はじめに:Playwrightとは?
Playwrightは、Microsoftによって開発されたオープンソースのブラウザ自動化およびテストフレームワークです。2020年に登場して以来、その高速性、信頼性、そして豊富な機能により、開発者やQAエンジニアの間で急速に人気を集めています。もともとはNode.js向けに開発されましたが、現在ではPython、Java、.NET (C#)など、複数の言語バインディングが提供されており、幅広い開発環境で利用可能です。
特にPythonコミュニティでは、従来のブラウザ自動化ツールであるSeleniumに代わる、あるいはそれを補完する強力な選択肢として注目されています。Playwrightは、単一のAPIでChromium(Google ChromeやMicrosoft Edgeのエンジン)、Firefox、WebKit(Safariのエンジン)という主要な3つのブラウザエンジンを制御できるクロスブラウザ対応が大きな特徴です。これにより、異なるブラウザ環境でのWebアプリケーションの動作確認(エンドツーエンドテスト、E2Eテスト)や、Webサイトからのデータ収集(Webスクレイピング)を効率的に行うことができます。
このブログ記事では、Python版のPlaywright (Playwright for Python) に焦点を当て、そのインストール方法から基本的な使い方、主要な機能、そして応用的なテクニックまで、詳細に解説していきます。Seleniumなどの既存ツールからの移行を検討している方や、これからブラウザ自動化を始めたい方にとって、Playwrightがいかに強力で使いやすいツールであるかをご理解いただければ幸いです。
Playwrightを選ぶ理由:そのメリット
なぜ多くの開発者がPlaywrightを選ぶのでしょうか? Seleniumなど他のツールと比較していくつかの顕著な利点があります。
- クロスブラウザ対応: 単一のAPIでChromium, Firefox, WebKitを操作できます。WebDriverのようなブラウザごとのドライバー管理が不要で、セットアップが容易です。
- 高速かつ信頼性の高い動作: Playwrightはブラウザと直接通信するアーキテクチャを採用しており、WebDriverプロトコルを介するSeleniumよりも一般的に高速に動作します。また、後述する自動待機機能により、テストの不安定さ(Flakiness)を大幅に削減します。
- 自動待機 (Auto-wait): Playwrightの最も強力な機能の一つです。要素が表示され、クリック可能になるなど、特定のアクションを実行できる状態になるまで自動的に待機します。これにより、
time.sleep()
のような明示的な待機処理をコードに挿入する必要性が大幅に減り、よりシンプルで信頼性の高いコードを書くことができます。 - モダンなWeb機能への対応: Shadow DOMの操作、ネットワークリクエストの傍受や変更、モバイルエミュレーション、ジオロケーション設定、権限管理など、現代的なWeb開発で必要とされる多くの機能に対応しています。
- 強力なツール群:
- Codegen: ブラウザ上での操作を記録し、対応するPlaywrightコード(Python含む)を自動生成します。テストコード作成の手間を大幅に削減できます。
- Playwright Inspector: 実行中のテストをステップ実行したり、セレクタを確認・デバッグしたりするためのGUIツールです。
- Trace Viewer: テスト実行の詳細なトレース(スクリーンショット、DOMスナップショット、ネットワークログ、コンソールログ、実行されたアクションなど)を記録・表示します。テストが失敗した際のデバッグに非常に役立ちます。
- 分離された実行環境 (Browser Contexts): 各テストは独立したブラウザコンテキスト(新しいブラウザプロファイルのようなもの)で実行されます。これにより、テスト間の干渉がなくなり、クリーンな状態でテストを開始できます。コンテキストの作成は非常に高速(数ミリ秒)です。Cookieやローカルストレージなどをテスト間で共有したい場合は、認証情報を保存して再利用することも可能です。
- APIテスト機能: ブラウザを介さずに直接APIリクエストを送信し、レスポンスを検証する機能も組み込まれています。これにより、UIテストとAPIテストを同じフレームワーク内で完結させることができます。
これらの特徴により、PlaywrightはE2Eテスト、Webスクレイピング、定型的なブラウザ操作の自動化など、幅広い用途で非常に効率的かつ強力なツールとなっています。
インストールとセットアップ
Playwright for Pythonの利用を開始するのは非常に簡単です。Python環境がセットアップされていることを前提とします (Python 3.8以上が推奨されています)。
1. Playwrightライブラリのインストール
まず、pipを使用してPlaywrightライブラリをインストールします。テストフレームワークとしてpytestを利用する場合、pytest-playwright
プラグインをインストールすると便利です。これにより、pytestのフィクスチャなどを通じてPlaywrightを簡単に利用できるようになります。
# pytestを使用する場合 (推奨)
pip install pytest-playwright
# Playwrightライブラリのみをインストールする場合
pip install playwright
(2025年2月11日時点の情報によると、E2Eテストにはpytest-playwright
の利用が推奨されています)
2. ブラウザバイナリのインストール
次に、Playwrightが操作するブラウザ(Chromium, Firefox, WebKit)のバイナリファイルをインストールします。以下のコマンドを実行すると、必要なブラウザバイナリがダウンロード・セットアップされます。
playwright install
特定のブラウザのみをインストールしたい場合は、ブラウザ名を指定できます。
# Chromiumのみインストール
playwright install chromium
Linux環境などで依存関係の問題が発生する場合、--with-deps
オプションを付けて実行すると、必要なOSパッケージのインストールも試みます(管理者権限が必要な場合があります)。
playwright install --with-deps
これで、Playwrightを使用する準備が整いました。インストールされたバージョンは以下のコマンドで確認できます。
playwright --version
# または
python -m playwright --version
Jupyter Notebook/Lab環境での注意点
Jupyter環境のようなイベントループが既に実行されている環境でPlaywrightの同期APIを使用する場合、nest_asyncio
ライブラリが必要になることがあります。
pip install nest_asyncio
そして、コードの先頭で以下を実行します。
import nest_asyncio
nest_asyncio.apply()
ただし、可能であればJupyter環境でもPlaywrightの非同期APIを使用することが推奨されます。
基本的な使い方
Playwright for Pythonは、同期APIと非同期APIの両方を提供しています。ここでは、より直感的に理解しやすい同期APIを使って基本的な操作を説明します。非同期APIはasyncio
と組み合わせて使用し、より高度な並行処理に適しています。
同期APIの基本構造
同期APIを使用する場合、通常with sync_playwright() as p:
というコンテキストマネージャを使います。これにより、Playwrightのプロセスが適切に開始・終了されます。
from playwright.sync_api import sync_playwright
def run(playwright): # ブラウザの起動 (Chromiumを使用) # headless=True (デフォルト): ブラウザUIを表示しない (バックグラウンド実行) # headless=False: ブラウザUIを表示する browser = playwright.chromium.launch(headless=False) # 新しいブラウザコンテキストを作成 context = browser.new_context() # 新しいページ (タブ) を開く page = context.new_page() # 指定したURLに移動 page.goto("https://example.com") # ページのタイトルを取得して表示 print(f"ページタイトル: {page.title()}") # ページのスクリーンショットを撮る page.screenshot(path="example.png") print("スクリーンショットを example.png として保存しました。") # ブラウザを閉じる browser.close()
# Playwrightの実行
with sync_playwright() as playwright: run(playwright)
このコードは、Chromiumブラウザを起動し(ウィンドウが表示されるモードで)、”https://example.com” を開き、ページのタイトルをコンソールに出力し、スクリーンショットを “example.png” として保存してからブラウザを閉じます。
要素の操作
Webページ上の要素(ボタン、入力フィールド、リンクなど)を操作するには、まず要素を特定するためのセレクタを使用し、次にロケータ (Locator) を取得します。ロケータは、ページ上の要素を見つけて操作するためのオブジェクトです。PlaywrightはCSSセレクタ、XPathセレクタ、テキスト内容、Playwright固有のテストIDなど、様々なセレクタをサポートしています。
page.locator()
メソッドを使ってロケータを取得し、それに対して.click()
, .fill()
, .inner_text()
などのアクションを実行します。
from playwright.sync_api import sync_playwright, expect
def run(playwright): browser = playwright.chromium.launch(headless=False, slow_mo=50) # slow_moで操作を少し遅くする context = browser.new_context() page = context.new_page() page.goto("https://www.google.com/") # CSSセレクタで検索ボックスを特定し、テキストを入力 search_box = page.locator('textarea[name="q"]') search_box.fill("Playwright Python") # Enterキーを押す (キーボード操作) search_box.press("Enter") # 検索結果が表示されるのを待機 (自動待機が働く) # 特定のテキストを含むリンクが表示されることを確認 (アサーション) # expect() は pytest-playwright を使う場合に便利 first_result_link = page.locator('a:has-text("Playwright")').first expect(first_result_link).to_be_visible() print(f"最初の結果のテキスト: {first_result_link.inner_text()}") # 最初の結果をクリック first_result_link.click() # 遷移後のページのタイトルを確認 print(f"遷移後のページタイトル: {page.title()}") expect(page).to_have_title("Fast and reliable end-to-end testing for modern web apps | Playwright") # 少し待機 (デモ用) page.wait_for_timeout(3000) # 3秒待機 browser.close()
with sync_playwright() as playwright: run(playwright)
この例では、Googleで “Playwright Python” と検索し、最初の検索結果のリンクをクリックして、遷移後のページのタイトルを確認しています。expect()
関数は、特定の条件が満たされるまで自動的に待機し、検証(アサーション)を行うための強力な機能です (pytest-playwright使用時に特に便利)。
主要な機能詳解
Playwrightが提供する豊富な機能の中から、特に重要で便利なものをいくつか詳しく見ていきましょう。
自動待機 (Auto-wait)
Playwrightは、アクション(クリック、入力など)を実行する前に、対象の要素が以下の状態になるまで自動的に待ちます。
- 要素がDOMにアタッチされている
- 要素が表示されている (visible)
- 要素が安定している (アニメーションなどが完了している)
- 要素がイベントを受け取れる状態にある
- 要素が有効になっている (enabled)
これにより、開発者は要素が表示されるのを待つための明示的なコード(例: time.sleep()
や複雑な待機条件)を書く必要がほとんどなくなり、テストコードがシンプルかつ堅牢になります。これが「不安定なテスト(Flaky Tests)」を減らす大きな要因です。
セレクタとロケータ (Selectors & Locators)
要素を特定するためのセレクタ戦略が豊富に用意されています。
セレクタタイプ | 例 | 説明 |
---|---|---|
CSSセレクタ | page.locator("button#submit") | 標準的なCSSセレクタ。 |
XPathセレクタ | page.locator("//button[@id='submit']") | XML Path Languageに基づいたセレクタ。 |
テキスト内容 | page.locator("text=ログイン") page.get_by_text("ログイン") | 表示されているテキストに基づいて要素を特定。get_by_role などが推奨される場合が多い。 |
ロール (ARIA Role) | page.get_by_role("button", name="ログイン") | アクセシビリティに基づいたセマンティックなセレクタ。推奨される方法の一つ。 |
ラベル (Label) | page.get_by_label("ユーザー名") | フォーム要素に関連付けられた<label> タグのテキストで特定。 |
プレースホルダ | page.get_by_placeholder("パスワードを入力") | 入力フィールドのplaceholder 属性値で特定。 |
代替テキスト (Alt text) | page.get_by_alt_text("ロゴ画像") | 画像のalt 属性値で特定。 |
タイトル (Title) | page.get_by_title("設定を開く") | 要素のtitle 属性値で特定。 |
テストID (Test ID) | page.get_by_test_id("submit-button") | data-testid 属性など、テスト用に付与されたIDで特定。テストの堅牢性を高めるために推奨される。 |
page.locator()
で取得したロケータは、要素が見つからない場合でもすぐにはエラーにならず、後続のアクション(.click()
など)が実行される際に、設定されたタイムアウト時間(デフォルト30秒)まで要素の出現を待ち続けます(自動待機)。expect()
と組み合わせることで、特定の状態になるまで待機し、検証を行うことができます。
ブラウザコンテキスト (Browser Contexts)
ブラウザコンテキストは、独立したセッション(クッキー、ローカルストレージ、キャッシュなどが分離された状態)を提供します。これはブラウザの「シークレットモード」ウィンドウに似ています。
- テストの分離: 各テストを新しいコンテキストで実行することで、テスト間の依存関係や状態の干渉を防ぎ、信頼性の高いテストを実現します。
pytest-playwright
プラグインはデフォルトで各テストを新しいコンテキストで実行します。 - 複数ユーザーシナリオ: 1つのテスト内で複数のコンテキストを作成し、それぞれ異なるユーザーとしてログインさせるといったシナリオを簡単に実現できます。
- 高速なセットアップ: 新しいコンテキストの作成は非常に軽量(数ミリ秒)で、オーバーヘッドはほとんどありません。
- 認証情報の再利用: ログイン状態などをコンテキストに保存し、複数のテストで再利用することができます。これにより、各テストでログイン処理を繰り返す必要がなくなり、テスト全体の実行時間を短縮できます。 (例:
context.storage_state(path="state.json")
で保存、browser.new_context(storage_state="state.json")
で読み込み)
# ログイン状態を保存する例
def save_login_state(playwright): browser = playwright.chromium.launch() context = browser.new_context() page = context.new_page() page.goto("https://your-login-page.com") page.get_by_label("ユーザー名").fill("your_username") page.get_by_label("パスワード").fill("your_password") page.get_by_role("button", name="ログイン").click() # ログイン後のページが表示されるのを待つ (例: ダッシュボード要素) page.locator("#dashboard").wait_for() # 認証情報をファイルに保存 context.storage_state(path="auth_state.json") print("認証情報を auth_state.json に保存しました。") browser.close()
# 保存した認証情報を使ってテストを実行する例
def run_test_with_auth(playwright): browser = playwright.chromium.launch() # 保存した認証情報を使ってコンテキストを作成 context = browser.new_context(storage_state="auth_state.json") page = context.new_page() # ログイン後のページに直接アクセス page.goto("https://your-app.com/dashboard") print(f"ログイン後のページタイトル: {page.title()}") # ここでテスト対象の操作を実行... browser.close()
with sync_playwright() as playwright: # 最初に一度だけログインして状態を保存 (必要に応じて実行) # save_login_state(playwright) # 保存した状態を使ってテストを実行 run_test_with_auth(playwright)
トレース機能 (Tracing)
テストの実行過程を詳細に記録し、後から分析するための強力な機能です。テストが失敗した場合の原因究明に非常に役立ちます。
- テスト実行時の各ステップ
- 各ステップ実行前後のDOMスナップショット
- ネットワークリクエストとレスポンス
- コンソールログ
- スクリーンショット
- 実行時の動画 (オプション)
これらの情報がすべてタイムライン上で同期され、専用のTrace Viewerで確認できます。pytest
で実行する場合、--tracing on
オプションをつけるだけで簡単にトレースを有効にできます。失敗時のみトレースを保存する --tracing retain-on-failure
も便利です。
# トレースを有効にしてpytestを実行
pytest --tracing on
# 失敗時のみトレースを保存
pytest --tracing retain-on-failure
トレースファイル (通常 `test-results` ディレクトリ内に `.zip` として保存される) は、以下のコマンドでTrace Viewerを開いて確認できます。
playwright show-trace trace.zip
コードジェネレータ (Codegen)
ブラウザ上で行った操作を記録し、それを再現するためのPlaywrightコード (Python含む) を自動生成するツールです。テストスクリプトの雛形作成や、特定の操作方法を確認したい場合に非常に便利です。
以下のコマンドで起動します。
# 特定のURLを開いてCodegenを開始
playwright codegen https://example.com
# 空のブラウザでCodegenを開始
playwright codegen
Codegenを実行すると、操作用のブラウザウィンドウと、生成されたコードが表示されるインスペクタウィンドウが開きます。ブラウザウィンドウで要素をクリックしたり、テキストを入力したりすると、対応するPythonコードがリアルタイムでインスペクタウィンドウに生成されます。生成されたコードはコピーして利用できます。
APIリクエストコンテキスト (APIRequestContext)
ブラウザを介さずに直接HTTP(S)リクエストを送信し、APIをテストするための機能です。UIテストと同じフレームワーク内でAPIテストも記述できるため、テスト戦略の幅が広がります。
- テストデータの準備(例: APIでテストユーザーを作成)
- サーバーサイドの状態検証(例: UI操作後にAPIでデータが正しく更新されたか確認)
- 純粋なAPIテスト
playwright.request
コンテキストを使用してAPIリクエストを作成・送信します。
from playwright.sync_api import sync_playwright
def test_api(playwright): # APIリクエスト用のコンテキストを作成 api_request_context = playwright.request.new_context( base_url="https://reqres.in" # ベースURLを設定しておくと便利 ) # GETリクエストを送信 response = api_request_context.get("/api/users/2") # レスポンスステータスを確認 print(f"ステータスコード: {response.status}") assert response.ok # ステータスコードが 2xx かどうかをチェック # レスポンスボディ (JSON) を取得して内容を確認 response_body = response.json() print(f"レスポンスボディ: {response_body}") assert response_body["data"]["id"] == 2 assert response_body["data"]["email"] == "janet.weaver@reqres.in" # POSTリクエストを送信 (データ付き) post_data = { "name": "morpheus", "job": "leader" } post_response = api_request_context.post("/api/users", data=post_data) print(f"POST ステータスコード: {post_response.status}") assert post_response.status == 201 # Created post_response_body = post_response.json() print(f"POST レスポンスボディ: {post_response_body}") assert post_response_body["name"] == "morpheus" assert "id" in post_response_body assert "createdAt" in post_response_body # APIコンテキストを破棄 (不要になったら) api_request_context.dispose()
with sync_playwright() as playwright: test_api(playwright)
pytest-playwright
を使用する場合、api_request_context
フィクスチャを利用できます。
高度な使い方と応用例
Playwrightは基本的な操作以外にも、より複雑なシナリオに対応するための高度な機能を提供しています。
ネットワークの傍受と変更
page.route()
メソッドを使うと、特定のURLパターンに一致するネットワークリクエストを傍受し、レスポンスを書き換えたり、リクエストを中止したり、リクエスト自体を変更したりできます。これは、バックエンドが未実装の場合のフロントエンドテスト、エラーケースのシミュレーション、広告やトラッキングスクリプトのブロックなどに役立ちます。
from playwright.sync_api import sync_playwright
def run(playwright): browser = playwright.chromium.launch() context = browser.new_context() page = context.new_page() # 特定の画像リクエストを傍受して中止する def handle_route(route): if route.request.resource_type == "image" and "logo" in route.request.url: print(f"ブロック中: {route.request.url}") route.abort() # リクエストを中止 else: route.continue_() # 他のリクエストは通常通り続行 page.route("**/*", handle_route) # すべてのリクエストを監視 # APIレスポンスを書き換える例 def mock_api_response(route): if "/api/user/profile" in route.request.url: print(f"APIレスポンスを書き換え中: {route.request.url}") mock_data = {"name": "Mock User", "email": "mock@example.com"} route.fulfill( status=200, content_type="application/json", json=mock_data # JSONデータを返す ) else: route.continue_() page.route("**/api/user/profile", mock_api_response) page.goto("https://example.com") # このページの読み込み中にルートハンドラが動作 # ... ページ操作 ... browser.close()
with sync_playwright() as playwright: run(playwright)
ファイルダウンロード・アップロード
ファイルのダウンロードやアップロードも簡単に自動化できます。
from playwright.sync_api import sync_playwright
def handle_downloads_and_uploads(playwright): browser = playwright.chromium.launch(headless=False) page = browser.new_page() page.goto("https://your-site-with-file-operations.com") # --- ファイルダウンロード --- # ダウンロード処理を開始する操作 (例: ダウンロードボタンをクリック) の前に # download イベントを待機する設定を行う with page.expect_download() as download_info: # ここでダウンロードを開始するアクションを実行 page.locator("#download-button").click() # download_info.value から Download オブジェクトを取得 download = download_info.value # ダウンロードしたファイルのパスを取得 (一時的なパスの場合あり) download_path = download.path() print(f"ダウンロード一時パス: {download_path}") # 任意の場所にファイルを保存 download.save_as("downloaded_file.zip") print("ファイルを downloaded_file.zip として保存しました。") # ダウンロードしたファイルの推奨ファイル名 print(f"推奨ファイル名: {download.suggested_filename}") # --- ファイルアップロード --- # input[type=file] 要素に対して set_input_files を使用 # 単一ファイルの場合 page.locator('input[type="file"]').set_input_files("path/to/your/upload_file.txt") # 複数ファイルの場合 page.locator('input[type="file"]').set_input_files(["path/to/file1.jpg", "path/to/file2.png"]) # アップロードボタンをクリックするなどの後続処理... page.locator("#upload-button").click() page.wait_for_timeout(3000) # デモ用に待機 browser.close()
with sync_playwright() as playwright: handle_downloads_and_uploads(playwright)
モバイルエミュレーション
特定のモバイルデバイス(画面サイズ、ユーザーエージェント、タッチイベントなど)をエミュレートしてテストを実行できます。browser.new_context()
にデバイス名を指定するか、詳細なパラメータを設定します。デバイス名は playwright.devices
で定義されています。
from playwright.sync_api import sync_playwright, devices
def emulate_mobile(playwright): # デバイス名で指定 (iPhone 13 Pro) iphone_13_pro = devices['iPhone 13 Pro'] browser = playwright.chromium.launch(headless=False) context = browser.new_context( **iphone_13_pro, # デバイス設定を展開して渡す locale='ja-JP', # ロケール設定 geolocation={'longitude': 139.7671, 'latitude': 35.6812}, # 位置情報 permissions=['geolocation'] # 位置情報利用の許可 ) page = context.new_page() page.goto("https://www.google.com/maps") # 地図サイトなどで確認 print("iPhone 13 Pro でエミュレート中...") page.screenshot(path="mobile_emulation.png") page.wait_for_timeout(5000) browser.close() # カスタム設定 browser = playwright.webkit.launch(headless=False) context = browser.new_context( viewport={'width': 375, 'height': 667}, device_scale_factor=2, user_agent='Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 13_5 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/13.1.1 Mobile/15E148 Safari/604.1', is_mobile=True, has_touch=True ) page = context.new_page() page.goto("https://example.com") print("カスタムモバイル設定でエミュレート中...") page.wait_for_timeout(3000) browser.close()
with sync_playwright() as playwright: emulate_mobile(playwright)
複数ページ、タブ、ウィンドウの操作
Playwrightは、新しいタブやポップアップウィンドウが開くシナリオも自然に扱うことができます。context.expect_page()
を使って新しいページが開くのを待機し、そのページオブジェクトを取得して操作します。
from playwright.sync_api import sync_playwright
def handle_multiple_pages(playwright): browser = playwright.chromium.launch(headless=False) context = browser.new_context() page = context.new_page() page.goto("https://your-site-with-popups.com") print(f"最初のページのタイトル: {page.title()}") # 新しいタブで開くリンクをクリックする操作を待機 with context.expect_page() as new_page_info: page.locator('a[target="_blank"]').click() # 新しいタブで開くリンクをクリック new_page = new_page_info.value # 新しいページが読み込まれるのを待つ (必要に応じて) new_page.wait_for_load_state() print(f"新しいページのタイトル: {new_page.title()}") # 新しいページで操作 new_page.locator("#some-element-on-new-page").fill("テキスト入力") # 元のページに戻って操作 page.bring_to_front() # 元のページをアクティブにする print(f"元のページに戻りました: {page.title()}") page.locator("#some-element-on-original-page").click() # すべてのページを取得 all_pages = context.pages print(f"現在開いているページの数: {len(all_pages)}") browser.close()
with sync_playwright() as playwright: handle_multiple_pages(playwright)
主なユースケース
Playwrightはその多機能性から、様々な用途で活用されています。
- エンドツーエンド (E2E) テスト: Webアプリケーションがユーザー視点で期待通りに動作するかを、ブラウザを自動操作して検証します。ログイン、フォーム入力、機能操作、表示確認など、一連のユーザーシナリオを自動化します。Playwrightの自動待機、堅牢なセレクタ、トレース機能などは、信頼性の高いE2Eテストの構築に大きく貢献します。pytestなどのテストフレームワークと組み合わせることで、効率的なテストスイートを構築できます。
- Webスクレイピング: Webサイトから特定の情報を自動的に抽出します。特に、JavaScriptによって動的にコンテンツが生成されるモダンなWebサイト(シングルページアプリケーションなど)のスクレイピングにおいて、Playwrightは非常に強力です。実際にブラウザを動作させてレンダリングされた後のDOMから情報を取得できるため、静的なHTMLを取得するだけでは難しいケースに対応できます。ネットワーク傍受機能を使って不要なリソース(画像、CSSなど)の読み込みをブロックすれば、スクレイピングの効率を上げることも可能です。
- ブラウザ操作の自動化 (RPA): 定期的なレポート作成のためのデータ収集、Webフォームへの自動入力、複数サイトからの情報集約など、繰り返し発生するブラウザベースの作業を自動化します。Codegen機能を使えば、専門的なプログラミング知識が少ないユーザーでも、簡単な自動化スクリプトを作成する手助けになります。
- Webサイトのヘルスチェック・監視: 定期的にWebサイトにアクセスし、特定の要素が表示されているか、特定の機能が正常に動作するかなどをチェックします。問題が発生した場合に通知を送るようなシステムも構築できます。
- スクリーンショット・PDF生成: Webページ全体や特定の要素のスクリーンショットを撮ったり、ページ全体をPDFとして保存したりするタスクにも利用されます。視覚的な回帰テストやレポート作成などに活用できます。
- APIテスト: 前述の通り、ブラウザを介さずに直接APIエンドポイントをテストする目的でも使用されます。UIテストとAPIテストを同一ツールで管理できるメリットがあります。
Playwright vs Selenium
ブラウザ自動化の分野で長年標準とされてきたSeleniumと比較して、Playwrightにはいくつかの違いと利点があります。どちらを選択するかは、プロジェクトの要件やチームのスキルセットによって異なりますが、近年Playwrightを選択するケースが増えています。
特徴 | Playwright | Selenium |
---|---|---|
開発元 | Microsoft (2020年~) | コミュニティ (2004年~) |
アーキテクチャ | WebDriverプロトコルを使わず、ブラウザのDevToolsプロトコルなどを介して直接通信 (一般に高速) | WebDriverプロトコル経由でブラウザと通信 (間にWebDriverサーバーが入る) |
セットアップ | playwright install で必要なブラウザバイナリを一括インストール。WebDriver不要。 | ライブラリのインストールに加え、各ブラウザ用のWebDriverのダウンロードと管理が必要。バージョン互換性に注意が必要。 |
自動待機 | 強力な自動待機機能が組み込まれており、明示的な待機処理が少ない。 | 基本的な待機機能はある (Implicit/Explicit Waits) が、Playwrightほど強力ではなく、より多くの明示的な待機処理が必要になる場合がある。 |
API | モダンで直感的。同期/非同期APIを提供。 | 長年の実績があるが、やや冗長な部分も。Selenium 4でAPIが改善。 |
実行速度 | 一般的にSeleniumより高速とされる。 | Playwrightより遅い傾向がある。 |
機能 | ネットワーク傍受、トレース、Codegen、APIテストなど、豊富な組み込み機能。 | 基本的なブラウザ操作が中心。高度な機能はサードパーティツールや独自実装が必要な場合が多い。Selenium Gridによる分散テストは強力。 |
対応ブラウザ | Chromium, Firefox, WebKit (Safari) | Chrome, Firefox, Safari, Edge, IE (サポート終了) など、より広範なブラウザ(WebDriverが存在すれば)。 |
コミュニティ・エコシステム | 急速に成長中だが、Seleniumに比べると歴史は浅い。 | 非常に成熟しており、情報量や関連ツールが豊富。 |
Playwrightが有利な点: セットアップの容易さ、実行速度、強力な自動待機、組み込みの高度な機能(ネットワーク、トレース、Codegen)、モダンなAPI。
Seleniumが有利な点: 長年の実績と成熟したコミュニティ、非常に広範なブラウザ・OS・言語サポート、豊富な既存のテスト資産やノウハウ。
新しいプロジェクトを開始する場合や、より高速で信頼性の高いテスト、モダンな機能を利用したい場合には、Playwrightは非常に有力な選択肢となります。一方で、既存のSeleniumベースのテスト資産が多い場合や、Playwrightがサポートしていない古いブラウザのテストが必要な場合は、Seleniumを引き続き利用する、あるいは併用するという選択も考えられます。
まとめと今後の展望
Playwright for Pythonは、現代的なWebアプリケーションの自動化とテストのための非常に強力で効率的なフレームワークです。クロスブラウザ対応、高速な実行、信頼性を高める自動待機機能、そしてCodegenやTrace Viewerといった開発を支援するツール群により、開発者やQAエンジニアの生産性を大幅に向上させることができます。
基本的なWebページの操作から、ネットワークリクエストの制御、モバイルエミュレーション、APIテストまで、幅広いニーズに対応できる柔軟性も魅力です。Seleniumと比較しても多くの利点があり、特に新規プロジェクトにおいては第一候補として検討する価値が十分にあります。
PlaywrightはMicrosoftによって活発に開発が続けられており、新しい機能の追加や改善が継続的に行われています。今後もWeb開発のトレンドに合わせて進化していくことが期待されます。
この記事が、Playwright for Pythonの導入や活用の一助となれば幸いです。ぜひ実際に試してみて、そのパワーを体験してください! Happy Automating!