sqlninjaとは? 🤔
sqlninjaは、WebアプリケーションのバックエンドとしてMicrosoft SQL Server (MS SQL Server) を使用している場合に、そのSQLインジェクション脆弱性を悪用することに特化したツールです。単に脆弱性を見つけるだけでなく、その脆弱性を利用してデータベースサーバー上でリモートシェルを取得し、OSレベルでのアクセスを獲得することを主な目的としています。
非常に厳しい環境、例えばファイアウォールによる通信制限が厳しい場合でも、様々なテクニックを駆使してリモートアクセスを試みます。ペネトレーションテスターがSQLインジェクション脆弱性を発見した際に、データベースサーバーの制御を奪取するプロセスを自動化し、支援するために使用されるべきツールです。
SQLインジェクションから始まり、最終的にはデータベースサーバーへの完全なGUIアクセス(例えばVNC経由)までをも可能にする、強力な機能を持っています。Metasploit Frameworkとの連携機能も備えています。
⚠️ 注意: sqlninjaは、SQLインジェクション脆弱性を発見するためのツールではありません。脆弱性がすでに特定されている場合に、その悪用を自動化・効率化するためのツールです。また、その強力な機能から、必ず許可された環境でのみ、倫理的な目的で使用してください。不正な目的での使用は法律で禁止されています。
主な機能 ✨
sqlninjaは多岐にわたる強力な機能を備えています。以下にその主なものを挙げます。
- フィンガープリント: リモートのMS SQL Serverの詳細情報を収集します。
- バージョン情報
- クエリを実行しているユーザー
- ユーザー権限
xp_cmdshell
ストアドプロシージャの利用可否- データベースの認証モード
- データ抽出: 時間ベースのブラインドSQLインジェクションやDNSトンネルを利用して、データベースからデータを抽出します。(実験的な機能)
- saパスワードのブルートフォース: 辞書攻撃またはインクリメンタル(総当たり)方式で’sa’アカウントのパスワードを特定します。(主にSQL Server 2000向け)
- 権限昇格: ‘sa’パスワードが判明した場合、現在のDBユーザーをsysadminグループに追加します。(主にSQL Server 2000向け)
xp_cmdshell
の復活: 標準のxp_cmdshell
が削除されている場合に、カスタムのxp_cmdshell
を作成します。(主にSQL Server 2000向け)- 実行ファイルのアップロード: 通常のHTTPリクエストのみを使用して、ターゲットサーバーに実行ファイルをアップロードします。FTPやTFTPは不要で、VBScriptや
debug.exe
を利用します。 - シェルアクセス:
- ダイレクトシェル/リバースシェル: TCPおよびUDPプロトコルでの直接接続シェル(バインドシェル)または逆接続シェル(リバースシェル)を確立します。
- DNSトンネルシェル: TCP/UDPポートが利用できないが、DBサーバーが外部ホストの名前解決を行える場合に、DNSトンネルを介した擬似シェルを確立します。
- ICMPトンネルシェル: TCP/UDPポートが利用できないが、DBサーバーが攻撃者のマシンにpingを送信できる場合に、ICMPトンネルを介したシェルを確立します。
- ポートスキャン (バックキャン): ターゲットのSQL Serverから攻撃者のマシンに対してポートスキャンを行い、ファイアウォールで許可されている「アウトバウンド」ポートを見つけ、リバースシェルに利用します。
- Metasploit連携: Metasploit Framework 3と連携し、VNCサーバーインジェクションによるGUIアクセスや、Meterpreterペイロードのアップロードを行います。
- 回避技術: いくつかのIDS(侵入検知システム)、IPS(侵入防止システム)、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)を混乱させるための回避技術を備えています(例: クエリの16進エンコード、コメント区切り、ランダムな大文字/小文字化、ランダムなURIエンコード)。
インストールと要件 💻
sqlninjaはPerlで書かれており、いくつかのPerlモジュールが必要です。また、特定の機能(Metasploit連携など)には追加のツールが必要です。
動作環境:
sqlninjaは主にUnix系OS向けに設計されており、以下のOSでの動作が報告されています。
- Linux (Gentoo, Ubuntu, Kali Linux など)
- FreeBSD
- Mac OS X
- iOS
Windowsは公式にはサポートされていません。
依存関係 (Perlモジュール):
以下のPerlモジュールが必要です。通常、システムのパッケージマネージャー(apt, yum, pkg, portなど)やCPAN (www.cpan.org) を使ってインストールします。
NetPacket
Net::Pcap
Net::DNS
Net::RawIP
IO::Socket::SSL
DBI
(データベース操作が必要な場合)- 特定のDB用DBDドライバ (例:
DBD::mysql
,DBD::Pg
など、ただしsqlninjaはMS SQL Server特化なので通常は不要)
Kali Linuxなど、ペネトレーションテスト用のディストリビューションでは、これらの依存関係が事前にインストールされているか、簡単にインストールできることが多いです。
追加ツール:
- Metasploit Framework 3 (または以降):
metasploit
モードを使用する場合に必要です。 - VNCクライアント: Metasploit連携でVNCペイロードを使用する場合に必要です。
インストール手順 (一般的なLinux/macOS):
- 公式サイトからダウンロード: sqlninjaの公式サイト (例: SourceForge) から最新のtarball (.tar.gz) をダウンロードします。
- 展開: ダウンロードしたファイルを展開します。
tar zxvf sqlninja-x.y.z.tar.gz
- ディレクトリ移動: 展開されたディレクトリに移動します。
cd sqlninja-x.y.z
- (推奨) 依存関係の確認/インストール: 上記のPerlモジュールがインストールされているか確認し、なければインストールします。Ubuntu/Debian系では以下のようなコマンドになります。
FreeBSDではsudo apt-get update sudo apt-get install libnet-pcap-perl libnet-dns-perl libnetpacket-perl libnet-rawip-perl libio-socket-ssl-perl perl # 他に必要なものがあれば追加
pkg install p5-Net-Pcap p5-Net-DNS p5-NetPacket p5-Net-RawIP p5-IO-Socket-SSL
など。 macOS (MacPorts) ではsudo port install p5-net-pcap p5-net-dns p5-netpacket p5-net-rawip p5-io-socket-ssl
など。 - (任意) インストールスクリプト実行: sqlninjaにはインストールスクリプトが含まれている場合があります (例:
./sqlninja -i
や./sqlninja.pl -i
)。これは主に設定ファイルの場所などを設定する目的かもしれませんが、必須ではないことが多いです。直接ディレクトリから実行することも可能です。 - 動作確認: バージョン情報を表示して動作を確認します。
または./sqlninja -v
perl sqlninja -v
パッケージマネージャーでのインストール:
お使いのOSによっては、パッケージマネージャーから直接インストールできる場合があります。
- FreeBSD:
pkg install sqlninja
またはpkg install security/sqlninja
- macOS (MacPorts):
sudo port install sqlninja
- Kali Linux: 通常、デフォルトで含まれているか、
apt-get install sqlninja
でインストール可能です。
基本的な使い方 🛠️
sqlninjaの動作は、主に設定ファイルとコマンドラインオプションによって制御されます。
1. 設定ファイル (sqlninja.conf
):
デフォルトでは、実行ディレクトリにある sqlninja.conf
ファイルが読み込まれます。このファイルには、攻撃対象のホスト、脆弱なURLやパラメータ、SQLインジェクションに使用する文字列、認証情報(必要な場合)、回避技術の設定などを記述します。
初めて実行する際や、sqlninja.conf
が存在しない場合、sqlninjaは対話的に質問し、設定ファイルを生成します。
主な設定項目例:
- ターゲットホストとポート
- 脆弱性のあるURLパス
- HTTPメソッド (GET/POST/COOKIE)
- 脆弱性のあるパラメータ名
- インジェクションポイントを示すマーカー (例:
%SQL%
) - インジェクションの前後の文字列
- Cookie情報 (必要な場合)
- プロキシ設定
- 回避技術の選択
- ローカルIPアドレス(リバースシェルやバックキャン用)
- スニッフィング用インターフェース(バックキャン用)
2. コマンドラインオプション:
コマンドラインオプションで、sqlninjaに実行させたいアクション(攻撃モード)を指定します。
主なオプション:
-m <attack mode>
: 攻撃モードを指定します。必須オプションです。-f <configuration file>
: 使用する設定ファイルを指定します。デフォルトはsqlninja.conf
です。-v
: 詳細な情報を出力します (Verbose)。-d <debug mode>
: デバッグ情報を出力します。問題解決に役立ちます。-p <'sa' password>
:escalation
モードで権限昇格に使用したり、他のモードで管理者としてクエリを実行したりするために、’sa’パスワードを指定します。-w <wordlist>
:bruteforce
モードで使用する辞書ファイルを指定します。-g
:upload
モードと組み合わせて使用し、アップロード用のdebugスクリプトを生成して終了します。
基本的な実行フロー:
典型的なsqlninjaの使用手順は以下のようになります。
- 設定ファイルの準備: ターゲットに合わせて
sqlninja.conf
を作成または編集します。 - テストモード (
test
): まず、設定が正しく、SQLコードが注入できているかを確認します。
または(設定ファイルがデフォルト名の場合)./sqlninja -m test -f mytarget.conf
./sqlninja -m test
'waitfor delay'
の注入を試みることで、インジェクションが可能かテストします。 - フィンガープリントモード (
fingerprint
): ターゲットのSQL Serverの詳細情報を収集します。./sqlninja -m fingerprint
- (必要なら) パスワードクラックと権限昇格:
bruteforce
モードで ‘sa’ パスワードを特定します (SQL Server 2000)。./sqlninja -m bruteforce -w /path/to/wordlist.txt
escalation
モードで権限を昇格します (SQL Server 2000)。./sqlninja -m escalation -p <found_sa_password>
- (必要なら)
xp_cmdshell
の復活:resurrectxp
モードでxp_cmdshell
を再作成します (SQL Server 2000)。
(sa権限が必要な場合があります)./sqlninja -m resurrectxp
- ファイルのアップロード (
upload
): 例えば、netcat
(nc.exe) などのツールをターゲットにアップロードします。sqlninjaには事前に変換されたスクリプト (scripts/nc.scr
など) が含まれていることがあります。
(アップロードするファイルは対話的に選択します)./sqlninja -m upload
- シェル取得:
- ダイレクトシェル (
dirshell
): ターゲットサーバーに直接接続してシェルを取得します。./sqlninja -m dirshell
- バックキャン (
backscan
): ターゲットから攻撃者への接続が許可されているポートを探します。./sqlninja -m backscan
- リバースシェル (
revshell
): バックキャンで見つかったポートなどを利用して、ターゲットから攻撃者のマシンに接続させ、シェルを取得します。./sqlninja -m revshell
- DNSトンネルシェル (
dnstunnel
): DNSクエリを利用してシェルを確立します。./sqlninja -m dnstunnel
- ICMPトンネルシェル (
icmpshell
): ICMP (ping) を利用してシェルを確立します。./sqlninja -m icmpshell
- Metasploit連携 (
metasploit
): Metasploitのペイロード (MeterpreterやVNC) を利用してアクセスを取得します。./sqlninja -m metasploit
- ダイレクトシェル (
- (その他) SQLコマンド実行 (
sqlcmd
): 任意のSQLコマンドを実行します。
(実行するコマンドは対話的に入力します)./sqlninja -m sqlcmd
- (その他) データ抽出 (
getdata
): データベースからデータを抽出します。設定ファイルで抽出方法(時間ベース or DNSトンネル)を指定します。./sqlninja -m getdata
攻撃モード一覧 ⚔️
sqlninjaは多数の攻撃モードを備えています。-m
オプションで指定します。
モード名 | 略称 | 説明 |
---|---|---|
test |
t | 設定ファイルが正しく、SQLインジェクションが可能かテストします (waitfor delayを使用)。基本の接続確認。✅ |
fingerprint |
f | リモートのMS SQL Serverのバージョン、ユーザー権限、認証モードなどを特定します。🕵️ |
bruteforce |
b | ‘sa’アカウントのパスワードを辞書攻撃または総当たりでクラックします (主にSQL Server 2000)。🔑 |
escalation |
e | 判明した’sa’パスワードを使い、現在のDBユーザーをsysadminグループに追加します (主にSQL Server 2000)。⬆️ |
resurrectxp |
x | 標準のxp_cmdshell が削除されている場合にカスタム版を作成します (主にSQL Server 2000)。<0xF0><0x9F><0xAA><0xAC> |
upload |
u | 実行ファイル (通常は事前にdebug.exe 用に変換されたスクリプト) をターゲットサーバーにアップロードします。📤 |
dirshell |
s | ターゲットサーバー上でシェルを起動し、直接接続 (バインドシェル) を待ち受けます。💻 |
backscan |
k | ターゲットサーバーから攻撃者のマシンに対し、接続可能な「アウトバウンド」TCP/UDPポートをスキャンします。📡 |
revshell |
r | ターゲットサーバーから攻撃者のマシンに接続させ、リバースシェルを確立します。📞 |
dnstunnel |
d | DNSクエリを利用して通信を行い、擬似シェルを確立します。🌐 |
icmpshell |
i | ICMP (ping) パケットを利用して通信を行い、擬似シェルを確立します。➡️ |
metasploit |
m | Metasploit Frameworkと連携し、ペイロード (Meterpreter, VNCなど) を注入してアクセスします。💣 |
sqlcmd |
c | 任意のSQLコマンドをターゲットサーバーで実行します。⌨️ |
getdata |
g | データベースからデータを抽出します (時間ベース or DNSトンネル)。🎣 (実験的機能) |
sqlninjaを引数なしで実行すると、利用可能なモードとその略称の一覧が表示されます。
倫理的な考慮事項と免責事項 ⚖️
重要: sqlninjaは非常に強力なツールであり、ターゲットシステムに深刻な影響を与える可能性があります。このツールは、教育目的、または自身が管理するシステム、あるいは明示的に許可を得たシステムに対するペネトレーションテストにのみ使用してください。
許可なく他者のシステムに対してsqlninjaを使用することは、重大な法律違反となり、刑事罰の対象となる可能性があります。ツールの使用によって生じたいかなる損害や法的問題についても、使用者が全責任を負うものとします。
SQLインジェクションは、Webアプリケーションにおける重大な脆弱性の一つです。sqlninjaのようなツールが存在することを理解し、自身の管理するシステムにおいて適切なセキュリティ対策(入力値の検証、プリペアドステートメントの使用、WAFの導入など)を講じることが極めて重要です。
まとめ 📝
sqlninjaは、Microsoft SQL ServerをバックエンドとするWebアプリケーションに対するSQLインジェクション脆弱性の悪用に特化した、強力なペネトレーションテストツールです。フィンガープリントから権限昇格、多様なシェルアクセス手法、Metasploit連携まで、幅広い機能を提供します。
しかし、その強力さゆえに、使用には細心の注意と高い倫理観が求められます。必ず合法かつ倫理的な範囲内で、セキュリティテストや研究目的にのみ使用してください。
このツールを理解することは、SQLインジェクション攻撃の脅威を具体的に認識し、より堅牢なWebアプリケーションセキュリティを構築するための一助となるでしょう。 💪
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