1. シングルサインオン(SSO)って何?
シングルサインオン(Single Sign-On、略してSSO)とは、たった1回のユーザー認証(ログイン)で、連携している複数のWebサービスやアプリケーションに追加認証なしでアクセスできるようになる仕組みのことです。
普段、私たちはたくさんのサービス(メール、社内システム、クラウドストレージなど)を利用していて、それぞれにIDとパスワードが必要ですよね? これだと、たくさんのパスワードを覚えたり管理したりするのが大変ですし、同じパスワードを使い回してしまってセキュリティ的に危ないこともあります。
SSOを導入すると、最初に1つのサービス(認証サーバー)にログインするだけで、他の連携サービスにはパスワードを再入力することなく、スムーズにアクセスできるようになります。まるで、魔法の合鍵を手に入れるようなイメージです。
2. SSOのメリット
SSOには、利用者にも管理者にも嬉しいメリットがたくさんあります。
- 利便性の向上: 何度もログイン情報を入力する手間が省け、ストレスなくサービスを利用できます。特に多くのシステムを使う業務環境では、作業効率が格段にアップします。
- パスワード管理負担の軽減: 覚えるパスワードが基本的に1つになるため、「パスワード忘れた!」という事態や、パスワードをメモするなどの危険な行為が減ります。
- セキュリティの強化: 利用者は複雑なパスワードを1つだけ設定・管理すれば良くなります。また、管理者は認証を一元管理できるため、不正アクセス対策や退職者のアカウント削除などを効率的かつ確実に行え、セキュリティレベルの向上が期待できます。パスワードリセットに関する問い合わせも減り、IT部門の負担も軽くなります。
3. SSOのデメリット・注意点
便利なSSOですが、いくつか注意点もあります。
- 単一障害点(Single Point of Failure): SSOの認証システム自体に障害が発生すると、連携しているすべてのサービスにログインできなくなる可能性があります。2018年頃には、大手クラウドサービスの認証基盤で障害が発生し、多くの連携サービスが一時的に利用できなくなるという事例もありました。対策として、認証システムの冗長化などが重要になります。
- 不正アクセス時の被害拡大リスク: SSOの認証情報(ID/パスワード)が漏洩したり、不正アクセスされたりすると、連携しているすべてのサービスにアクセスされてしまう危険性があります。これを防ぐためには、SSO自体のパスワードを強固にし、多要素認証(MFA)を組み合わせるなどの対策が不可欠です。
- 導入コスト・設定の複雑さ: SSOシステムを導入するには、初期費用や、既存システムとの連携設定など、ある程度のコストと専門知識が必要になる場合があります。
4. SSOの仕組み(代表的な方式)
SSOを実現するための技術的な「方式」はいくつかありますが、ここでは代表的なものを簡単に紹介します。
方式名 | 概要 | 主な利用シーン |
---|---|---|
SAML (Security Assertion Markup Language) | 企業向けSSOでよく使われる標準規格。主にWebブラウザベースのサービス間連携で利用され、認証情報(アサーション)をXML形式で安全に交換します。 | 社内システム、クラウドサービス(Microsoft 365, Google Workspace, Salesforceなど)間の連携 |
OpenID Connect (OIDC) | OpenID 2.0の後継で、OAuth 2.0を拡張した認証の仕組み。主にコンシューマー向けサービス(SNSログインなど)で広く使われています。API連携にも適しています。 | Google, Facebook, LINEなどのアカウントを使った他サービスへのログイン |
Kerberos認証 | 主にWindows Active Directory環境で使われる認証方式。一度認証サーバー(KDC)からチケットを取得すれば、ドメイン内の他のサービスに追加認証なしでアクセスできます。 | Windowsドメイン環境内のファイルサーバーやプリンターへのアクセス |
フォームベース認証 (代行認証) | SSOサーバーがユーザーの代わりにWebサービスのログインフォームにID/パスワードを自動入力する方式。サービス側がSSOに標準対応していなくても導入しやすい場合があります。 | 古いWebシステムやSSO非対応サービスへの暫定的な連携 |
これらの方式は、それぞれ得意な分野や特徴が異なります。どの方式を使うかは、利用したいサービスや環境によって選ばれます。
5. まとめ
シングルサインオン(SSO)は、一度のログインで複数のサービスを使えるようにする便利な仕組みです。パスワード管理の煩わしさから解放され、セキュリティ向上も期待できます。
ただし、認証システム障害時のリスクや、不正アクセスされた場合の被害拡大リスクもあるため、多要素認証を組み合わせるなどの対策が重要です。
私たちのデジタルライフをより快適で安全にしてくれるSSOについて、基本的な知識を持っておくと役立つでしょう。