画像認識のキホン!矩形領域(バウンディングボックス)を優しく解説

AIや画像認識の世界に足を踏み入れると、「矩形領域(くけいりょういき)」という言葉をよく目にします。なんだか難しそうに聞こえるかもしれませんが、これは画像認識技術を支える、とてもシンプルで重要な概念です。

この記事では、特に初心者の方に向けて「矩形領域」とは何か、そしてどのように使われるのかを分かりやすく解説していきます。

矩形領域とは?

矩形領域とは、その名の通り「矩形(長方形や正方形)の形をした領域」のことです。すべての角が直角の四角形で囲まれた範囲を指します。

画像認識の分野では、この矩形領域は「バウンディングボックス(Bounding Box)」とも呼ばれ、画像の中から特定の物体が「どこに」「どれくらいの大きさで」存在するかを示すために使われます。

例えば、猫の写真があったとき、その猫全体をぴったり囲む四角い枠を想像してみてください。その枠こそが、矩形領域(バウンディングボックス)です。

画像認識における2つの重要な役割

矩形領域は、特にAIを使った画像認識において、主に2つの重要な役割を担っています。

1. 物体検出 (Object Detection)

AIが画像や映像の中から特定の物体を見つけ出す技術を「物体検出」と呼びます。この技術の中核を担うのが矩形領域です。

AIは、画像内にある「車」「人」「信号機」といった物体を認識すると、その位置と大きさを表す矩形領域を出力します。これにより、単に「車がある」とわかるだけでなく、「画像のどの部分に車があるか」を正確に特定できます。

この技術は、自動運転で前方の車や歩行者を検知したり、工場の生産ラインで製品の不良品を見つけたりと、様々な場面で活用されています。

2. アノテーション (Annotation)

AIが物体を検出できるようになるためには、事前に大量の「正解データ(教師データ)」を使って学習させる必要があります。この正解データを作成する作業を「アノテーション」と呼びます。

画像のアノテーションでは、人間が画像のどこに何が写っているかを教えるために、物体を矩形領域で一つひとつ囲み、「これは猫です」「これは犬です」といったラベル(情報)を付けていきます。この地道な作業によって作られた大量の教師データを学習することで、AIは未知の画像に対しても物体検出ができるようになります。

矩形領域の表現方法

コンピュータが矩形領域を扱うためには、その位置と大きさを数値で表現する必要があります。一般的に、画像の左上の角を原点 (0, 0) とし、右方向をX軸のプラス、下方向をY軸のプラスとする座標系が使われます。

表現方法にはいくつかありますが、主に以下の2つの形式がよく使われます。

表現形式内容
(x, y, w, h) 形式矩形の左上の点のx座標, y座標と、矩形の幅(width), 高さ(height)の4つの数値で表現します。(100, 150, 300, 200) → 左上(100, 150)で幅300px, 高さ200pxの矩形
(x1, y1, x2, y2) 形式矩形の左上の点の座標(x1, y1)と、右下の点の座標(x2, y2)の4つの数値で表現します。(100, 150, 400, 350) → 左上(100, 150)と右下(400, 350)を結ぶ矩形

実践!Pythonで矩形を描画してみよう

実際にコードを書いて、画像に矩形領域を描画してみましょう。ここでは、画像処理で広く使われているPythonライブラリのOpenCVを使用します。

以下のコードは、黒い画像を作成し、その上に青色の矩形を描画する簡単な例です。

import cv2
import numpy as np
# 500x500の黒い画像を作成 (高さ x 幅 x 色チャネル)
# np.zeros は指定した形状の配列を0で初期化する関数
image = np.zeros((500, 500, 3), dtype="uint8")
# 描画する矩形の情報を定義
# (x1, y1) : 左上の座標
# (x2, y2) : 右下の座標
top_left = (100, 100)
bottom_right = (400, 400)
# 色を定義 (B, G, R) の順。ここでは青色
color = (255, 0, 0)
# 線の太さを定義
thickness = 2
# cv2.rectangle() 関数を使って画像に矩形を描画
# cv2.rectangle(画像, 左上の座標, 右下の座標, 色, 線の太さ)
cv2.rectangle(image, top_left, bottom_right, color, thickness)
# 結果をウィンドウに表示
cv2.imshow("Rectangle", image)
# キーが押されるまで待機
cv2.waitKey(0)
# すべてのウィンドウを閉じる
cv2.destroyAllWindows()

このコードを実行すると、黒い背景の中央に青い四角形が描画されたウィンドウが表示されます。OpenCVの`rectangle`関数は、画像、矩形の左上と右下の座標、色、線の太さを指定するだけで簡単に矩形を描くことができます。

まとめ

「矩形領域」は、画像内の物体の位置と大きさを示すためのシンプルな四角い枠であり、画像認識、特に物体検出の世界ではなくてはならない基本的な要素です。

  • 物体検出では、AIが物体の場所を特定するために使われます。
  • アノテーションでは、AIに物体の場所を教えるための教師データとして使われます。

この矩形領域という概念を理解することで、自動運転や顔認証など、私たちの身の回りにある多くのAI技術がどのように物体を認識しているのか、その第一歩を理解することができます。

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