【初心者向け】姿勢推定とは?AIが人の動きを読み取る仕組みを徹底解説

「姿勢推定」という言葉を聞いたことがありますか? なんとなく難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は私たちの身の回りの様々な場面で活用されている、とても面白い技術です。このブログでは、ITやAIの初心者の方でも分かるように、姿勢推定の基本から応用例まで、わかりやすく解説していきます。

1. 姿勢推定とは?

姿勢推定(Pose Estimation)とは、一言で言うと、画像や動画から人間や物体の「姿勢」を特定する技術のことです。 コンピュータビジョンという画像認識分野のタスクの一つで、特に人間の体を対象とする場合、「人体姿勢推定(Human Pose Estimation)」と呼ばれます。

具体的には、AIが画像や動画の中から、肩、肘、手首、膝、足首といった体の主要な関節や、目、鼻などの特徴的な部分を探し出します。 これらの点のことを「キーポイント」と呼びます。 そして、検出したキーポイントの位置座標をつなぎ合わせることで、その人がどんなポーズをとっているのか、どのように動いているのかを骨格レベルで理解するのです。

かつては、人の動きをデータ化するために、体に専用のマーカーやセンサーを取り付けた特殊なスーツを着る必要がありました。 しかし、ディープラーニング(深層学習)をはじめとするAI技術の急速な発展により、現在ではカメラで撮影するだけで、非常に高い精度で姿勢を推定できるようになっています。

2. 姿勢推定の主な種類

姿勢推定は、その目的や手法によっていくつかの種類に分類できます。ここでは代表的な分類方法をご紹介します。

分類種類A種類B
次元による分類2D姿勢推定
画像や動画の平面上でキーポイントのX座標とY座標を推定します。 奥行きの情報はありませんが、計算コストが低く、リアルタイム処理に向いています。
3D姿勢推定
2Dの情報に加えて奥行き(Z座標)も推定し、3次元空間での姿勢を復元します。 より複雑な動きを正確に捉えられますが、計算量が多く、複数のカメラが必要になる場合もあります。
対象人数による分類シングルパーソン姿勢推定
画像内に一人の人物がいることを前提として、その人の姿勢を推定します。
マルチパーソン姿勢推定
画像内に複数の人物がいる場合に、それぞれを個別に認識し、全員の姿勢を同時に推定します。
推論アプローチによる分類トップダウン方式
まず画像の中から人物を検出し(バウンディングボックスで囲む)、その検出された領域内で各人物のキーポイントを探します。 精度が高い傾向にありますが、人数が増えると処理が遅くなる可能性があります。
ボトムアップ方式
先に画像内にある全てのキーポイント(関節など)を検出し、その後、それらを関連付けて各人物の骨格を組み立てていきます。 人数が増えても処理速度が落ちにくいのが特徴です。

3. どんなことに使われているの?応用事例

姿勢推定技術は、すでに私たちの社会の様々な分野で活躍しています。

  • スポーツ・フィットネス:
    野球選手の投球フォームやゴルファーのスイングを解析し、改善点を可視化したり、フィットネスアプリで正しいトレーニングフォームを指導したりするのに使われています。 ユーザーの動きをAIが評価し、リアルタイムでフィードバックを提供します。
  • 医療・ヘルスケア:
    リハビリテーションの現場で患者の回復具合を定量的に記録したり、高齢者の転倒リスクを検知したりするシステムに応用されています。 客観的なデータに基づいた評価が可能になります。
  • エンターテインメント:
    VTuber(バーチャルYouTuber)のアバターを動かしたり、ゲームキャラクターにリアルな動きをさせたりするモーションキャプチャ技術として活用されています。 センサー付きスーツなしで、手軽にキャラクターを操作できるようになりました。
  • 製造・建設業:
    工場や建設現場で作業員の動きを分析し、危険な姿勢や非効率な動作を検知して安全管理や生産性向上に役立てられています。
  • 防犯・セキュリティ:
    監視カメラの映像から、喧嘩や転倒といった異常行動を自動で検知し、警備員に通知するシステムなどで利用されています。

4. 姿勢推定を試してみよう(Python + MediaPipe)

「自分でも姿勢推定を試してみたい!」と思った方のために、Googleが開発した「MediaPipe」というライブラリを使った簡単なサンプルコードを紹介します。 MediaPipeを使えば、数行のPythonコードで手軽に高精度な姿勢推定を体験できます。

まずは、必要なライブラリをインストールします。

pip install opencv-python mediapipe

次に、Webカメラを使ってリアルタイムで姿勢推定を行うコードを記述します。

import cv2
import mediapipe as mp
# MediaPipeの描画ユーティリティと姿勢推定モデルを初期化
mp_drawing = mp.solutions.drawing_utils
mp_pose = mp.solutions.pose
# Webカメラからの入力を開始
cap = cv2.VideoCapture(0)
# Poseモデルをロード
with mp_pose.Pose( min_detection_confidence=0.5, min_tracking_confidence=0.5) as pose: while cap.isOpened(): success, image = cap.read() if not success: print("Ignoring empty camera frame.") continue # パフォーマンス向上のため、画像を書き込み不可として参照渡しする image.flags.setflags(write=False) # BGR画像をRGBに変換 image = cv2.cvtColor(image, cv2.COLOR_BGR2RGB) # 姿勢推定を実行 results = pose.process(image) # 画像を書き込み可能に戻し、色をBGRに戻す image.flags.setflags(write=True) image = cv2.cvtColor(image, cv2.COLOR_RGB2BGR) # 検出された姿勢の骨格を描画 if results.pose_landmarks: mp_drawing.draw_landmarks( image, results.pose_landmarks, mp_pose.POSE_CONNECTIONS) # 結果の画像を表示 cv2.imshow('MediaPipe Pose Estimation', image) # 'q'キーが押されたらループを抜ける if cv2.waitKey(5) & 0xFF == ord('q'): break
cap.release()
cv2.destroyAllWindows()

このコードを実行すると、Webカメラが起動し、映っている人物の体に骨格がリアルタイムで描画されます。自分の動きに合わせて骨格が追従する様子は、AIの力を実感できる面白い体験になるはずです。

まとめ

姿勢推定は、画像や動画から人間の動きを読み解く画期的な技術です。 AIの進化により、スポーツ分析からエンターテインメント、安全管理まで、その応用範囲はますます広がっています。 これまで専門家しかできなかった動作分析が、誰でも手軽に利用できる時代になりつつあります。この技術が、今後私たちの生活をどのように変えていくのか、非常に楽しみです。

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