もう怖くない!👮 ゼロトラストネットワーク入門

「何も信頼しない」新しいセキュリティの考え方

ゼロトラストネットワークって何? 🤔

ゼロトラストネットワーク(Zero Trust Network)とは、文字通り「何も信頼しない (Zero Trust)」という考え方に基づいた、新しいネットワークセキュリティのモデルです。

これまでのセキュリティは、「社内ネットワークは安全」「社外ネットワークは危険」という前提で、社内と社外の境界線(境界)を守る「境界型防御」が主流でした。「お城の周りにお堀を掘って守る」イメージですね🏯。

しかし、クラウドサービス(SaaSなど)の普及や、テレワークの増加によって、社内と社外の境界が曖昧になってきました。自宅やカフェから会社のデータにアクセスしたり、会社のデータをクラウド上に保存したりするのが当たり前になったのです。

このような状況では、境界だけを守っていても、内部に侵入されたり、許可されたユーザーが悪意を持ったりした場合(内部不正)に対応できません。

そこで登場したのがゼロトラストです。ゼロトラストは、アクセスする場所(社内か社外か)に関わらず、「すべてのアクセスを信頼せず、常に検証する」ことを基本原則とします。アクセスするたびに「あなた本当に大丈夫? 🤔」と確認するイメージです。

この考え方は、2010年頃に米国の調査会社 Forrester Research社のアナリストによって提唱されました。近年、働き方の変化やサイバー攻撃の巧妙化を受けて、ますます重要性が高まっています。

なぜゼロトラストが必要なの? 🤷‍♀️

従来の境界型防御モデルには、現代の働き方やIT環境においていくつかの問題点が出てきました。

  • クラウドサービスの普及: 会社の重要なデータが社外のクラウド上に置かれることが増え、境界線の意味が薄れた。
  • 働き方の多様化 (テレワークなど): 社外から社内システムへのアクセスが増加。自宅のWi-Fiなど、セキュリティ強度が低い可能性のあるネットワークからの接続も増えた。
  • デバイスの多様化 (BYODなど): 個人のスマートフォンやPCから業務システムにアクセスする機会が増え、管理されていない端末からのアクセスリスクが高まった。
  • サイバー攻撃の巧妙化: 標的型攻撃や内部不正など、境界線の内側を狙った攻撃や、内部からの情報漏洩リスクに対応する必要が出てきた。
  • VPNの限界: テレワークの急増でVPN(Virtual Private Network)の負荷が増大し、通信が遅くなったり、VPN自体の脆弱性が狙われたりするケースも出てきた。

これらの課題に対応するために、「すべてを疑う」ゼロトラストの考え方が必要とされているのです。

境界型防御 vs ゼロトラスト

観点 境界型防御モデル ゼロトラストモデル
基本的な考え方 社内は信頼、社外は疑う (Trust, but verify) すべて信頼せず、常に検証する (Never Trust, Always Verify)
守る対象 ネットワークの境界線 (お堀) データ、ID、デバイス、アプリケーションなど個々のリソース
アクセスの検証 主に境界通過時に検証 すべてのアクセス要求ごとに毎回検証
ネットワーク 社内ネットワークを信頼 すべてのネットワークを潜在的に危険とみなす
主な対策 ファイアウォール、VPN、プロキシなど 多要素認証(MFA)、ID管理、デバイス管理、マイクロセグメンテーション、アクセス制御、ログ監視など

ゼロトラストのコア原則 💪

ゼロトラストを実現するためには、いくつかの重要な原則があります。

  1. 常に検証する (Verify Explicitly): ユーザーIDやパスワードだけでなく、使用しているデバイスの状態、場所、アクセス先の情報など、利用可能なあらゆる情報に基づいて、アクセス要求ごとに認証と認可を行う。
  2. 最小権限の原則 (Use Least Privilege Access): ユーザーやデバイスには、業務に必要な最小限のアクセス権限のみを与える。必要以上の権限を与えないことで、万が一侵害された場合の被害を最小限に抑える。
  3. 侵害を前提とする (Assume Breach): 攻撃者はすでにネットワーク内にいる、またはいつ侵入してきてもおかしくない、という前提で対策を講じる。ネットワークを細かく分割(マイクロセグメンテーション)し、仮に一部が侵害されても被害が広がらないようにする。

これらの原則に基づき、ID管理、デバイス管理、ネットワーク制御、アプリケーション保護、データ保護、そしてそれらを継続的に監視・分析する仕組みを組み合わせて、ゼロトラスト環境を構築します。

ゼロトラストのメリット ✨

ゼロトラストを導入することには、多くのメリットがあります。

  • セキュリティレベルの向上: 社内外問わずすべてのアクセスを検証するため、不正アクセスやマルウェア感染、内部不正のリスクを大幅に低減できる。
  • 安全なリモートワーク/ハイブリッドワークの実現: 場所やデバイスに依存せず、安全に社内リソースやクラウドサービスへアクセスできるようになり、多様な働き方を支援する。
  • クラウドサービス利用の促進: クラウド環境を含めた統一的なセキュリティポリシーを適用でき、安心してクラウドサービスを活用できる。
  • IT運用管理の効率化: 複数のセキュリティ対策を統合的に管理できる場合があり、運用負荷を軽減できる可能性がある。
  • コンプライアンス対応の強化: アクセスログの取得や厳格なアクセス制御により、各種規制やガイドラインへの準拠を支援する。

ゼロトラスト導入の注意点・課題 🤔

多くのメリットがある一方で、ゼロトラスト導入にはいくつかの注意点や課題も存在します。

  • 導入・運用コスト: 新しいツールの導入や既存システムの改修、運用体制の構築にコストや工数がかかる場合がある。
  • 複雑さ: 複数のセキュリティ技術を連携させる必要があり、設計や実装が複雑になることがある。
  • 利便性への影響: 認証の頻度が増えるなど、適切な設計や設定を行わないと、ユーザーの利便性が低下する可能性がある。(例:アクセスするたびに何度も認証を求められるなど)
  • 段階的な導入が必要: 一気にすべてのシステムをゼロトラスト化するのは難しいため、多くの場合、優先順位をつけて段階的に導入を進める必要がある。

導入を検討する際は、自社の現状の課題や目指す姿を明確にし、中長期的な視点で計画を立てることが重要です。

まとめ 📝

ゼロトラストは、「何も信頼しない、常に検証する」という考え方に基づく、現代のIT環境に適したセキュリティモデルです。 クラウドやテレワークが普及し、サイバー攻撃が巧妙化する中で、従来の境界型防御の限界を補い、より強固なセキュリティを実現します。

導入にはコストや複雑さといった課題もありますが、セキュリティ強化、多様な働き方の実現といった大きなメリットがあります。 自社の状況に合わせて、段階的にでもゼロトラストの考え方を取り入れていくことが、これからのビジネスを守る上で重要になっていくでしょう。🚀