Google Cloud 認定資格を徹底解説!種類、難易度、選び方まで

近年、多くの企業がITインフラをクラウドへ移行する動きが加速しています。その中でも、Google Cloud は、AWS (Amazon Web Services) や Microsoft Azure と並んで世界的に高いシェアを誇るクラウドプラットフォームです。Google 検索や YouTube といった大規模サービスを支える強力なインフラと、機械学習やデータ分析における先進的な技術を提供しており、導入する企業が増えています。

このような背景から、Google Cloud に関する知識やスキルを持つ人材の需要は急速に高まっています。そして、そのスキルを客観的に証明する手段として Google Cloud 認定資格 が注目されています。

本記事では、Google Cloud 認定資格について、その概要から種類、難易度、取得するメリット、そして学習方法や資格の選び方まで、網羅的に解説していきます。これから Google Cloud を学びたい方、キャリアアップを目指すエンジニアの方は、ぜひ参考にしてください。

Google Cloud 認定資格とは?

Google Cloud 認定資格(旧称:GCP認定資格)は、Google が提供するクラウドコンピューティングサービスである Google Cloud に関する専門知識とスキルを証明するための公式な認定プログラムです。

この資格を取得することは、Google Cloud の各種サービス(コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、データベース、データ分析、機械学習など)を効果的に活用し、設計、開発、管理、運用できる能力があることを示します。

資格は、対象とする役割や専門分野、難易度に応じて複数の種類が用意されており、個人のスキルレベルやキャリア目標に合わせて選択することができます。世界的に認知度が高く、取得することで自身の市場価値を高め、キャリアアップに繋げることが期待できます。

Google Cloud 認定資格のレベルと種類

Google Cloud 認定資格は、難易度や対象者の経験レベルに応じて、大きく以下の3つのレベルに分類されています。2024年から2025年にかけて、いくつかの資格の更新や追加がありました。現在提供されている主な資格は以下の通りです。

1. Foundational (基礎レベル)

クラウドの基本的な概念や Google Cloud の主要なサービス、メリット、ユースケースに関する幅広い知識を証明するレベルです。技術的な職務経験がない方や、これからクラウドを学び始める方、ビジネス職の方などが対象です。

3. Professional (プロフェッショナルレベル)

特定の技術職務における高度なスキルを証明するレベルです。Google Cloud を活用したシステムの設計、実装、管理といった、より専門的で複雑なタスクに対応できる能力が求められます。業界経験3年以上、かつ Google Cloud 実務経験1年以上が推奨されています。

資格一覧(2025年4月時点)

現在提供されている主な Google Cloud 認定資格をレベル別にまとめます。受験料や対応言語、有効期間などの情報は変更される可能性があるため、受験前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください

レベル資格名推奨経験受験料 (税別)試験時間有効期間主な対応言語
FoundationalCloud Digital Leader特になし (非技術者向け)$9990分3年日本語, 英語 他
Associate Cloud Engineer6ヶ月以上の Google Cloud ハンズオン経験$1252時間3年日本語, 英語 他
ProfessionalProfessional Cloud Architect業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Professional Data Engineer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Professional Cloud Developer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Professional Cloud Security Engineer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Professional Cloud DevOps Engineer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Professional Cloud Network Engineer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Professional Cloud Database Engineer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年英語
Professional Machine Learning Engineer業界経験3年以上 (うちGoogle Cloud経験1年以上)$2002時間2年英語
Professional Google Workspace Administrator業界経験3年以上 (うちGoogle Workspace管理経験1年以上)$2002時間2年日本語, 英語
Associate Google Workspace Administrator (2025年1月開始)Google Workspace 管理の基礎知識$1252時間未定日本語, 英語

※注意: Professional Machine Learning Engineer と Professional Cloud Database Engineer は、現時点(2025年4月)で英語のみの提供となっています。また、Google Workspace Administrator 資格については、Professionalレベルのものが提供されていましたが、2025年1月よりAssociateレベルの資格「Associate Google Workspace Administrator」が新たに開始されています。

試験形式は主に多肢選択式および複数選択式で、問題数は資格によって異なりますが、多くは50問から60問程度です。試験は、テストセンターでの受験またはオンラインでのリモート監視付き受験が可能です。

各資格の詳細解説

主要な認定資格について、対象者や試験内容の概要をもう少し詳しく見ていきましょう。

Foundational: Cloud Digital Leader

Google Cloud 認定資格の中で最も入門レベルに位置づけられる資格です。

  • 対象者: クラウド技術に初めて触れる方、ビジネスリーダー、営業担当、マーケティング担当など、技術職以外の方も含む幅広い層。Google Cloud の基本的な価値提案やユースケースを理解したい方。
  • 試験内容: クラウドコンピューティングの基本概念、Google Cloud のコアプロダクトとサービス(Compute Engine, Cloud Storage, BigQuery など)の概要、それらがビジネスにもたらす価値や変革について問われます。技術的な詳細よりも、概念的な理解が中心です。
  • 難易度: 低。特別な技術的前提条件や実務経験は不要です。

Professional: Professional Cloud Architect (PCA)

Google Cloud テクノロジーを活用して、堅牢で安全、スケーラブルかつ高可用性を備えた動的なソリューションを設計、開発、管理する能力を証明する、プロフェッショナルレベルの中でも特に人気の高い資格です。

  • 対象者: クラウドアーキテクト、ソリューションアーキテクト、経験豊富なインフラエンジニア、システム設計者など。
  • 試験内容: ビジネス要件や技術要件に基づいたクラウドソリューションアーキテクチャの設計、インフラストラクチャのプロビジョニングと管理、セキュリティとコンプライアンスの設計、技術プロセスやビジネスプロセスの分析と最適化、実装の管理、ソリューションと運用の信頼性の確保など、広範かつ深い知識が問われます。単なるサービス知識だけでなく、トレードオフを考慮した最適な設計判断が求められます。
  • 難易度: 高。業界経験3年以上、うち Google Cloud でのソリューション設計・管理経験1年以上が推奨されます。

Professional: Professional Data Engineer

データの収集、変換、公開を通じてデータドリブンな意思決定を可能にするスキルを証明する資格です。

  • 対象者: データエンジニア、データアナリスト、データサイエンティスト、機械学習エンジニアなど、データ関連の業務に携わる専門家。
  • 試験内容: データ処理システムの設計、構築、運用化、保護、モニタリング能力が問われます。具体的には、BigQuery, Dataflow, Pub/Sub, Dataproc, Cloud Storage, Cloud SQL/Spanner, Looker Studio などのデータ関連サービスに関する深い知識、データパイプラインの構築、機械学習モデルの運用化(MLOps の基本)などが含まれます。セキュリティとコンプライアンスに関する知識も重要です。
  • 難易度: 高。業界経験3年以上、うち Google Cloud を使用したデータソリューションの設計・管理経験1年以上が推奨されます。

Professional: Professional Cloud Security Engineer

Google Cloud のセキュリティ技術を活用し、安全なインフラストラクチャとワークロードを設計、開発、管理する能力を証明する資格です。

  • 対象者: セキュリティエンジニア、セキュリティアナリスト、クラウドアーキテクト、インフラエンジニアなど、クラウド環境のセキュリティを担当する専門家。
  • 試験内容: ID とアクセス管理 (IAM, Cloud Identity)、ネットワークセキュリティ (VPC ファイアウォール, Cloud Armor, BeyondCorp)、データ保護 (Cloud DLP, KMS)、セキュリティ運用 (Security Command Center, Logging, Monitoring)、コンプライアンス管理など、セキュリティに関する広範な知識と実践スキルが問われます。セキュリティのベストプラクティスと業界要件の理解が不可欠です。
  • 難易度: 高。業界経験3年以上、うち Google Cloud を使用したセキュリティソリューションの設計・管理経験1年以上が推奨されます。

Professional: Professional Cloud DevOps Engineer

開発と運用のバランスを取りながら、効率的な開発オペレーションを実現し、サービス提供の速度と信頼性を両立させるスキルを証明する資格です。Site Reliability Engineering (SRE) の原則に基づいた実践能力が重視されます。

  • 対象者: DevOps エンジニア、SRE (Site Reliability Engineer)、ソフトウェア開発者、インフラエンジニアなど、CI/CD パイプラインの構築・運用やシステムの信頼性向上に関わる担当者。
  • 試験内容: SRE 原則の適用 (SLI, SLO, エラーバジェット)、CI/CD パイプラインの構築 (Cloud Build, Cloud Deploy, Artifact Registry)、サービスパフォーマンスのモニタリング (Cloud Monitoring, Logging)、インシデント管理、インフラストラクチャのコード化 (Terraform, Cloud Deployment Manager) など、DevOps と SRE の実践に関する知識が問われます。
  • 難易度: 高。業界経験3年以上、うち Google Cloud を使用した DevOps プラクティスの実装経験1年以上が推奨されます。

上記以外にも、特定の分野に特化した Professional レベルの資格があります。

  • Professional Cloud Developer: クラウドネイティブアプリケーションの開発とデプロイに特化。
  • Professional Cloud Network Engineer: VPC ネットワーク、ハイブリッド接続、ネットワークサービスの設計と実装に特化。
  • Professional Cloud Database Engineer: Google Cloud 上でのデータベースソリューションの設計、実装、管理、移行に特化。(英語のみ)
  • Professional Machine Learning Engineer: 機械学習モデルの設計、構築、本番稼働に特化。(英語のみ)
  • Professional Google Workspace Administrator: Google Workspace 環境の設定、管理、セキュリティ確保に特化。
  • Associate Google Workspace Administrator: Google Workspace の基本的な管理タスクを実行するスキルに特化。(2025年1月開始)

ご自身の専門分野やキャリアパスに合わせて、最適な資格を選択することが重要です。

Google Cloud 認定資格を取得するメリット

Google Cloud 認定資格の取得は、個人のスキルアップやキャリア形成において、多くのメリットをもたらします。

1. Google Cloud とクラウド全般の知識・スキルの習得

資格取得に向けた学習プロセスを通じて、Google Cloud の各サービスに関する実践的な知識はもちろん、クラウドコンピューティング全般に関する体系的な知識を深く理解することができます。これは、日々の業務における問題解決能力の向上や、新しい技術への対応力強化に繋がります。

3. キャリアアップと年収アップの可能性

Google Cloud の公式情報によると、認定資格を持つ人の多くが、より責任ある仕事やリーダーの役割を任されるようになったと報告しています。また、米国の調査では、Google Cloud の Professional Cloud Architect 認定資格が最も高収入なIT資格の一つとして挙げられるなど、年収アップにも繋がる可能性が高いと言えます。

4. 合格者特典とコミュニティへのアクセス

認定資格に合格すると、デジタルバッジ(Credly などで共有可能)が付与され、スキルをアピールできます。また、Associate および Professional レベルの合格者は、限定の Google Cloud Certified コミュニティに参加でき、最新情報の入手や他の専門家との交流、割引特典などのメリットがあります。

学習方法とリソース

Google Cloud 認定資格の取得を目指す上で活用できる学習リソースは多岐にわたります。効果的な学習のために、これらのリソースを組み合わせて利用することをお勧めします。

全ての基本となるのが公式ドキュメントです。各サービスの機能、コンセプト、ベストプラクティスなどが詳細に記載されています。試験範囲に関連するドキュメントを読み込み、理解を深めることが合格への近道です。

Google Cloud ドキュメント

Google Cloud が提供する公式オンライントレーニングプラットフォームです。各認定資格に対応した学習パスが用意されており、動画講義、ハンズオンラボ (Qwiklabs)、クイズなどを通じて体系的に学習を進めることができます。多くのコンテンツで日本語字幕が利用可能です。

Google Cloud Skills Boost

各認定資格の公式サイトでは、無料の模擬試験が提供されています。実際の試験形式や問題のレベル感を把握し、自身の理解度を確認するために非常に有効です。受験前には必ず挑戦し、弱点を把握しておきましょう。解説も提供されている場合が多いです。

Google Cloud 認定資格ページ (各資格ページに模擬試験へのリンクあり)

Coursera では Google Cloud 公式の専門講座が提供されており、修了証を取得できるコースもあります。Udemy などのプラットフォームでも、多くの講師が作成した対策講座や模擬問題集が提供されています。自分の学習スタイルに合ったコースを探してみましょう。

日本語で書かれた認定資格対策の書籍も出版されています。特に Associate Cloud Engineer や Professional Cloud Architect 向けのものが見られます。体系的に知識を整理したい場合や、オフラインで学習したい場合に役立ちます。

Google Cloud のユーザーグループ (Jagu’e’r – Japan Google Cloud Usergroup for Enterprise など) や、オンラインコミュニティ、勉強会に参加することも有効です。他の学習者や経験豊富なエンジニアと情報交換したり、疑問点を質問したりすることで、理解が深まり、モチベーション維持にも繋がります。

どの資格から目指すべきか? 資格の選び方

数ある Google Cloud 認定資格の中から、最初にどれを目指すべきか迷う方もいるでしょう。以下の点を考慮して、自分に合った資格を選ぶことをお勧めします。

1. 現在のスキルレベルと経験

  • クラウド未経験者・非技術職の方: まずは Cloud Digital Leader から始め、クラウドと Google Cloud の基礎を固めるのが良いでしょう。
  • クラウドの基礎知識があり、実務経験が少ない方: Associate Cloud Engineer を目指し、実践的な運用スキルを身につけるのが一般的です。PCA の前段階としても適しています。
  • 豊富な実務経験を持つエンジニア: 自身の専門分野に合わせて Professional レベルの資格に挑戦しましょう。特に Professional Cloud Architect は、広範な知識が求められるため、他の Professional 資格への足がかりにもなります。

2. キャリアパスと目標

  • インフラ設計・構築を目指す方: Professional Cloud Architect, Professional Cloud Network Engineer
  • アプリケーション開発者: Professional Cloud Developer
  • データ関連職 (データエンジニア、アナリスト、サイエンティスト): Professional Data Engineer, Professional Machine Learning Engineer
  • セキュリティ専門家: Professional Cloud Security Engineer
  • 運用・信頼性向上に関わる方 (DevOps/SRE): Professional Cloud DevOps Engineer
  • データベース管理者・設計者: Professional Cloud Database Engineer
  • Google Workspace の管理・導入に関わる方: Professional Google Workspace Administrator または Associate Google Workspace Administrator

将来的にどのような役割を担いたいか、どのようなスキルを伸ばしたいかを考え、関連性の高い資格を選びましょう。

3. 興味・関心のある分野

自身の興味や関心が強い分野の資格から挑戦するのも良い方法です。学習へのモチベーションを維持しやすくなります。例えば、データ分析に興味があれば Data Engineer、機械学習に興味があれば Machine Learning Engineer を目指すといった形です。

一般的には、Associate Cloud Engineer を取得してから、自身の専門分野に合わせて Professional Cloud Architect やその他の Professional 資格に進むというパスが多いようです。しかし、必ずしもこの順番である必要はありません。自身の状況に合わせて最適なルートを選択してください。

まとめ

Google Cloud 認定資格は、急速に進化するクラウド技術の世界において、自身のスキルと知識を証明し、キャリアを加速させるための強力なツールです。Foundational、Associate、Professional の各レベル、そして専門分野に応じた多様な資格が用意されており、学習者やエンジニアは自身の目標に合わせて最適な資格を選択し、挑戦することができます。

資格取得の過程で得られる知識は、Google Cloud の効果的な活用に留まらず、クラウドコンピューティング全般への理解を深め、エンジニアとしての市場価値を高めることに繋がります。公式ドキュメント、Skills Boost、模擬試験といった豊富な学習リソースを活用し、計画的に学習を進めることが合格への鍵となります。

クラウド技術の重要性がますます高まる現代において、Google Cloud 認定資格の取得は、自己成長とキャリアアップのための価値ある投資となるでしょう。ぜひ、本記事を参考に、あなたも Google Cloud 認定資格への挑戦を始めてみてはいかがでしょうか。

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