インターネットの未来、Web3の基本から応用までをわかりやすく解説します。
Web3ってなに? なぜ今注目されているの?
最近、「Web3(ウェブスリー)」という言葉をよく耳にするようになりましたね。でも、「一体何がすごいの?」「Web2.0と何が違うの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
Web3とは、簡単に言うと「次世代の分散型インターネット」のことです。 今私たちが使っているインターネット(Web2.0)は、GoogleやAmazon、Facebook(現Meta)、Apple、Microsoftといった巨大IT企業(GAFAMと呼ばれることもあります)が提供するプラットフォームに大きく依存しています。私たちのデータはこれらの企業の中央サーバーに集められ、管理されています。
これに対してWeb3は、ブロックチェーンという技術を使い、特定の企業や管理者に依存せず、データを分散して管理することを目指しています。これにより、ユーザー自身が自分のデータをコントロールできるようになり、より透明性が高く、セキュリティが強化されたインターネットが実現すると期待されています。
Web3が注目される背景には、Web2.0が抱える以下のような課題があります。
- プライバシーの問題:巨大プラットフォーマーによる個人情報の収集・利用に対する懸念。
- データの集中リスク:一部の企業にデータが集中することによるセキュリティリスクや、企業による一方的なアカウント凍結などの可能性。
- 中央集権的な管理:プラットフォーマーがサービスルールを決定し、ユーザーの自由度が制限されることがある。
Web3は、これらの課題を解決し、ユーザー主権のインターネットを実現する可能性を秘めているため、世界中から大きな注目を集めているのです。
Web1.0、Web2.0、そしてWeb3.0へ:インターネットの進化
Web3を理解するために、これまでのインターネットの歴史を振り返ってみましょう。
世代 | 時代 | 主な特徴 | キーワード | 課題 |
---|---|---|---|---|
Web1.0 | 1990年代~2000年代前半 | 静的なウェブサイトが中心。 情報の流れは一方向(発信者→閲覧者)。 テキストや簡単な画像が主体。 |
ホームページ、HTML、ダイヤルアップ接続 | コンテンツ作成者が限られる。 インタラクティブ性がない。 |
Web2.0 | 2000年代半ば~現在 | SNS、ブログ、動画共有サイトなど、ユーザー参加型の動的なプラットフォームが登場。 情報の流れは双方向。 スマートフォンやクラウドの普及。 |
ソーシャルメディア、ブログ、クラウド、モバイル、GAFAM | データの寡占、プライバシー問題、セキュリティリスク、中央集権的な管理。 |
Web3.0 (Web3) | 2018年頃~ | ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネット。 ユーザーがデータを所有・管理。 仲介者なしでのP2P(ピアツーピア)通信・取引。 |
ブロックチェーン、暗号資産、NFT、DAO、メタバース、分散型、非中央集権 | 技術的な複雑さ、UX、スケーラビリティ、法規制、セキュリティリスク。 |
※ Web3とWeb3.0は厳密には異なる概念(Web3.0はセマンティックウェブを指すこともある)ですが、近年ではブロックチェーンに基づく分散型インターネットを指してWeb3またはWeb3.0と呼ぶことが一般的です。本記事では主に「Web3」という表記を使用します。
Web1.0は「読む」インターネット、Web2.0は「読み書きする」インターネット、そしてWeb3は「読み書きし、所有する」インターネットと言えるかもしれません。
Web3を支えるコア技術
Web3の世界は、いくつかの革新的な技術によって支えられています。ここでは主要な技術をいくつか紹介します。
ブロックチェーン (Blockchain)
Web3の根幹をなす技術です。ブロックチェーンは「分散型台帳技術」とも呼ばれ、取引記録などのデータを「ブロック」という単位にまとめ、それを時系列に沿って「チェーン」のように繋げて記録・管理する仕組みです。
主な特徴:
- 分散性:データがネットワーク上の多数の参加者(ノード)に分散して保存されるため、単一障害点(システム全体が停止する原因となる箇所)がなく、システムダウンしにくい。
- 透明性:多くのブロックチェーン(特にパブリック型)では、取引記録が公開されており、誰でも検証可能。
- 改ざん耐性:一度記録されたデータを改ざんするのは極めて困難。各ブロックは前のブロックの情報(ハッシュ値)を含んでおり、一部を改ざんすると後続のブロックとの整合性が取れなくなるため、不正がすぐに検知される。これは暗号技術(ハッシュ関数や電子署名)によって実現されています。
ビットコイン(2009年に登場)は、このブロックチェーン技術を最初に実用化した仮想通貨(暗号資産)として有名です。
暗号資産(仮想通貨) (Cryptocurrency)
ブロックチェーン技術を基盤として発行・管理されるデジタル通貨のことです。ビットコインやイーサリアムなどが代表例です。中央銀行のような発行主体や管理者が存在せず、P2Pネットワーク上で価値の移転が行われます。Web3サービス内の決済や、後述するDAOでの投票権(ガバナンストークン)などに利用されます。
NFT (Non-Fungible Token / 非代替性トークン)
NFTは「替えがきかない唯一無二のデジタルデータ」を証明する技術です。ブロックチェーン上にデジタルアート、音楽、ゲーム内アイテム、会員権などの所有権や取引履歴を記録することで、デジタルデータに固有の価値を与えることができます。
例えば、有名なデジタルアーティストBeepleのNFTアート作品「Everydays: The First 5000 Days」は、2021年3月に大手オークションハウスのクリスティーズで約6930万ドル(当時のレートで約75億円)という高額で落札され、NFTへの注目を一気に高めました。
NFTによって、これまでコピーが容易だったデジタルコンテンツの所有権を明確にし、新たな市場やクリエイターエコノミーを生み出す可能性が期待されています。
スマートコントラクト (Smart Contract)
ブロックチェーン上で、あらかじめ設定されたルールに従って契約内容を自動的に実行するプログラムのことです。特定の条件が満たされると、仲介者なしに契約が履行されます。これにより、契約の透明性が高まり、実行コストや時間を削減できます。イーサリアムはこのスマートコントラクト機能を実装した代表的なブロックチェーンプラットフォームです。
DAO (Decentralized Autonomous Organization / 分散型自律組織)
DAOは、特定の管理者や中央集権的な意思決定機関を持たず、スマートコントラクトによって定められたルールに基づき、参加者(トークン保有者)の投票などによって自律的に運営される組織のことです。「ダオ」と読みます。組織の運営方針や資金の使い道などが、参加者の合意形成によって民主的に決定されます。DeFiプロジェクトやNFTコミュニティなどでDAOの形態が採用される事例が増えています。
DID (Decentralized Identifiers / 分散型ID)
特定の企業や組織に依存せず、ユーザー自身が自分のID情報を管理・コントロールできる仕組みです。ブロックチェーンなどを活用し、個人情報の提供範囲を自分で決められるようにすることで、プライバシー保護とデータ主権の向上を目指します。
Web3のメリット:何が変わる?
Web3が普及すると、私たちのインターネット体験や社会にどのような変化がもたらされるのでしょうか? 主なメリットを見ていきましょう。
- 非中央集権化による自由度の向上:特定のプラットフォーマーへの依存度が下がり、検閲や一方的なルール変更のリスクが低減します。ユーザーはより自由な活動が可能になります。
- セキュリティとプライバシーの強化:データが分散管理され、ブロックチェーンの暗号技術によって保護されるため、大規模な情報漏洩のリスクが低減します。また、個人情報を企業に預ける必要性が減り、プライバシー保護が向上します。
- 透明性と信頼性の向上:ブロックチェーン上の取引記録は(多くの場合)公開され、改ざんが困難なため、取引の透明性が高まります。これにより、トラストレス(特定の仲介者を信頼する必要がない)な環境が実現します。
- ユーザーによるデータ主権:ユーザー自身が自分のデータを所有し、管理・コントロールする権利を持ちます。自分のデータがどのように利用されるかを決定できます。
- 仲介コストの削減:スマートコントラクトなどを活用することで、銀行やプラットフォーマーといった仲介者を介さずにP2Pで直接取引が可能になり、手数料などのコストを削減できる可能性があります。
- 新たなビジネスモデルの創出:NFTによるデジタルコンテンツの価値証明、DAOによる新しい組織運営、DeFiによる革新的な金融サービスなど、これまでになかったビジネスやサービスが生まれています。
Web3のデメリットと課題
多くの可能性を秘めたWeb3ですが、まだ発展途上の技術であり、いくつかの課題やデメリットも存在します。
- 技術的な複雑さとユーザー体験 (UX):ウォレットの管理、秘密鍵の保管、ガス代(取引手数料)の概念など、一般ユーザーにとってはまだ複雑で分かりにくい部分が多く、利用のハードルが高いと感じられることがあります。
- スケーラビリティ問題:ブロックチェーンは、取引の処理速度や一度に処理できる取引量に限界がある場合があります(特にイーサリアムなどの人気チェーン)。これがサービスの遅延やガス代の高騰につながることがあります。レイヤー2ソリューションなど、この問題を解決するための技術開発が進められています。
- 法規制の不確実性:Web3は新しい分野であるため、各国の法規制や税制がまだ十分に整備されていません。今後の規制動向によっては、サービスやプロジェクトに影響が出る可能性があります。
- セキュリティリスク:ブロックチェーン自体の改ざんは困難ですが、スマートコントラクトのバグを突いたハッキング、ウォレットからの資産盗難、フィッシング詐欺などのリスクは依然として存在します。自己責任での資産管理が重要になります。(例: 2016年のThe DAO事件では、スマートコントラクトの脆弱性を突かれ、当時の価値で約50億円相当のイーサリアムが不正に送金されました。)
- 環境への影響:一部のブロックチェーン(特にProof of Workを採用するもの、例:ビットコイン)は、そのコンセンサスアルゴリズム(合意形成の仕組み)に大量の電力を消費するため、環境負荷が指摘されています。Proof of Stakeなど、よりエネルギー効率の良いコンセンサスアルゴリズムへの移行が進んでいます。(イーサリアムは2022年9月にThe Mergeと呼ばれる大型アップデートでProof of Stakeへ移行しました。)
- 意思決定の遅延(DAO):DAOでは、重要な決定に参加者の投票が必要となるため、トップダウンで迅速な意思決定が求められる場面では、時間がかかってしまう可能性があります。
これらの課題を乗り越え、より使いやすく安全な環境が整備されていくことが、Web3の更なる普及には不可欠です。
Web3のユースケース:どんなことに使われているの?
Web3の技術は、すでに様々な分野で活用され始めています。具体的なユースケースを見てみましょう。
- DeFi (Decentralized Finance / 分散型金融):銀行などの仲介者を介さずに、ブロックチェーン上で金融サービス(貸付、借入、交換、保険など)を提供します。スマートコントラクトによって自動化され、誰でもアクセス可能なオープンな金融システムの実現を目指します。代表的なサービスにUniswap(DEX)、Compound(レンディング)などがあります。
- NFTマーケットプレイス:デジタルアート、音楽、コレクターズアイテムなどのNFTを売買できるプラットフォームです。クリエイターは自身の作品をNFT化して販売し、購入者はその所有権を証明できます。OpenSeaが世界最大級のマーケットプレイスとして知られています。国内でもCoincheck NFT, 楽天NFT, Adam by GMO, HEXAなど多くのマーケットプレイスが登場しています。
- GameFi (Game + Finance) / Blockchain Games:ゲームをプレイすることでお金を稼ぐことができる(Play to Earn)モデルを取り入れたブロックチェーンゲームです。ゲーム内のキャラクターやアイテムがNFTとして発行され、マーケットプレイスで売買できます。Axie Infinityなどが初期の代表例です。
- メタバース (Metaverse):インターネット上に構築された仮想空間。アバターを通じて交流したり、経済活動を行ったりできます。メタバース内の土地やアイテムがNFTとして売買される事例も増えています。
- DAO (分散型自律組織):プロジェクトの運営やコミュニティの意思決定にDAOの仕組みが活用されています。参加者はガバナンストークンを使って投票に参加します。
- DApps (Decentralized Applications / 分散型アプリケーション):ブロックチェーン上で動作するアプリケーション。特定のサーバーに依存せず、P2Pネットワークで稼働します。
- 分散型SNS:特定の企業による管理や検閲を受けにくい、ユーザー主導のソーシャルネットワーキングサービス。
- サプライチェーン管理:製品の生産から流通までの過程をブロックチェーンに記録することで、トレーサビリティ(追跡可能性)と透明性を高め、偽造防止などに役立てます。
- オンライン投票:ブロックチェーンの改ざん耐性を利用し、安全で透明性の高い投票システムを構築する試み。
- デジタル証明:学歴や職歴などの証明書をブロックチェーン上で発行・管理し、検証を容易にする。
- Web3ブラウザ:暗号資産ウォレット機能やDAppsへのアクセス機能を統合したブラウザ。Braveなどが有名です。
これらのユースケースはまだ始まったばかりであり、今後さらに多様な分野での活用が期待されます。
Web3を始めてみよう!簡単なステップ
Web3の世界に足を踏み入れるのは、思ったよりも難しくありません。簡単なステップをご紹介します。
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暗号資産ウォレットを作成する:
Web3サービスを利用するための「デジタルなお財布」です。暗号資産やNFTを保管したり、DAppsに接続したりする際に必要になります。MetaMask(メタマスク)が最も有名なブラウザ拡張機能およびモバイルアプリのウォレットです。他にも様々なウォレットがあります。注意:ウォレット作成時に表示される「シードフレーズ(リカバリーフレーズ)」は絶対に他人に教えず、安全な場所に保管してください。 これを失うと資産にアクセスできなくなります。
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暗号資産取引所で暗号資産(仮想通貨)を入手する:
多くのWeb3サービスでは、イーサリアム(ETH)などの暗号資産がガス代(手数料)や決済に必要となります。まずは、金融庁に登録されている国内の暗号資産取引所(例:Coincheck, bitFlyer, GMOコインなど)で口座を開設し、日本円で暗号資産を購入しましょう。
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ウォレットに暗号資産を送金する:
取引所で購入した暗号資産を、ステップ1で作成した自分のウォレットアドレス宛に送金します。アドレスを間違えると資産を失う可能性があるので、慎重に行いましょう。
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DAppsやNFTマーケットプレイスを利用してみる:
ウォレットに資金が入ったら、興味のあるDAppsやNFTマーケットプレイスにウォレットを接続して、サービスを利用してみましょう。最初は少額から試してみるのがおすすめです。
注意点:
- Web3の世界はまだ新しく、詐欺的なプロジェクトやサイトも存在します。接続するサイトやサービスが信頼できるものか、十分に確認しましょう。
- 投資は自己責任です。失っても問題ない範囲の資金で始めましょう。
- 秘密鍵やシードフレーズの管理は厳重に行いましょう。
Web3の将来性と未来への展望
Web3は、インターネットのあり方を根本的に変える可能性を秘めた、非常にエキサイティングな分野です。現在はまだ黎明期であり、様々な課題を抱えていますが、技術開発は急速に進んでおり、世界中の企業や開発者、投資家から大きな注目を集めています。
今後、以下のような変化が期待されています。
- より多くの分散型サービスの登場:金融、エンターテイメント、ソーシャルメディア、仕事など、あらゆる分野でWeb3の原則に基づいた新しいサービスが登場するでしょう。
- ユーザー体験の向上:技術的なハードルが下がり、より多くの人が簡単にWeb3サービスを利用できるようになることが期待されます。
- クリエイターエコノミーのさらなる発展:NFTなどを通じて、クリエイターが自身の作品から直接収益を得やすくなり、より多様な創作活動が生まれる可能性があります。
- 企業や社会への浸透:透明性や効率性を向上させるツールとして、企業活動や公共サービスにもWeb3技術が導入されていくと考えられます。
- メタバースとの融合:Web3は、没入型の仮想空間であるメタバースの経済圏や所有権システムを支える重要な基盤技術となります。
一方で、法規制の整備や技術的課題の解決、社会的な受容など、乗り越えるべきハードルも多く存在します。Web3が真にメインストリームとなるまでには、まだ時間が必要かもしれません。
しかし、Web3が目指す「よりオープンで、公平で、ユーザー中心のインターネット」というビジョンは非常に魅力的であり、私たちのデジタルライフを豊かにする大きな可能性を秘めています。今後の動向から目が離せませんね!
まとめ
Web3は、ブロックチェーン技術を基盤とした次世代の分散型インターネットです。特定の管理者に依存せず、ユーザーが自身のデータをコントロールし、より安全で透明性の高いデジタル体験を実現することを目指しています。
NFT、DeFi、DAOといった革新的な技術やサービスを生み出し、インターネットの未来を大きく変える可能性を秘めていますが、同時に技術的な課題や法規制の整備など、解決すべき点も多く存在します。
このブログが、あなたがWeb3の世界を探求する第一歩となれば幸いです。 Web3はまだ始まったばかり。一緒に未来のインターネットを学び、体験していきましょう!