VGGとは?画像認識の基礎を築いたニューラルネットワークを初心者向けに解説

AIや深層学習(ディープラーニング)の世界に足を踏み入れると、「VGG」という言葉をよく目にします。これは、現代の画像認識技術の基礎を築いた、非常に重要なキーワードです。

この記事では、AI初心者の方でも理解できるように、VGGとは何か、その特徴や重要性について分かりやすく解説していきます。

VGGが指す2つの意味

まず知っておきたいのは、「VGG」という言葉が主に2つの意味で使われるという点です。

  1. 研究グループとしてのVGG
    VGGは、英国オックスフォード大学の研究グループである「Visual Geometry Group」の略称です。 このグループは、コンピューターが画像や映像を理解するための技術(コンピュータビジョン)を専門に研究しています。
  2. ニューラルネットワークモデルとしてのVGG
    一般的に「VGG」と言う場合、こちらの意味で使われることがほとんどです。これは、上記のVGG(研究グループ)が開発した、非常に有名な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)のモデル(構造)を指します。

この記事では、主に後者のニューラルネットワークモデルとしてのVGGについて詳しく見ていきます。

深層学習モデル「VGG」を詳しく見てみよう

VGGモデルは、AIが画像に何が写っているかを識別するための「目」と「脳」の役割を果たす、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の一種です。

VGGが開発された背景

VGGが世界的に有名になったのは、2014年に開催された大規模な画像認識コンペティション「ILSVRC (ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)」がきっかけです。 このコンペで、VGGは非常に高い精度を出し、準優勝という輝かしい成績を収めました。 これにより、VGGの設計思想がその後の多くの研究に大きな影響を与えることになったのです。

VGGの最大の特徴:シンプルで深い構造

VGGの最も重要な特徴は、「3×3」という小さなサイズの「畳み込みフィルター」を使い、層を深く積み重ねた点にあります。

  • 畳み込みフィルターとは?
    画像の特徴(輪郭、色、模様など)を抽出するための道具のようなものです。フィルターを画像の上でスライドさせながら、特徴を検出していきます。
  • 層を深くするとは?
    畳み込みフィルターを使った処理(畳み込み層)を何段にも重ねることを指します。浅い層では単純な線や角を、層が深くなるにつれて、それらを組み合わせた目や鼻、顔全体といった、より複雑で抽象的な特徴を捉えられるようになります。

VGGが登場する以前のモデル(例えばAlexNet)では、様々なサイズのフィルターが使われていました。 それに対してVGGは、3×3という最小限のフィルターに統一し、それをひたすら重ねるという非常にシンプルな構造を採用しました。 このアプローチにより、ネットワークのパラメータ数を抑えつつ、層を深くすることで高い表現力を獲得できることを証明したのです。

VGGの種類:VGG16とVGG19

VGGには、ネットワークの深さに応じていくつかのバリエーションがあります。その中でも特に有名なのが「VGG16」と「VGG19」です。 この数字は、モデルの中にある重みを持つ層(学習によってパラメータが更新される層)の数を表しています。

モデル名説明主な層の構成
VGG16重みを持つ層が16層あるモデル。 バランスの良さから広く利用されています。畳み込み層: 13層
全結合層: 3層
VGG19重みを持つ層が19層あるモデル。 VGG16よりもさらに深く、表現力は高いですが、その分計算コストも大きくなります。畳み込み層: 16層
全結合層: 3層

どちらのモデルも基本的な構造は同じで、畳み込み層と、画像サイズを小さくして計算を効率化するプーリング層を組み合わせ、最後に全結合層で画像の分類を行います。

なぜVGGは今でも重要なのか?

VGGは2014年に発表された少し前のモデルですが、今なお重要な存在です。

  • その後のモデルへの影響: VGGが示した「ネットワークは深い方が性能が上がる」という考え方は、ResNetをはじめとする後続の多くの高性能モデルに受け継がれています。
  • 転移学習での活用: VGGは1000種類もの画像を学習した「学習済みモデル」として公開されています。 この学習済みの知識をベースに、別の新しいタスク(例えば、犬と猫の画像分類など)を少ないデータで効率的に学習させる「転移学習」という手法で非常に広く利用されています。
  • 構造のシンプルさ: 構造が均一でシンプルなため、初心者にとっても理解しやすく、深層学習の教育的な題材としても優れています。

PythonでVGGを使ってみよう(Kerasの例)

プログラミングでAIを扱う際、TensorFlowやPyTorchといったライブラリを使いますが、その中でも人気の高いKerasを使えば、VGGモデルを驚くほど簡単に利用できます。

以下は、PythonとKerasを使って、学習済みのVGG16モデルを読み込み、その構造を確認する簡単なコード例です。

# TensorFlowの中からKerasの機能と、VGG16モデルをインポート
from tensorflow.keras.applications.vgg16 import VGG16
# ImageNetで学習済みの重みを持つVGG16モデルを読み込む
# include_top=Falseにすると、最後の全結合層(分類部分)を除いた特徴抽出部分のみを読み込める
model = VGG16(weights='imagenet', include_top=False)
# モデルの構造を表示
model.summary()

この数行のコードだけで、何百万枚もの画像で鍛え上げられた強力な画像特徴抽出器を手元で利用することができます。

まとめ

VGGは、現代AIの画像認識分野において、その後の技術発展の方向性を決定づけた金字塔と言えるモデルです。最後に要点をまとめてみましょう。

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