サイバー攻撃を先回り!🕵️ 脅威ハンティング入門

受動的な防御だけじゃない、能動的なセキュリティ対策

ファイアウォールやウイルス対策ソフトを導入していれば安心…本当にそうでしょうか?🤔 日々進化し、巧妙化するサイバー攻撃は、既存のセキュリティ対策をすり抜けてくることがあります。そこで注目されているのが「脅威ハンティング(スレットハンティング)」です。

このブログでは、初心者の方にも分かりやすく、脅威ハンティングとは何か、なぜ重要なのか、どのように行われるのかを解説します。

🚀 脅威ハンティングとは?

脅威ハンティングとは、「すでに自社のネットワーク内に脅威が侵入しているかもしれない」という仮説のもとに、能動的にネットワークやシステムを探索し、潜んでいる未知の脅威や侵害の兆候(痕跡)を探し出す活動のことです。

従来のセキュリティ対策(ウイルス対策ソフト、ファイアウォール、侵入検知システム(IDS)など)は、主に既知の脅威パターンに基づいてアラートを出す「受動的」な防御です。しかし、脅威ハンティングは、アラートが出ていない状況でも、セキュリティアナリストなどが主体的に脅威を探しに行く「能動的」なアプローチを取ります。いわば、セキュリティの「狩人」のような活動ですね!🏹

このアプローチは、従来の対策では見逃してしまう可能性のある、高度で持続的な脅威(APT攻撃など)やゼロデイ攻撃(未知の脆弱性を利用した攻撃)を早期に発見するために非常に重要です。

🛡️ 従来のセキュリティ対策との違い

脅威ハンティングと、よく聞くセキュリティ用語との違いを見てみましょう。

項目 脅威ハンティング 従来のセキュリティ対策 (SIEM/SOCなど) ペネトレーションテスト インシデント対応
目的 未知・潜伏中の脅威を能動的に探索・発見 既知の脅威や異常を受動的に検知・アラート システムの脆弱性を発見・評価 (攻撃者目線での侵入テスト) 検知されたインシデントへの事後対応・復旧
タイミング 平時 (継続的・反復的) 常時監視 (アラート発生時) 定期的・必要に応じて インシデント発生後
アプローチ 能動的・仮説駆動型 受動的・アラート駆動型 能動的・攻撃シミュレーション 事後的・対応型
主な対象 検知をすり抜ける脅威、内部の不審な活動 既知のマルウェア、不正アクセス試行など システムや設定の既知・未知の弱点 発生したセキュリティ侵害

脅威ハンティングは、SIEM (Security Information and Event Management) や SOC (Security Operation Center) が行う監視活動を補完するものです。SIEM/SOCが検知したアラートを調査するだけでなく、アラートがなくても「何かおかしいぞ?」という仮説を立てて調査を進めます。

🗺️ 脅威ハンティングのプロセス

脅威ハンティングは、一般的に以下のようなプロセスで進められます。

  1. 仮説の立案 (Hypothesis Generation):

    どのような脅威が潜んでいる可能性があるか、仮説を立てます。「特定の種類のマルウェアが侵入しているのでは?」「正規ツールが悪用されているのでは?」といった具体的な仮説です。最新の脅威情報 (脅威インテリジェンス) や、自社の環境に対する理解が重要になります。

  2. 調査 (Investigation):

    仮説を検証するために、関連するデータを収集・分析します。ネットワークトラフィック、エンドポイントのログ (EDR: Endpoint Detection and Response)、サーバーログなど、様々なデータソースを活用します。

  3. 発見 (Uncovering):

    調査の結果、脅威の兆候 (IoC: Indicator of Compromise – 侵害指標、IoA: Indicator of Attack – 攻撃指標) や、攻撃者の戦術・技術・手順 (TTPs: Tactics, Techniques, and Procedures) を発見します。

  4. 対処と共有 (Response & Enrichment):

    脅威が発見された場合は、インシデント対応プロセスに移行し、脅威の封じ込めや駆除を行います。また、発見された脅威の情報やハンティングで得られた知見は、将来の検知ルール改善や他のセキュリティ対策強化に活かされます。

このプロセスは一度きりではなく、継続的・反復的に行うことが重要です。🔄

🔎 脅威ハンティングの種類・モデル

脅威ハンティングのアプローチにはいくつかの種類やモデルがあります。

ハンティングの種類

  • 構造化ハンティング (Structured Hunting): 既知の攻撃者のTTPsやIoAに基づいて、特定の脅威モデルに対する仮説を立てて体系的に調査します。
  • 非構造化ハンティング (Unstructured Hunting): IoC(侵害指標)をトリガーとして開始され、データから異常なパターンを探す、より探索的なアプローチです。アナリストの経験や直感が重要になります。
  • 状況ハンティング / エンティティ駆動型ハンティング (Situational/Entity-Driven Hunting): 特定の資産(重要なサーバー、役員の端末など)や、組織の状況(合併・買収など)に基づいてリスクを評価し、関連する脅威を探索します。

ハンティングのモデル

  • インテリジェンス・ベース (Intelligence-Based): 脅威インテリジェンス(外部で報告された攻撃情報など)から得られたIoCを元に行う、比較的受動的なハンティングです。
  • 仮説ベース (Hypothesis-Driven): 「もし~のような攻撃があったら、~のような痕跡が残るはずだ」という仮説を立て、それを能動的に検証していくハンティングです。
  • ハイブリッド (Hybrid): 上記のモデルを組み合わせたアプローチです。

✨ 脅威ハンティングのメリット

脅威ハンティングを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 隠れた脅威の早期発見: 従来の対策をすり抜ける高度な攻撃や内部不正を早期に見つけ出すことができます。
  • 被害の最小化: 攻撃者がネットワーク内で活動する時間(Dwell Time)を短縮し、情報漏洩などの被害が拡大する前に対処できます。
  • セキュリティ体制の強化: ハンティングを通じて自社のネットワークやシステムの弱点を把握し、防御策を改善できます。
  • インシデント対応能力の向上: 脅威を発見した際の対応プロセスが洗練され、実際のインシデント発生時により迅速かつ効果的に対応できるようになります。
  • 自社環境の理解促進: 通常時のネットワークやシステムの振る舞いを深く理解することにつながります。

脅威ハンティングを効果的に行うためには、以下のようなスキルやツールが必要です。

スキル 💪

  • サイバーセキュリティ全般の知識
  • ネットワーク、OS、アプリケーションの深い理解
  • ログ分析能力
  • 攻撃者の思考やTTPsに関する知識
  • 仮説構築能力と探求心
  • (場合によっては)フォレンジック技術

ツール 💻

  • SIEM (Security Information and Event Management): ログ収集・分析基盤
  • EDR (Endpoint Detection and Response): エンドポイントの詳細な監視・調査ツール
  • NDR (Network Detection and Response): ネットワークトラフィックの監視・分析ツール
  • 脅威インテリジェンスプラットフォーム: 最新の脅威情報
  • データ分析ツール (統計分析、機械学習など)

脅威ハンティングは専門的な知識や経験が求められるため、専門のアナリストやチーム、あるいは外部のマネージドサービス (MDR: Managed Detection and Response など) を活用する企業も増えています。

📰 事例:脅威ハンティングが役立ったケース

具体的な事例をいくつか見てみましょう。

  • SolarWinds 攻撃 (2020年): この大規模なサプライチェーン攻撃では、正規のソフトウェアアップデートにバックドアが仕込まれました。初期の発見は別の方法でしたが、被害の全容解明や類似のTTPsを持つ脅威の探索において、多くの組織で脅威ハンティングが重要な役割を果たしました。攻撃者は検知を回避するために正規ツールを悪用するなど巧妙な手口を使っており、能動的な探索が不可欠でした。
  • バンキングマルウェアの発見 (事例): ある企業では、脅威ハンティングツールを導入し調査した結果、長年正規プロセスに紛れて潜伏していたバンキングマルウェア(オンラインバンキング情報を盗むマルウェア)を発見しました。通常のウイルス対策ソフトでは検知できていませんでした。
  • 正規ツール (ftp.exe) の悪用リスク発見 (事例): ある企業で脅威ハンティングを行った際、通常業務では使われていないはずのFTP (ファイル転送プロトコル) の利用が確認されました。直接的な悪用は見つからなかったものの、攻撃者に悪用されるリスクがあるとして利用が禁止され、将来的な情報窃取のリスクを未然に防ぐことができました。

これらの事例は、従来の受動的な防御だけでは見逃してしまう脅威が存在し、脅威ハンティングがいかに重要かを示しています。

💡 まとめ

脅威ハンティングは、「侵入されているかもしれない」という前提に立ち、能動的に脅威を探し出す、現代のサイバーセキュリティにおいて不可欠な活動です。🕵️‍♀️

従来のセキュリティ対策を補完し、未知の脅威や潜伏する脅威を早期に発見することで、被害を最小限に抑え、組織全体のセキュリティレベルを向上させることができます。

専門的なスキルやツールが必要ですが、その重要性はますます高まっています。自社のセキュリティ対策を見直す際に、脅威ハンティングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。✨