初心者向け!画像認識AI「SegNet」をわかりやすく徹底解説

SegNetとは?

SegNet(セグネット)は、ディープラーニングを用いたセマンティックセグメンテーションという技術のための代表的なモデル(アーキテクチャ)の一つです。 2015年にイギリスのケンブリッジ大学の研究チームによって発表されました。

では、その「セマンティックセグメンテーション」とは何でしょうか?

簡単に言うと、「画像に写っているものをピクセル(画素)単位で領域分けし、それぞれが何であるかを分類する技術」のことです。 例えば、自動運転で使われるカメラの映像があったとします。セマンティックセグメンテーションを使うと、映像の中の「道路」「車」「歩行者」「建物」「空」といった領域を、ピクセルレベルで正確に色分けして識別できます。

SegNetは、このセマンティックセグメンテーションを効率的かつ高精度に行うために設計された、画期的なモデルなのです。

SegNetの仕組みとアーキテクチャ

SegNetの最大の特徴は、「エンコーダ・デコーダ構造」と「プーリングインデックス」の活用にあります。 少し専門的になりますが、一つずつ見ていきましょう。

エンコーダ・デコーダ構造

SegNetは、大きく分けて2つの部分から構成されています。

  • エンコーダ(Encoder): 入力された画像から特徴を抽出する部分です。 画像をだんだん小さく(低解像度に)しながら、それが「車」なのか「人」なのかといった、より抽象的で本質的な情報(特徴)を捉えていきます。 一般的には、VGG16という有名な画像認識モデルの構造がベースとして使われています。
  • デコーダ(Decoder): エンコーダが抽出した特徴情報をもとに、元の画像サイズに復元(アップサンプリング)しながら、ピクセルごとの分類結果を出力する部分です。 エンコーダで小さくなった特徴マップを、元の解像度に戻し、どのピクセルがどのクラスに属するかを予測します。

この対称的な構造により、画像の内容を理解し、それをピクセルレベルの精密な地図に再構築することができるのです。

最大の特徴:プーリングインデックスの利用

SegNetを他のモデルと大きく区別するのが、プーリングインデックス(Pooling Indices)を使った効率的なアップサンプリングです。

エンコーダ部分では、画像の特徴を保ちながらサイズを小さくするために「マックスプーリング」という処理が行われます。これは、小さな領域内の最大値だけを取り出す処理です。このときSegNetは、どの位置のピクセルの値が最大値だったのか、その位置情報(インデックス)を記憶しておきます。

そして、デコーダ部分で画像を元のサイズに戻す(アップサンプリングする)際に、この記憶しておいた位置情報を使います。 これにより、エンコーダで失われがちな物体の境界線などの詳細な位置情報を正確に復元できるため、高精度なセグメンテーションが可能になります。 また、この方法は計算量が少なく、メモリ効率が良いという大きな利点もあります。

他の代表的なモデルとの比較

セマンティックセグメンテーションには、SegNet以外にも有名なモデルがあります。ここでは、代表的な「FCN」と「U-Net」との違いを表で比較してみましょう。

モデル名主な特徴アップサンプリング方法メリット・得意なこと
FCN (Fully Convolutional Network)セマンティックセグメンテーションの先駆け的存在。 全結合層を畳み込み層に置き換えた。逆畳み込み(Deconvolution)任意のサイズの画像を入力できる。
SegNetエンコーダ・デコーダ構造で、プーリングインデックスを利用する。Unpooling(プーリングインデックスを利用)パラメータが少なく、メモリ効率が良い。 物体の境界線の表現が得意。
U-Netネットワークの形がU字型。エンコーダとデコーダを「スキップコネクション」でつなぐ。逆畳み込み+スキップコネクション少ない学習データでも高精度。 医療画像など、細かい部分の認識が得意。

U-Netの「スキップコネクション」は、エンコーダ部分の途中の特徴マップを、対応するデコーダ部分に直接コピーして結合する仕組みです。 これにより、SegNetとは異なるアプローチで詳細な情報を復元しています。

SegNetの応用例

SegNetのようなセマンティックセグメンテーション技術は、ピクセル単位での正確な画像理解が求められる様々な分野で活躍しています。

  • 自動運転: SegNetの最も代表的な応用分野の一つです。 道路、車線、歩行者、対向車、標識などをリアルタイムで正確に識別し、安全な走行をサポートします。
  • 医療画像解析: MRIやCTスキャン画像から、特定の臓器や腫瘍、病変部などを正確に抽出し、医師の診断を支援します。
  • 衛星画像解析: 広大な土地の中から森林、都市部、水域などを自動で分類し、環境モニタリングや都市計画に役立てられます。
  • 監視カメラ: 不審な人物や放置された物体の検出など、防犯システムに応用されます。

まとめ

今回は、画像認識AIのモデルの一つである「SegNet」について解説しました。

  • SegNetは、画像をピクセル単位で分類するセマンティックセグメンテーションのためのモデル。
  • エンコーダ・デコーダ構造を持ち、画像の特徴抽出と分類結果の再構築を行う。
  • 最大の特徴は、エンコーダで記憶したプーリングインデックスをデコーダで利用し、効率的かつ高精度に物体の境界線を復元できる点。
  • 自動運転医療画像解析など、幅広い分野で応用されている。

SegNetは、その後の多くのセグメンテーション技術に影響を与えた重要なアーキテクチャです。この機会に、AIによる画像認識の世界にさらに興味を持っていただければ幸いです。

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