Node-RED 最新動向:IoTクラウド連携の進化を探る

IoT / 組み込み開発

IoT(モノのインターネット)の世界は日々進化しており、その中心的な役割を担うツールの1つがNode-REDです。本記事では、Node-REDの最新動向、特にIoTデバイスとクラウドサービスを連携させる機能の進化に焦点を当てて解説します。技術の進歩は目覚ましく、常に新しい情報を取り入れることが重要です。それでは、Node-REDの現在地とその未来を見ていきましょう。🚀

はじめに – Node-REDとは?

Node-REDは、もともとIBMのEmerging Technology Servicesチームによって開発され、2014年にオープンソース化されたビジュアルプログラミングツールです。ブラウザベースのフローエディタを使用して、ハードウェアデバイス、API、オンラインサービスを新しい、興味深い方法で接続できます。

フローベースプログラミング 機能を表す「ノード」を線でつなぎ合わせることで、データの流れ(フロー)を視覚的に構築します。これにより、プログラミング経験が少ない人でも直感的にアプリケーションを開発できます。

イベント駆動型 特定のイベント(センサーデータの受信、APIからの応答など)をトリガーとして処理を実行するモデルを採用しており、リアルタイム性が求められるIoTアプリケーションに適しています。

Node.jsベース Node.js上で動作するため、軽量かつ高性能であり、豊富なnpm(Node Package Manager)エコシステムを利用して機能を容易に拡張できます。

特にIoT分野では、プロトタイピングの迅速化、多様なデバイスやプロトコル(MQTT, HTTP, WebSocketなど)との簡単な連携、そしてAWS IoT、Google Cloud IoT、Azure IoT Hubといった主要なクラウドプラットフォームとのシームレスな統合能力が高く評価されています。活発なコミュニティによって、3000種類を超えるコントリビュートノードが開発・公開されており、日々進化を続けています。

Node-REDの進化 – 最新バージョンの注目機能

Node-REDは継続的に開発が進められており、定期的に新しいバージョンがリリースされています。特にメジャーバージョンアップでは、注目すべき新機能や改善が含まれることが多いです。ここでは近年の主要なアップデートを見てみましょう。

Node-RED 3.x 系の登場と進化

Node-RED 3.0は2022年7月にリリースされ、Node.js 14以降をサポートするようになりました。続くマイナーバージョンアップ(3.1など)では、エディタの使い勝手やフロー管理機能が大幅に向上しました。

Node-RED 3.1 (2023年9月リリース) では、以下のような改善が行われました。

  • フローのロック機能: 重要なフローを誤って変更しないようにロックできるようになりました。共同作業時などに便利です。🔒
  • グループ機能の強化: ノードをグループ化する機能が改善され、グループ内のノードへの直接アクセス、複数ノードのドラッグ&ドロップによるグループ化、Altキーを押しながらのノード削除などが可能になり、操作性が向上しました。
  • 変更通知: 未デプロイの変更があるタブにドットが表示されるようになり、変更箇所が分かりやすくなりました。
  • フロー/ノード説明の強化: 説明文 (Markdown) に画像やMermaid डायग्राम (テキストベースの図表ツール) を直接埋め込めるようになりました。フローのドキュメント化に役立ちます。🖼️
  • Catch/Statusノードのグループスコープ: これらのノードが、自身が含まれるグループ内のノードのみを対象とするように設定できるようになりました。エラーハンドリングの整理がしやすくなります。
  • 環境変数のUI設定: グローバル、フロー、グループスコープの環境変数をエディタのUIから設定できるようになりました。従来はsettings.jsファイルの編集が必要でした。
Node-RED 3.1.7 (2024年5月頃 groov EPIC ファームウェア 3.6 にて言及) でも、エディタの改善などが継続されています。

Node-RED 4.0 の登場 (2024年6月リリース)

Node-RED 4.0は2024年6月20日にリリースされ、Node.js 18以降が必要となりました。Node.js 16のサポートが終了したことに伴うメジャーアップデートです。Node.js 20が推奨バージョンとなっています。

Node-RED 4.0 の主な新機能・改善点:

  • オートコンプリート機能の強化: msgプロパティに加え、flow / globalコンテキスト変数や環境変数 (env) の入力時にもオートコンプリートが機能するようになりました。これにより、変数名の入力ミスを防ぎ、開発効率が向上します。💡
  • サブフローにおける設定ノードのカスタマイズ: サブフローの各インスタンスで、異なる設定ノード(MQTTブローカー接続設定など)を使用できるようになりました。これにより、サブフローの再利用性が大幅に向上します。
  • Injectノードのタイムスタンプ書式設定: Injectノードで生成するタイムスタンプの書式(ISO 8601形式など)を選択できるようになりました。従来はミリ秒エポック形式のみで、後続ノードでの変換が必要でした。🕒
  • マルチプレイヤーモード (実験的): settings.jsで有効にすると、複数のユーザーが同時にエディタを開いている場合に、他のユーザーがどのタブを開き、どのノードを編集中かを確認できるようになります。リアルタイム共同編集に向けた第一歩です。👥
  • バックグラウンドデプロイ処理の改善: 他のユーザーがデプロイを行った際の通知や差分表示が改善されました。
  • 差分表示 (Diff) の改善: フローの変更履歴を確認する際、設定が変更されたノードと、単に移動されただけのノードが区別して表示されるようになりました。
  • CSVノードの改善: RFC4180標準への準拠性が向上し、処理速度も改善されました。従来の動作に依存するフローのため、レガシーモードも用意されています。
  • Proxy設定の更新: HTTP Requestノードなどで利用されるProxy設定の扱いが改善されました。
  • ランタイムのデプロイ高速化: 大規模なフローのデプロイがより高速になりました。
これらの機能強化により、Node-REDはさらに使いやすく、強力なツールへと進化しています。

IoTクラウド連携の強化

Node-REDの大きな強みの一つは、様々なクラウドサービスと容易に連携できる点です。最新の動向として、主要クラウドプラットフォームとの連携がさらに強化されています。

主要クラウドプラットフォーム連携

AWS IoT, Google Cloud IoT Platform, Microsoft Azure IoT Hub など、主要なクラウドベンダーが提供するIoTサービスと連携するための専用ノード (コントリビュートノード) がコミュニティによって活発に開発・メンテナンスされています。

例えば、以下のようなノードがあります。

  • node-red-contrib-aws-iot-hub
  • node-red-contrib-google-cloud
  • node-red-contrib-azure-iot-hub
  • シーメンス社のMindSphere連携ノード (JWTを使ったOAuth連携など)
これらのノードは、各クラウドサービスの認証方式の変更(例: 証明書ベース認証、SASトークン、JWTなど)への追従や、新しいAPI機能への対応など、継続的にアップデートされています。これにより、ユーザーは複雑な認証処理やAPI仕様を意識することなく、クラウド連携を実装できます。Google Cloud Platform (GCP) 上でNode-REDを実行し、GCPの各種サービス (Cloud Storageなど) と連携するフローも容易に構築できます。

MQTT連携の進化

IoTの標準プロトコルとも言えるMQTTについても、Node-REDは標準でMQTT In/Outノードを提供しています。近年のアップデートでは、TLS/SSLによる暗号化通信のサポート強化や、最新のMQTTバージョン(v5など)への対応が進んでいます。
設定項目も増え、より細かな接続オプション(Keep Alive設定、Clean Session、Willメッセージなど)を指定できるようになり、信頼性の高い通信を実現しやすくなっています。

標準プロトコル対応

HTTP/HTTPSリクエスト、WebSocket、TCP、UDPなど、標準的な通信プロトコルに対応するコアノードも継続的に改善されています。Proxy対応の強化 (v4.0) や、より柔軟なリクエスト/レスポンス処理が可能になっています。

サーバーレス連携

AWS Lambda, Google Cloud Functions, Azure Functions といったサーバーレスコンピューティングサービスとの連携も容易です。HTTP Requestノードを使ってファンクションのエンドポイントを呼び出したり、クラウドプラットフォーム側のイベントトリガーとNode-REDを連携させたりすることで、スケーラブルで効率的なシステムを構築できます。

データ連携・加工

クラウドにデータを送る前処理や、クラウドから受け取ったデータの加工もNode-REDの得意分野です。JSONataを用いた高度なJSONデータの変換、CSVノード (v4.0で改善) による形式変換、Functionノードによるカスタムロジックの実装など、多彩なデータ処理が可能です。InfluxDBとの連携が特に人気で (2023年調査で43.9%が利用)、時系列データの扱いに強みを発揮します。📊

エッジコンピューティングとの連携深化

クラウドだけでなく、デバイスに近い場所(エッジ)でデータ処理を行うエッジコンピューティングの分野でもNode-REDの活用が広がっています。

多様なエッジデバイスでの実行

Raspberry Piはその代表例で、OSにNode-REDが標準搭載されたこともあります。近年では、NVIDIA JetsonのようなAI処理能力を持つエッジデバイスや、より堅牢な産業用PC、PLC (Programmable Logic Controller) など、様々なエッジ環境でNode-REDが動作するようになっています。アットマークテクノ社のArmadilloのようなIoTゲートウェイ向けにNode-REDコンテナが提供される (2023年11月) など、導入のハードルも下がっています。🏭

エッジAI連携

エッジデバイス上でAI推論を行う「エッジAI」の隆盛に伴い、Node-REDとAIフレームワークを連携させる動きが活発化しています。

  • TensorFlow.jsノード: ブラウザやNode.js環境でTensorFlowモデルを実行できるノード。
  • Edge Impulse連携: エッジデバイス向けMLプラットフォームであるEdge Impulseで学習したモデルを、WebAssembly経由でNode-REDから利用するノード (node-red-contrib-edge-impulse など)。
  • 専用ハードウェア連携: ADLINK社のVizi-AI devkitのように、特定のAIアクセラレータ (Intel Movidius Myriad X VPUなど) を搭載したハードウェア上で、Node-REDを使って推論結果に基づいたアクション (アラーム作動など) を簡単に作成できるソリューション (2020年頃)。
  • その他AI関連ノード: OpenAI API (ChatGPTなど) と連携するノード、顔認識AIノード (@good-i-deer/node-red-contrib-vision-ai)、ベクトルデータベース (Pinecone, ChromaDB) と連携するノードなどが登場しています。🤖
これにより、プログラミング経験が少なくても、エッジデバイスで高度なAI画像認識や異常検知などを実装し、その結果をクラウドに送信したり、ローカルで制御に反映させたりすることが容易になっています。

リソース効率とオフライン機能

リソースが限られたエッジデバイスで動作させるため、Node-RED自体の軽量化やメモリ効率の改善も継続的に行われています。また、ネットワーク接続が不安定な環境でも動作できるよう、オフラインでのデータ蓄積や、接続回復時のデータ同期といった機能を実現するためのフロー設計パターンや関連ノードの活用が重要になっています。

セキュリティ動向

IoTシステムにおいてセキュリティは極めて重要です。Node-REDもその例外ではなく、セキュリティ強化に関する取り組みが進んでいます。

Node-RED自体のセキュリティ強化

  • 認証・認可: settings.js ファイルで adminAuth を設定することで、エディタやAdmin APIへのアクセスに認証(ユーザー名/パスワード、OAuth/OpenID連携など)を要求できます。読み取り専用アクセス権限 (read) や、より細かい権限設定 (permissions) も可能です。
  • HTTPS通信の標準化: エディタアクセスやAPI通信をHTTPS化することが強く推奨されています。settings.js で証明書と秘密鍵を設定することで有効化できます。Let’s Encryptなどの無料証明書も利用可能です。Node-RED 1.1.0以降では、証明書の動的な更新にも対応しています (Node.js 11以降が必要)。
  • 環境変数による機密情報管理: APIキーやパスワードなどの機密情報をフロー内に直接書き込まず、環境変数経由で参照することがベストプラクティスとされています。Node-RED 4.0では環境変数のオートコンプリートもサポートされました。
  • 脆弱性対応: Node-RED本体および依存するNode.jsやライブラリの脆弱性に対して、迅速なアップデートが行われています。定期的なバージョンアップが重要です。

Node-REDを実行する基盤となるNode.js自体のセキュリティも重要です。Node.jsプロジェクトは定期的にセキュリティアップデートをリリースしており (例: 2023年4月のアップデートでは複数の脆弱性に対処)、Node-REDもこれに合わせてサポートするNode.jsバージョンを見直しています。

デフォルト設定のNode-REDはセキュリティが有効になっていないため、特にインターネットに公開する場合や機密データを扱う場合は、これらのセキュリティ設定を適切に行うことが不可欠です。🛡️

コミュニティとエコシステムの動向

Node-REDの強みの一つは、活発で協力的なコミュニティと、それによって育まれる豊かなエコシステムです。

コントリビュートノードの増加

Node-RED Flow Libraryには、現在4500を超えるサードパーティ製のノードが登録されており、その数は増え続けています。特定のハードウェア、データベース、クラウドサービス、プロトコルに対応したノードがコミュニティによって開発・共有されることで、Node-REDで実現できることの幅が大きく広がっています。AI関連ノードの増加も近年の特徴です。🌟

活発な情報交換

公式フォーラムには2万人以上のユーザーが登録し、日々活発な議論や情報交換が行われています。SlackやMastodon、Stack Overflowなどでもコミュニティが形成されており、初心者から熟練者まで、問題解決やアイデア共有の場として機能しています。日本ではNode-RED日本ユーザ会 (Node-RED User Group Japan) が中心となり、ドキュメント翻訳やイベント開催 (Node-RED Conなど) を行っています。🇯🇵

産業界・教育分野での普及

当初はホビイストやプロトタイピングでの利用が中心でしたが、近年では産業オートメーションや製造業 (2023年調査で利用者の40.3%が製造業に従事) での本格的な活用事例が増えています。OPC-UAやModbusといった産業用プロトコルに対応したノードの利用も増加傾向にあります。 また、教育分野でも、プログラミングやIoTの入門教材としてNode-REDが採用されるケースが増えています。これにより、将来的にNode-REDスキルを持つ人材が増加することが期待されます。🎓

周辺ツールの充実

Node-RED本体だけでなく、開発や運用を支援するツールやサービスも登場しています。例えば、FlowFuseはNode-REDのチームでの共同開発、デプロイ管理、ダッシュボード作成などを支援するプラットフォームを提供しています。enebularも同様に、フロー管理や複数デバイスへのデプロイ機能などを提供し、Node-REDの活用を促進しています。これらのツールは、特にエンタープライズ環境でのNode-RED利用を後押ししています。

まとめと今後の展望

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