「BERT」という言葉を聞いたことがありますか? この言葉には、最先端のIT技術と、世界中で愛されるキャラクターという、全く異なる2つの顔があります。このページでは、それぞれの「BERT」について、初心者の方にも理解しやすいように、丁寧に解説していきます。
1. IT・AI分野の「BERT」:自然言語処理モデル
まず、IT分野におけるBERTについて見ていきましょう。こちらは、私たちの生活にも深く関わっている非常に重要な技術です。
BERTの正体とは?
IT分野でのBERTは、Bidirectional Encoder Representations from Transformers の頭文字をとった略語です。これは、2018年にGoogleが発表した、画期的な自然言語処理モデルの名前です。
私たちが日常的に使っている言葉(自然言語)を、コンピュータが理解し、処理できるようにするための技術のことです。例えば、翻訳、文章の要約、質問への回答などが含まれます。
BERTの何がすごいの? – 文脈を読むAI
BERTの最大の特徴は、その「双方向性」にあります。従来のモデルの多くは、文章を左から右への一方向にしか読み取れませんでした。しかし、BERTは文章全体を一度に見て、単語の前後の文脈を同時に理解することができます。
これにより、同じ単語でも文脈によって意味が変わる場合に、その違いを正確に捉えることが可能になりました。例えば、以下の2つの文を見てください。
- A: 彼は銀行の土手に座った。 (この「銀行」は川の岸辺を指す)
- B: 彼は銀行にお金を預けた。 (この「銀行」は金融機関を指す)
人間なら簡単に見分けられますが、以前のAIにはこの区別が困難でした。BERTは、”土手” や “お金を預けた” といった周りの単語から文脈を判断し、それぞれの「銀行」の意味を正しく理解できるのです。この能力の高さから、BERTの登場は自然言語処理の世界に大きな衝撃を与えました。
BERTはどこで使われている?
BERTの技術は、すでに私たちの身近なところで活躍しています。
- Google検索: 2019年頃から、Googleの検索エンジンにBERTが導入されました。これにより、ユーザーが入力した検索キーワードの意図をより正確に汲み取り、関連性の高い検索結果を表示できるようになりました。
- 質問応答システム: 「~とは何ですか?」といった質問に対して、的確な答えを文章中から見つけ出して提示します。
- 文章分類: ニュース記事を「スポーツ」「経済」「政治」などのカテゴリに自動で分類したり、メールが迷惑メールかどうかを判断したりするのに使われます。
【参考】BERTを使った簡単なプログラム例
専門的になりますが、Pythonというプログラミング言語とHugging Face社の「Transformers」というライブラリを使うと、比較的簡単にBERTを試すことができます。以下のコードは、文章中の一部をマスク(隠して)、BERTにその単語を予測させる例です。
from transformers import pipeline
# パイプラインを準備(マスクされた単語を予測する機能)
unmasker = pipeline('fill-mask', model='cl-tohoku/bert-base-japanese-whole-word-masking')
# [MASK]部分に入る単語を予測
result = unmasker("日本の首都は[MASK]です。")
# 結果を表示
for item in result:
print(item['token_str'])
このコードを実行すると、BERTは文脈から判断して「東京」という単語を高い確率で予測してくれます。
2. もう一つの「バート」:セサミストリートのキャラクター
次に、もう一つの有名な「バート」について紹介します。こちらは、ITとは全く関係のない、世界的に知られるキャラクターです。
セサミストリートのバート
こちらのバート(Bert)は、アメリカで生まれ、日本でも長年放送されている子供向け教育番組「セサミストリート」に登場するマペットのキャラクターです。
- 相棒のアーニーといつも一緒にいます。
- 縦長の顔と一本につながった眉毛が特徴です。
- 性格は非常に真面目で几帳面、物事をきっちり整理するのが好きです。対照的に、陽気で自由奔放なアーニーとの掛け合いが人気を博しています。
IT用語のBERTが発表されるずっと前から、世界中の人々に「バート」として親しまれてきた存在です。
2つのBERTの比較まとめ
最後に、2つのBERTの特徴を表で比較してみましょう。
項目 | 自然言語処理モデル (BERT) | セサミストリート (Bert) |
---|---|---|
正式名称/フルネーム | Bidirectional Encoder Representations from Transformers | Bert (バート) |
分野 | IT, 人工知能 (AI), 自然言語処理 | テレビ番組, エンターテインメント, 教育 |
発表/登場時期 | 2018年 | 1969年 (番組開始) |
開発者/制作者 | ジム・ヘンソン | |
主な特徴 | 文章の文脈を双方向で理解できる。高い精度で言語を処理する。 | 真面目で几帳面な性格。相棒のアーニーとコンビを組んでいる。 |
関連キーワード | AI, Google, Transformer, Python, 検索エンジン | アーニー, セサミストリート, マペット, NHK |
まとめ
「BERT」という一つの言葉が、最先端のAI技術と、世界中で愛されるキャラクターという、全く異なる2つの意味を持っていることがお分かりいただけたでしょうか。
AIとしてのBERTは、私たちの情報検索やコミュニケーションを裏で支える重要な技術です。一方で、セサミストリートのバートは、これからも多くの人々に楽しみと学びを提供し続けるでしょう。文脈によって意味が全く変わるこの「BERT」という言葉自体が、奇しくもAIのBERTが得意とする「文脈理解」の良い例になっているのは面白いですね。