の質問
question = "Weaviate Pythonクライアントv4の主な変更点は何ですか?3つ挙げてください。"
print(f"\nPerforming generative search (single prompt) for: '{question}'")
# 単一プロンプトによる生成検索 (検索結果全体から回答を生成)
response_single = my_collection.generate.near_text(
query=question, # 検索のクエリとしても使用
limit=5, # 回答生成の元にする検索結果の数
single_prompt=f"以下の検索結果に基づいて、質問に答えてください。質問: {question}\n\n検索結果:\n{{result_properties}}", # {result_properties}が検索結果で置換される
# return_metadata=wvc.query.MetadataQuery(uuid=True)
)
print("\nGenerative Search (Single Prompt) Result:")
if response_single.generated:
print(f" Generated Answer:\n{response_single.generated}")
else:
print(" Could not generate an answer.")
# print("\nSource Objects:")
# for obj in response_single.objects:
# print(f" - UUID: {obj.uuid}, Title: {obj.properties['title']}")
# グループ化プロンプトによる生成検索 (各検索結果ごとに要約などを生成)
print(f"\nPerforming generative search (grouped task) for: '{question}'")
response_grouped = my_collection.generate.near_text(
query=question,
limit=3,
grouped_task="各記事の要点を30文字程度でまとめてください。", # 各結果に適用するタスク
# grouped_properties=["title", "content"], # 要約に使用するプロパティを指定 (任意)
return_metadata=wvc.query.MetadataQuery(uuid=True)
)
print("\nGenerative Search (Grouped Task) Results:")
if not response_grouped.objects:
print(" No results found.")
else:
for obj in response_grouped.objects:
print(f" UUID: {obj.uuid}")
print(f" Title: {obj.properties['title']}")
if obj.generated:
print(f" Generated Summary: {obj.generated}")
else:
print(" Could not generate summary for this object.")
print("-" * 10)
finally:
client.close()
生成検索は `generate` サブモジュール(例: `my_collection.generate.near_text(…)`)を使用します。これは、内部的にはまず指定された検索(この例では `near_text`)を実行し、その結果をLLMに渡して処理します。
- `single_prompt`: 検索結果全体をコンテキストとして、1つの回答を生成します。プロンプト文字列内に `{result_properties}` のようなプレースホルダーを含めることで、検索結果の情報を埋め込むことができます。質問応答システムなどに適しています。
- `grouped_task`: 各検索結果オブジェクトに対して個別にタスク(例: 要約、翻訳など)を実行します。結果オブジェクトの `generated` プロパティに各々の生成結果が格納されます。
生成検索はLLMへのAPI呼び出しを伴うため、通常の検索よりも時間がかかる場合があります。必要に応じて接続時のタイムアウト設定 (`Timeout(query=…)`) を調整してください。
4. フィルタリング (Filtering)
検索結果を特定のプロパティの値に基づいて絞り込む機能です。SQLの `WHERE` 句に相当します。`wvc.query.Filter` クラスを使って条件を作成し、各種検索メソッドの `filters` パラメータに渡します。
import weaviate
import weaviate.classes as wvc
import os
from datetime import datetime, timezone
client = weaviate.connect_to_local()
collection_name = "MyNewCollection"
try:
my_collection = client.collections.get(collection_name)
# フィルタ条件の作成
# 例1: word_count が 500 以上
filter1 = wvc.query.Filter.by_property("word_count").greater_or_equal(500)
# 例2: 公開日が 2024年3月1日以降
filter2 = wvc.query.Filter.by_property("publish_date").greater_or_equal(
datetime(2024, 3, 1, tzinfo=timezone.utc)
)
# 例3: title に "Python" を含む (部分一致)
filter3 = wvc.query.Filter.by_property("title").like("*Python*") # ワイルドカードを使用
# フィルタ条件の組み合わせ (AND / OR)
# word_count >= 500 AND publish_date >= 2024-03-01
combined_filter_and = filter1 & filter2
# combined_filter_and = wvc.query.Filter.all_of([filter1, filter2]) # これでも同じ
# word_count >= 500 OR title contains "Python"
combined_filter_or = filter1 | filter3
# combined_filter_or = wvc.query.Filter.any_of([filter1, filter3]) # これでも同じ
print("\nPerforming near_text search with filter (word_count >= 500)")
# フィルタを適用したベクトル検索
response = my_collection.query.near_text(
query="Weaviate クライアント",
limit=5,
filters=filter1, # 作成したフィルタを適用
return_properties=["title", "word_count"]
)
print("\nFiltered Search Results:")
if not response.objects:
print(" No results found matching the filter.")
else:
for obj in response.objects:
print(f" Title: {obj.properties['title']}, Word Count: {obj.properties['word_count']}")
finally:
client.close()
`Filter.by_property(“プロパティ名”)` で対象プロパティを指定し、`.equals()`, `.not_equal()`, `.greater_than()`, `.less_or_equal()`, `.like()`(ワイルドカード `*`, `?` 使用可能), `.is_none()`, `.contains_any([…])`, `.contains_all([…])` などのメソッドで条件を指定します。 複数のフィルタは `&` (AND) や `|` (OR) 演算子、または `Filter.all_of([…])`, `Filter.any_of([…])` で組み合わせることができます。 フィルタリングは、ベクトル検索、ハイブリッド検索、BM25検索など、多くの検索メソッドで利用可能です。スキーマ定義時に `index_filterable=True` が設定されているプロパティのみフィルタリングに使用できます。
これら以外にも、BM25F(キーワード検索)、オブジェクトIDによる検索、クロスリファレンス(オブジェクト間の関連)を使った検索、集計(Aggregation)など、多様なクエリが可能です。詳細は公式ドキュメントを参照してください。
その他の高度な機能 💡
Weaviate Pythonクライアントは、基本的なCRUD操作や検索以外にも、様々な高度な機能を提供しています。
-
非同期処理 (Asyncio): `WeaviateAsyncClient` クラスや `weaviate.use_async_…` ヘルパー関数を使用することで、`asyncio` を利用した非同期操作が可能です (v4.7.0以降)。これにより、特にI/Oバウンドな操作(ネットワーク通信が多い処理)において、アプリケーション全体のパフォーマンスを向上させることができます。
import weaviate import asyncio import os async def main(): async_client = await weaviate.use_async_with_local( headers={"X-OpenAI-Api-Key": os.getenv("OPENAI_APIKEY")} ) try: collection_name = "MyNewCollection" async_collection = async_client.collections.get(collection_name) response = await async_collection.query.near_text( query="非同期処理", limit=2 ) print("Async search results:") for obj in response.objects: print(f" - {obj.properties['title']}") finally: await async_client.close() # asyncio.run(main()) # イベントループで実行
- バックアップとリストア: データのバックアップを作成し、必要に応じてリストアする機能が提供されています。`client.backup.create()` や `client.backup.restore()` を使用します。バックエンドとしてS3互換ストレージやローカルファイルシステムなどを指定できます。
- マルチテナンシー: 1つのWeaviateクラスター内で、複数のテナント(顧客やプロジェクトなど)ごとにデータを分離して管理する機能です。スキーマ定義時に `sharding_config` で設定し、データ操作や検索時にテナント名を指定します。
- 認証と認可: APIキー認証やOIDC(OpenID Connect)による認証連携、ロールベースのアクセス制御(RBAC)など、セキュリティ機能も充実しています。
- クロスリファレンス: オブジェクト間にリレーションシップ(関連)を設定し、それを辿るようなクエリを実行できます。グラフデータベース的な使い方も可能です。
まとめと次のステップ
この記事では、Weaviate Pythonクライアントライブラリ (v4) の基本的な使い方から、ベクトル検索、ハイブリッド検索、生成検索(RAG)、フィルタリングといった主要な機能までを解説しました。
WeaviateとそのPythonクライアントは、AIネイティブなアプリケーション開発において非常に強力なツールです。v4クライアントでは、パフォーマンスの向上と開発者体験の改善により、さらに使いやすくなりました。
次のステップとして:
- 実際に `pip install weaviate-client` して、サンプルコードを実行してみましょう。
- Weaviate Cloud Services (WCS) の無料サンドボックスを試してみるのも良いでしょう。
- あなたのデータに合わせてスキーマを設計し、データをインポートしてみましょう。
- 様々な検索クエリやパラメータを試して、最適な設定を見つけましょう。
- より詳しい情報や最新の機能については、Weaviate公式ドキュメントのPythonクライアントページ を参照してください。📚
ベクトルデータベースとPythonクライアントを活用して、あなたのプロジェクトに新たな可能性をもたらしましょう!Happy coding! 😊
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