この記事を読むことで得られる知識
- ✓ ネットワークエンジニアにとって資格がなぜ重要なのかがわかります。
- ✓ 自身の現在のスキルレベルや将来のキャリアパスに適した資格を見つけられます。
- ✓ 主要なネットワーク関連資格の難易度、試験範囲、学習時間の目安を具体的に把握できます。
- ✓ クラウドが主流となる現代で、ネットワークエンジニアに求められる新たなスキルセットと、それに関連する資格が理解できます。
ネットワークエンジニアとしてのキャリアを築く上で、自身のスキルを客観的に証明し、市場価値を高めるために「資格取得」は非常に有効な手段です。しかし、IT関連の資格は数多く存在し、「どの資格から取得すれば良いのか」「自分のレベルに合った資格は何か」と悩む方も少なくありません。
この記事では、未経験者からベテランのスペシャリストまで、ネットワークエンジニアのキャリア段階ごとにおすすめの資格を網羅的に紹介し、それぞれの難易度、試験内容、そしてキャリアアップにどう繋がるのかを徹底的に解説します。資格という武器を手に、あなたのキャリアを次のステージへと進めましょう。
レベル別!ネットワークエンジニアにおすすめの資格ロードマップ
まずは自身の現在地を把握し、適切な資格を選びましょう。
【入門・初級者向け】IT業界の基礎固めとネットワークの第一歩
IT業界未経験の方や、ネットワークエンジニアとしてのキャリアをスタートさせたばかりの方におすすめの資格です。これらの資格を取得することで、ITの基本的な知識とネットワーク技術の基礎を体系的に学ぶことができます。
CCNA (Cisco Certified Network Associate)
ネットワークエンジニアの登竜門とも言える、最も知名度の高い国際資格です。 世界最大手のネットワーク機器メーカーであるシスコシステムズ社が認定しており、同社製品の操作スキルだけでなく、ネットワーク全般の基礎知識を証明できます。
2020年2月に試験範囲が改定され、従来の複数あった専門分野が1つに統合されました。 これにより、ルーティング&スイッチングといったコアな技術に加え、セキュリティ、ワイヤレス、自動化といった現代のネットワーク環境で必須となる知識も幅広く問われるようになりました。 転職市場においても評価が非常に高く、多くの企業が応募条件として「CCNA保有者歓迎」と掲げています。
| 難易度 | 初級~中級。IT未経験者にはやや難しい内容も含まれますが、計画的な学習で十分に合格可能です。 合格率は非公開ですが、一般的に20%~30%程度と推定されています。 |
|---|---|
| 学習時間の目安 | 初学者の場合、100~150時間程度の学習が必要とされています。 |
| ポイント | 単なる知識問題だけでなく、Cisco機器のコマンド操作を模したシミュレーション問題が出題されるため、Packet Tracerなどのシミュレータツールを活用した実践的な学習が不可欠です。 |
CompTIA Network+
特定のメーカーや製品に依存しない「ベンダーニュートラル」な知識を証明する国際的な認定資格です。 ネットワークの構成要素やトラブルシューティングなど、実践的なスキルが問われます。
CCNAがCisco製品に特化しているのに対し、Network+はより汎用的なネットワーク技術の理解を証明できます。 そのため、様々なベンダーの機器が混在する環境で働くエンジニアや、ネットワークの基礎を体系的に学びたい初学者に適しています。
| 難易度 | 初級レベル。国家資格である基本情報技術者試験(FE)と同等か、やや易しい程度とされています。 IT未経験者でも計画的に学習すれば十分に合格を狙えます。 |
|---|---|
| 学習時間の目安 | IT未経験者の場合、約1ヶ月程度の集中的な学習で合格した事例もあります。 |
| ポイント | ネットワークの物理的な側面からプロトコル、セキュリティに至るまで、幅広い基礎知識を網羅的に学習する必要があります。 |
基本情報技術者試験 (FE)
日本の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する国家資格で、IT業界の登竜門として広く認知されています。
ネットワークだけでなく、コンピュータサイエンスの基礎、データベース、セキュリティ、プロジェクトマネジメントなど、ITに関する幅広い基礎知識が問われます。ネットワークエンジニアとしてだけでなく、ITプロフェッショナルとしての土台を固めるのに最適な資格です。
| 難易度 | 初級レベル。ITパスポートの上位資格に位置づけられています。 |
|---|---|
| 学習時間の目安 | IT初学者の場合、50~200時間程度の学習が必要とされています。 |
| ポイント | 2023年4月から試験制度が変更され、通年で受験可能になり、出題形式もより実践的な内容に改訂されました。科目B試験(旧午後試験)では、アルゴリズムとプログラミング、情報セキュリティに関する問題が中心となります。 |
【中級者向け】専門性を高め、キャリアアップを実現
数年の実務経験を積み、ネットワークの設計・構築・運用に一通り携わったエンジニアが、さらなる専門性を身につけ、キャリアアップを目指すためにおすすめの資格です。
CCNP (Cisco Certified Network Professional)
CCNAの上位資格であり、大規模で複雑なエンタープライズネットワークの設計、実装、管理、トラブルシューティングに関する高度で専門的な知識とスキルを証明します。
CCNP Enterprise認定を取得するには、必須の「コア試験」と、複数の専門分野から1つを選択する「コンセントレーション試験」の2つに合格する必要があります。 これにより、自身のキャリアパスや得意分野に合わせて専門性を深めることができます。
| 難易度 | 中級~上級。CCNAで問われる知識を深く理解していることが前提となります。2020年の試験改定により、出題範囲が広がり難易度は上がったとされています。 合格率は非公開ですが、15%~20%程度と推定されています。 |
|---|---|
| コア試験 (ENCOR) | デュアルスタック(IPv4/IPv6)アーキテクチャ、仮想化、インフラ、ネットワークアシュアランス、セキュリティ、自動化など、幅広い分野から出題されます。 |
| コンセントレーション試験 | 高度なルーティング、SD-WAN、ネットワーク設計、無線、自動化など、専門的なトピックから1つを選択します。 |
| ポイント | 実務経験が非常に重要となる資格です。机上の学習だけでなく、実機やGNS3、EVE-NGなどのエミュレータを用いた検証作業が合格への鍵となります。 |
応用情報技術者試験 (AP)
基本情報技術者試験の上位に位置する国家資格です。 技術的な知識に加え、管理や経営に関する知識も問われるため、IT技術者として総合的な能力を証明できます。
この資格を取得することで、技術的な側面から経営戦略に貢献できる、より上位のエンジニアやプロジェクトリーダーを目指すための土台を築くことができます。
| 難易度 | 中級。合格率は例年20%前半で推移しており、基本情報技術者試験よりも難易度は高くなります。 |
|---|---|
| ポイント | 午後の記述式問題が特徴です。ネットワーク分野を選択することも可能ですが、テクノロジ系だけでなく、マネジメント系、ストラテジ系の幅広い知識が求められます。 |
LinuC / LPIC (Linux技術者認定)
現代のネットワークインフラにおいて、サーバーOSとしてLinuxが広く利用されています。 そのため、ネットワークエンジニアであってもLinuxの知識は不可欠です。LinuC(リナック)とLPIC(エルピック)は、Linuxの技術力を証明する主要な認定資格です。
LinuCは日本の市場に最適化された内容で、特にクラウドや仮想化技術に関する出題が強化されています。 一方、LPICはより国際的に認知されている資格です。どちらも難易度別にレベル1〜3が設定されており、段階的なスキルアップが可能です。
| 難易度 |
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|---|---|
| ポイント | レベル1とレベル2は、それぞれ2つの試験(例: 101試験と102試験)に合格することで認定されます。 サーバーサイドの知識を身につけることで、インフラ全体を俯瞰できるエンジニアへと成長できます。 |
【上級・スペシャリスト向け】最高峰の技術力を証明する
特定の分野を極め、業界のトップランナーとして活躍することを目指すエンジニア向けの最難関資格です。取得は容易ではありませんが、その価値は絶大で、キャリアにおいて大きなアドバンテージとなります。
ネットワークスペシャリスト試験 (NW)
IPAが実施する情報処理技術者試験の中でも、最難関の「スキルレベル4」に位置づけられる国家資格です。 ネットワークの固有技術からサービス動向まで、幅広く深い知識が問われ、ネットワークに関する企画・要件定義・設計・構築・運用・保守の全てを主導できるトップレベルのエンジニアであることを証明します。
特に午後の長文読解・記述式問題は難易度が非常に高く、単なる知識だけでなく、問題文から要求仕様を正確に読み解く読解力と、論理的に解答を記述する国語力が求められます。
| 難易度 | 最高レベル。合格率は例年12%~17%程度と非常に低く、狭き門となっています。 |
|---|---|
| 学習時間の目安 | 実務経験者でも、半年から1年程度の計画的な学習が必要とされています。 |
| ポイント | 午前Ⅰ、午前Ⅱ、午後Ⅰ、午後Ⅱの4つの試験区分があり、全てで基準点(60%)以上を取る必要があります。 過去問演習、特に午後問題の記述対策が合格の鍵を握ります。 |
情報処理安全確保支援士試験 (SC)
情報セキュリティ分野における国内唯一の「士業」資格です。 ネットワークとセキュリティは切っても切れない関係にあり、安全なネットワークを設計・構築・運用するためには、セキュリティの深い知識が不可欠です。
この資格もスキルレベル4に位置づけられており、サイバーセキュリティに関する高度な知識・技能を証明します。 ネットワークスペシャリストと同様に難関ですが、セキュリティの専門家としてのキャリアパスを考えているエンジニアには強く推奨される資格です。
| 難易度 | 最高レベル。合格率は例年20%前後で推移しています。 ネットワークスペシャリストよりは合格率が若干高い傾向にありますが、それでも難関であることに変わりはありません。 |
|---|---|
| 学習時間の目安 | 前提知識にもよりますが、200時間以上の学習が必要とされています。 |
| ポイント | 合格後、IPAに登録手続きを行うことで「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」となることができます。 登録後は定期的な講習の受講が義務付けられています。 |
クラウド時代に必須!価値を高める+αの資格
オンプレミス環境だけでなく、クラウドサービスを活用したネットワーク構築が当たり前になった現代。クラウド関連の知識は、もはや全てのネットワークエンジニアにとって必須スキルです。
AWS、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) といった主要なパブリッククラウドサービスは、それぞれ独自のネットワークサービスを提供しています。これらの知識を身につけ、資格として証明することで、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境の設計・構築といった、より付加価値の高い業務に対応できるようになります。
AWS Certified Advanced Networking – Specialty
Amazon Web Services (AWS) 環境における、高度なネットワーク設計・実装スキルを証明する専門資格です。 AWSのネットワークサービス(VPC, Direct Connect, Route 53, Transit Gatewayなど)を深く理解し、それらを組み合わせて複雑なネットワークアーキテクチャを構築・管理する能力が問われます。
オンプレミス環境とAWSを接続するハイブリッドネットワークの設計など、実務に即した高度な内容が含まれており、取得難易度はAWS認定資格の中でも最難関レベルの一つとされています。
Microsoft Certified: Azure Network Engineer Associate
Microsoft Azure環境におけるネットワークソリューションの計画、実装、管理に関する専門知識を証明する資格です。 この資格の認定試験が「AZ-700: Designing and Implementing Microsoft Azure Networking Solutions」です。
VNet、VPN Gateway、ExpressRoute、Load BalancerといったAzureのコアネットワークインフラや、ハイブリッド接続、アプリケーション配信サービス、ネットワークセキュリティなどのスキルが評価されます。
資格取得に向けた学習方法
目標とする資格が決まったら、次はいかに効率的に学習を進めるかが重要になります。以下に代表的な学習方法をいくつか紹介します。
書籍や問題集の活用
最も基本的な学習方法です。各資格には、公式ガイドや評価の高い参考書、問題集が多数出版されています。体系的に知識をインプットし、問題演習でアウトプットを繰り返すことで、理解を深めることができます。
オンライン学習プラットフォーム
Udemyなどのプラットフォームでは、動画形式で分かりやすく解説された講座が豊富に提供されています。特に、ハンズオン形式で実際に手を動かしながら学べる講座は、シミュレーション問題対策に非常に有効です。
実機・シミュレータ/エミュレータ演習
特にCCNAやCCNPなどのベンダー資格では、コマンド操作に慣れることが必須です。Cisco Packet Tracer(シミュレータ)やGNS3/EVE-NG(エミュレータ)を活用したり、中古のネットワーク機器を購入したりして、実際にネットワークを構築してみることが、知識を定着させる一番の近道です。
スクールやコミュニティの活用
独学でのモチベーション維持が難しい場合や、疑問点をすぐに解決したい場合は、資格取得を専門とするスクールに通うのも一つの手です。また、勉強会やオンラインコミュニティに参加し、同じ目標を持つ仲間と情報交換することも有効です。
まとめ
ネットワークエンジニア向けの資格は、キャリアの各段階において自身のスキルを証明し、次のステップに進むための強力な羅針盤となります。入門レベルのCCNAや基本情報技術者試験で基礎を固め、経験を積んだ後にはCCNPや応用情報技術者試験で専門性を高める。そして、ネットワークスペシャリスト試験やクラウド系の専門資格で、自らの市場価値を最大限に引き上げることができます。
重要なのは、資格取得をゴールにするのではなく、あくまでキャリアを豊かにするための手段と捉えることです。 資格取得の過程で得た知識やスキルを日々の業務に活かし、常に新しい技術を学び続ける姿勢が、真のプロフェッショナルへの道を開きます。この記事を参考に、ご自身のキャリアプランに最適な資格を見つけ、ぜひ挑戦してみてください。