ラッソ回帰を徹底解説!ディープラーニングとの関係もわかる

データサイエンスや機械学習の分野で頻繁に耳にする「ラッソ回帰(Lasso Regression)」。しかし、その具体的な意味や、特にディープラーニングとどう関係するのか、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ラッソ回帰の基本的な概念から、その特徴、そしてディープラーニングにおける役割まで、初心者にも分かりやすく解説します。

ラッソ回帰とは?

ラッソ回帰は、統計学や機械学習で用いられる回帰分析の手法の一つです。正式には「Least Absolute Shrinkage and Selection Operator」の頭文字をとってLASSOと呼ばれます。

通常の回帰分析(最小二乗法)が予測精度の高さを目指すのに対し、ラッソ回帰はそれに加えて不要な説明変数を自動的に取り除く「変数選択」の機能を持つのが最大の特徴です。

たくさんの特徴量(説明変数)の中から、予測に本当に重要な変数だけを絞り込みたい場合に非常に有効な手法です。これにより、モデルがシンプルになり、解釈しやすくなるというメリットがあります。

ラッソ回帰の核「L1正則化」

ラッソ回帰が変数選択を可能にしているのは、「L1正則化」または「L1ペナルティ」と呼ばれる仕組みのおかげです。

これは、モデルの複雑さにペナルティを課すことで、過学習(訓練データに適合しすぎて、未知のデータに対する予測精度が低下する現象)を防ぐための技術です。

具体的には、各説明変数の係数(重み)の絶対値の合計を、損失関数(予測誤差の指標)に加算します。数式で表すと以下のようになります。

損失関数 + λ * Σ|係数|

ここで重要なのが、ハイパーパラメータであるλ(ラムダ)です。

  • λが大きいほど:ペナルティが強くなり、多くの変数の係数が正確に0になります。これにより、変数選択が行われます。
  • λが小さいほど:ペナルティが弱くなり、通常の最小二乗法に近い結果となります。

係数が0になった変数は、モデルの予測に全く寄与しないことを意味するため、実質的に「不要な変数」として除外されたことになります。これがラッソ回帰による変数選択のメカニズムです。

リッジ回帰との違い

ラッソ回帰としばしば比較される手法に「リッジ回帰(Ridge Regression)」があります。どちらも正則化を用いて過学習を防ぐ手法ですが、ペナルティの与え方が異なります。

項目 ラッソ回帰 (Lasso) リッジ回帰 (Ridge)
正則化項(ペナルティ) L1正則化 (係数の絶対値の和) L2正則化 (係数の二乗和)
係数の挙動 一部の係数が完全に0になることがある 係数は0に近づくが、完全な0にはなりにくい
変数選択機能 あり なし
主な用途 不要な特徴量が多いと想定され、変数選択を同時に行いたい場合 全ての特徴量が予測に寄与すると考えられ、多重共線性(変数間の相関が高い状態)を緩和したい場合

ディープラーニングにおけるラッソ回帰(L1正則化)

ここまでの説明は、主に線形モデルとしてのラッソ回帰に関するものでした。では、ディープラーニングの世界ではどのように関わってくるのでしょうか。

結論から言うと、「ラッソ回帰」というモデルそのものをディープラーニングに直接適用することは稀です。しかし、その根幹技術である「L1正則化」が、ニューラルネットワークの過学習を防ぐためのテクニックとして広く利用されています。

ディープラーニングモデルは非常に複雑でパラメータ数が膨大なため、過学習に陥りやすいという課題があります。そこで、モデルの損失関数にL1正則化項を加えることで、ネットワーク内の重み(パラメータ)の一部を0にします。

これにより、以下のような効果が期待できます。

  • スパースなモデルの実現: 重みが0になるということは、ニューロン間の結合が切断されることを意味します。これにより、ネットワークが「スパース(疎)」になり、不要な結合が削減されます。
  • 過学習の抑制: モデルがより単純化されるため、訓練データへの過剰な適合が抑えられ、汎化性能が向上します。
  • 計算コストの削減: 重みが0の結合は計算上無視できるため、予測時の計算コストが削減される可能性があります。

つまり、ディープラーニングの文脈で「ラッソ」や「L1」という言葉が出てきた場合、それはラッソ回帰モデルそのものではなく、過学習を防ぐための正則化手法としてL1正則化が使われていると理解するのが適切です。

Python (scikit-learn)での実装例

Pythonの機械学習ライブラリであるscikit-learnを使って、ラッソ回帰を簡単に実装できます。


# 必要なライブラリをインポート
import numpy as np
from sklearn.linear_model import Lasso
from sklearn.model_selection import train_test_split
from sklearn.metrics import mean_squared_error

# サンプルデータの生成
# X: 説明変数, y: 目的変数
np.random.seed(0)
X = 2 * np.random.rand(100, 5)
# 5つの変数のうち、2つだけがyに影響すると仮定
y = 4 + 3 * X[:, 0] + 5 * X[:, 2] + np.random.randn(100)

# 訓練データとテストデータに分割
X_train, X_test, y_train, y_test = train_test_split(X, y, test_size=0.2, random_state=42)

# ラッソ回帰モデルの作成と学習
# alphaが正則化の強さλに相当
lasso_model = Lasso(alpha=0.1)
lasso_model.fit(X_train, y_train)

# 学習後の係数(重み)を表示
print("ラッソ回帰の係数:")
print(lasso_model.coef_)

# 予測と評価
y_pred = lasso_model.predict(X_test)
mse = mean_squared_error(y_test, y_pred)
print(f"\nテストデータの平均二乗誤差: {mse:.2f}")

# alphaを強くした場合
strong_lasso_model = Lasso(alpha=1.0)
strong_lasso_model.fit(X_train, y_train)
print("\nalpha=1.0の場合の係数:")
print(strong_lasso_model.coef_)
        
実行結果のポイント

上記のコードを実行すると、alpha=0.1の時点でも、元々yの生成に関与していない変数の係数が0に近くなっていることがわかります。そして、alpha=1.0とペナルティを強くすると、いくつかの係数が完全に0になり、変数選択が行われている様子が確認できます。

まとめ

ラッソ回帰は、単なる回帰分析にとどまらず、不要な変数を自動で取り除く強力な機能を持つ手法です。その核心技術であるL1正則化は、ディープラーニングの世界でも過学習を防ぎ、モデルを効率化するための重要なテクニックとして応用されています。

文脈によって「ラッソ回帰」が線形モデルそのものを指す場合と、L1正則化の技術を指す場合がありますが、どちらも「不要なものを削ぎ落とし、モデルをシンプルにする」という共通の思想に基づいています。この概念を理解することで、機械学習モデルの構築や改善に役立てることができるでしょう。

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