Flask-OAuthlib 完全解説:FlaskアプリでのOAuth認証の導入と注意点

歴史的背景から現在のベストプラクティスまで

重要なお知らせ

Flask-OAuthlibは現在、積極的にメンテナンスされていません。 作者自身が、後継ライブラリである Authlib の利用を推奨しています。このブログ記事では Flask-OAuthlib について解説しますが、新規プロジェクトや既存プロジェクトのアップデートでは Authlib の利用を強く推奨します。

はじめに: Flask-OAuthlibとは?

Flask-OAuthlibは、PythonのWebフレームワークであるFlaskでOAuth認証・認可機能を実装するための拡張ライブラリです。

主な目的は以下の2点です:

  1. OAuthクライアント機能: Google、Twitter、GitHubなどの外部サービス (OAuthプロバイダ) のアカウントを利用して、自身のFlaskアプリケーションにログインする機能 (いわゆる「ソーシャルログイン」) を実装できます。
  2. OAuthプロバイダ機能: 自身のFlaskアプリケーションがOAuthプロバイダとなり、他のアプリケーションに対してAPIアクセスを認可する機能を提供します。

Flask-OAuthlibは、かつて広く使われていた Flask-OAuth の後継として開発されました。内部的には oauthlib というライブラリに依存しており、OAuth 1.0a と OAuth 2.0 の両方のプロトコルに対応しています。

Flaskとの親和性が高く、Flask-OAuth と同様のフレンドリーなAPIを提供することを目指して設計されました。

OAuthの基本概念

Flask-OAuthlibを理解する上で、OAuthの基本的な概念を知っておくことが重要です。OAuthは「認可」のためのプロトコルであり、「認証」そのものではありません。

OAuth 2.0 の主要な役割

  • リソースオーナー (Resource Owner): 保護されたリソース(例: ユーザーのプロフィール情報、写真など)の所有者。通常はエンドユーザー。
  • クライアント (Client): リソースオーナーの代わりに保護されたリソースへのアクセスを要求するアプリケーション。
  • 認可サーバー (Authorization Server): リソースオーナーの同意を得て、クライアントに対してアクセストークンを発行するサーバー。
  • リソースサーバー (Resource Server): 保護されたリソースをホストするサーバー。アクセストークンを検証し、リクエストに応答する。

OAuth 2.0 の主な認可フロー

OAuth 2.0 には、アプリケーションの種類や状況に応じていくつかの認可フロー(Grant Type)が定義されています。

フロー名 概要 主な用途
認可コードフロー (Authorization Code Grant) 最も一般的で安全なフロー。クライアントは認可サーバーから認可コードを取得し、それを使ってアクセストークンを取得する。クライアントシークレットを安全に保管できるサーバーサイドアプリケーション向け。 Webサーバーアプリケーション
インプリシットフロー (Implicit Grant) 認可サーバーから直接アクセストークンを受け取るフロー。クライアントシークレットを安全に保管できないクライアント向けだったが、セキュリティ上の懸念から現在では非推奨であり、認可コードフロー + PKCE の利用が推奨される。 JavaScriptなどを用いたブラウザベースのアプリケーション(過去)
リソースオーナーパスワードクレデンシャルフロー (Resource Owner Password Credentials Grant) ユーザーがクライアントに直接ユーザー名とパスワードを提供するフロー。信頼できるクライアント(例: 公式アプリ)でのみ使用されるべきで、一般的には推奨されない。 信頼できる自社製アプリケーション
クライアントクレデンシャルフロー (Client Credentials Grant) クライアント自身の認証情報(クライアントIDとシークレット)を使ってアクセストークンを取得するフロー。ユーザーの介入なしに、クライアントが自身の権限でAPIにアクセスする場合に使用する。 マシン間のAPIアクセス
デバイスコードフロー (Device Code Grant) ブラウザや入力機能が制限されたデバイス(スマートTV、CLIツールなど)で利用されるフロー。 スマートTV, IoTデバイス, CLIツール
リフレッシュトークンフロー (Refresh Token Grant) 有効期限の短いアクセストークンを再取得するためのフロー。リフレッシュトークンを用いて新しいアクセストークンを取得する。 アクセストークンの有効期限が切れた後の再取得

Flask-OAuthlib はこれらのフロー、特に認可コードフローやクライアントクレデンシャルフローなどの実装をサポートします。

Flask-OAuthlibの主な機能

Flask-OAuthlibは、主にクライアント機能とプロバイダ機能を提供します。

  • OAuth 1.0a, 1.0, 1.1, OAuth 2.0 クライアントサポート: 様々なバージョンのOAuthプロトコルに対応したクライアントを実装できます。
  • フレンドリーなAPI: Flask-OAuthと同様の直感的なAPIを提供し、移行を容易にします。
  • Flaskとの直接統合: Flaskアプリケーションにシームレスに組み込めます。Flaskのコンフィグレーションやセッションを利用できます。
  • RESTful APIの簡単な呼び出し: 取得したトークンを使って保護されたAPIリソースに簡単にアクセスするためのメソッド (get(), post() など) を提供します。
  • OAuth1 プロバイダサポート: HMAC-SHA1 や RSA-SHA1 署名方式に対応したOAuth1プロバイダを構築できます。
  • OAuth2 プロバイダサポート: Bearer トークンを用いたOAuth2プロバイダを構築できます。認可コードフロー、インプリシットフロー、リソースオーナーパスワードクレデンシャルフロー、クライアントクレデンシャルフローなどをサポートします。

インストール

Flask-OAuthlibはpipを使って簡単にインストールできます。

pip install Flask-OAuthlib

依存ライブラリである oauthlib も自動的にインストールされます。

最新の安定版は PyPI で公開されていますが、開発版は GitHub リポジトリで管理されています。ただし、前述の通り、現在は Authlib の利用が推奨されています。

使い方 (クライアント編)

外部のOAuthプロバイダ (例: Google, Twitter, GitHub) を利用してユーザー認証を行うクライアント側の実装例です。

1. OAuthオブジェクトの初期化とリモートアプリケーションの登録

まず、OAuth オブジェクトを作成し、接続したい外部サービス (リモートアプリケーション) を remote_app() メソッドで登録します。

from flask import Flask, redirect, url_for, session, request, jsonify
from flask_oauthlib.client import OAuth

app = Flask(__name__)
# 必ず SECRET_KEY を設定してください
app.secret_key = 'your_secret_key_here' # 実際のアプリケーションでは環境変数などから読み込むべきです

oauth = OAuth(app)

# 例: GitHub OAuth2クライアントの登録
github = oauth.remote_app(
    'github',
    consumer_key='YOUR_GITHUB_CLIENT_ID',         # GitHubから取得したClient ID
    consumer_secret='YOUR_GITHUB_CLIENT_SECRET',   # GitHubから取得したClient Secret
    request_token_params={'scope': 'user:email'}, # 要求する権限 (スコープ)
    base_url='https://api.github.com/',
    request_token_url=None,                       # OAuth2では使用しない
    access_token_method='POST',
    access_token_url='https://github.com/login/oauth/access_token',
    authorize_url='https://github.com/login/oauth/authorize'
)

# トークンを取得するための関数 (セッションに保存する例)
@github.tokengetter
def get_github_oauth_token():
    return session.get('github_token')

重要な設定項目:

  • consumer_key / consumer_secret: OAuthプロバイダから発行されたクライアントIDとクライアントシークレット。
  • request_token_params: 認可リクエスト時に追加で送信するパラメータ。特にscopeで要求する権限を指定します。
  • base_url: APIリクエストのベースとなるURL。
  • access_token_url: アクセストークンを取得するためのエンドポイントURL。
  • authorize_url: ユーザーをリダイレクトさせる認可エンドポイントURL。
  • @github.tokengetter デコレータ: Flask-OAuthlibがAPIリクエストを行う際に、保存されたアクセストークンを取得するための関数を定義します。通常はセッションやデータベースから取得します。

2. ログイン処理のルート

ユーザーにログインを促し、OAuthプロバイダの認可ページへリダイレクトさせるルートを作成します。

@app.route('/login')
def login():
    # ユーザーをGitHubの認可ページにリダイレクトさせる
    # callbackには、認可後にリダイレクトされる自アプリのURLを指定
    return github.authorize(callback=url_for('authorized', _external=True))

github.authorize() を呼び出すと、ユーザーはGitHubのログイン・認可画面に遷移します。

3. コールバック処理のルート

ユーザーがOAuthプロバイダでの認可を完了すると、指定したコールバックURLにリダイレクトされます。このルートでアクセストークンを取得し、セッションなどに保存します。

@app.route('/login/authorized')
def authorized():
    resp = github.authorized_response()
    if resp is None or resp.get('access_token') is None:
        return 'Access denied: reason={} error={}'.format(
            request.args['error'],
            request.args['error_description']
        )

    # アクセストークンをセッションに保存
    session['github_token'] = (resp['access_token'], '') # (token, secret) の形式で保存 (OAuth2ではsecretは空)
    session['github_user'] = github.get('user').data # 例: ユーザー情報を取得

    return redirect(url_for('index'))

github.authorized_response() で認可レスポンスを処理し、アクセストークンを取得します。取得したトークンは tokengetter で定義した関数がアクセスできる場所に保存します(この例ではセッション)。

トークン取得後、github.get()github.post() などを使って、保護されたAPIリソースにアクセスできます。

4. ログアウト処理のルート

セッションからトークン情報を削除します。

@app.route('/logout')
def logout():
    session.pop('github_token', None)
    session.pop('github_user', None)
    return redirect(url_for('index'))

5. 保護されたルートと情報表示

ログイン状態を確認し、取得したユーザー情報を表示する例です。

@app.route('/')
def index():
    if 'github_token' in session:
        user_info = session.get('github_user')
        if user_info:
            return 'Logged in as id: {} name: {}  Logout'.format(user_info.get('id'), user_info.get('login'))
        else:
             # APIアクセスに失敗した場合など
             return 'Logged in, but failed to fetch user info. Logout'
    return 'You are not logged in. Log in with GitHub'

if __name__ == '__main__':
    # HTTPSが推奨されますが、開発環境ではhttpでも動作します
    # 重要: OAuthプロバイダに登録するコールバックURLと一致させる必要があります
    app.run(debug=True, port=5000) # 必要に応じて host='localhost' を指定

注意点:

  • Flaskアプリケーションには必ず app.secret_key を設定してください。セッション管理に必要です。本番環境では推測困難な秘密鍵を使用し、安全に管理してください。
  • クライアントIDとクライアントシークレットは機密情報です。コードに直接埋め込まず、環境変数や設定ファイルなどから読み込むようにしてください。
  • コールバックURL (url_for('authorized', _external=True) で生成されるURL) は、OAuthプロバイダに登録したものと完全に一致する必要があります (http/https, ドメイン名, ポート番号, パス)。
  • _external=Trueurl_for に指定することで、絶対URLが生成されます。これはコールバックURLとして必要です。
  • ローカルでクライアントとプロバイダの両方をテストする場合、異なるポートで実行するなどして、セッションが衝突しないように注意が必要です。

使い方 (プロバイダ編)

Flask-OAuthlibを使って、自身のFlaskアプリケーションをOAuth 2.0プロバイダにする方法の概要です。クライアントアプリケーションからのアクセスを認可し、保護されたリソースへのアクセスを提供します。

1. OAuth2Providerオブジェクトの初期化

from flask import Flask, render_template, request, jsonify
from flask_sqlalchemy import SQLAlchemy # データモデルの例としてSQLAlchemyを使用
from flask_oauthlib.provider import OAuth2Provider
import datetime

app = Flask(__name__)
app.config['SQLALCHEMY_DATABASE_URI'] = 'sqlite:///oauth_provider.db' # 例: SQLite
app.config['SECRET_KEY'] = 'your_provider_secret_key' # クライアントと同様に必須
app.config['SQLALCHEMY_TRACK_MODIFICATIONS'] = False
db = SQLAlchemy(app)
oauth = OAuth2Provider(app)

# --- データモデルの定義 (例) ---
class User(db.Model):
    id = db.Column(db.Integer, primary_key=True)
    username = db.Column(db.String(80), unique=True, nullable=False)
    # ... (パスワードハッシュなど、通常のユーザーモデルに必要な属性)

class Client(db.Model):
    client_id = db.Column(db.String(40), primary_key=True)
    client_secret = db.Column(db.String(55), unique=True, index=True, nullable=False)
    user_id = db.Column(db.ForeignKey('user.id'))
    user = db.relationship('User')
    _redirect_uris = db.Column(db.Text)
    _default_scopes = db.Column(db.Text)
    # ... (クライアント名、クライアントタイプなど)

    @property
    def redirect_uris(self):
        if self._redirect_uris:
            return self._redirect_uris.split()
        return []

    @property
    def default_redirect_uri(self):
        return self.redirect_uris[0] if self.redirect_uris else None

    @property
    def default_scopes(self):
        if self._default_scopes:
            return self._default_scopes.split()
        return []

    @property
    def client_type(self):
        # 'public' または 'confidential' を返す
        return 'public' # 例

    @property
    def allowed_grant_types(self):
        # サポートするグラントタイプをリストで返す
        return ['authorization_code', 'password', 'client_credentials', 'refresh_token']

    @property
    def allowed_response_types(self):
        # サポートするレスポンスタイプをリストで返す
        return ['code', 'token']


class Token(db.Model):
    id = db.Column(db.Integer, primary_key=True)
    client_id = db.Column(db.String(40), db.ForeignKey('client.client_id'), nullable=False)
    client = db.relationship('Client')
    user_id = db.Column(db.Integer, db.ForeignKey('user.id'))
    user = db.relationship('User')
    token_type = db.Column(db.String(40)) # 'Bearer' など
    access_token = db.Column(db.String(255), unique=True)
    refresh_token = db.Column(db.String(255), unique=True)
    expires = db.Column(db.DateTime)
    _scopes = db.Column(db.Text)

    @property
    def scopes(self):
        if self._scopes:
            return self._scopes.split()
        return []

class Grant(db.Model):
    id = db.Column(db.Integer, primary_key=True)
    user_id = db.Column(db.Integer, db.ForeignKey('user.id'), nullable=False)
    user = db.relationship('User')
    client_id = db.Column(db.String(40), db.ForeignKey('client.client_id'), nullable=False)
    client = db.relationship('Client')
    code = db.Column(db.String(255), index=True, nullable=False)
    redirect_uri = db.Column(db.String(255))
    expires = db.Column(db.DateTime)
    _scopes = db.Column(db.Text)

    @property
    def scopes(self):
        if self._scopes:
            return self._scopes.split()
        return []

# --- OAuth Provider の設定 ---

# 現在ログインしているユーザーを取得する関数 (Flask-Loginなどを使うのが一般的)
def get_current_user():
    # ここで実際のログインユーザーを取得するロジックを実装
    # 例: Flask-Login の current_user を使う
    # from flask_login import current_user
    # if current_user.is_authenticated:
    #     return User.query.get(current_user.id)
    # return None
    # ダミー実装
    user = User.query.filter_by(username='testuser').first()
    if not user:
        user = User(username='testuser')
        db.session.add(user)
        db.session.commit()
    return user


@oauth.clientgetter
def load_client(client_id):
    return Client.query.filter_by(client_id=client_id).first()

@oauth.grantgetter
def load_grant(client_id, code):
    return Grant.query.filter_by(client_id=client_id, code=code).first()

@oauth.grantsetter
def save_grant(client_id, code, request, *args, **kwargs):
    # 認可コードを保存
    expires = datetime.datetime.utcnow() + datetime.timedelta(seconds=100)
    grant = Grant(
        client_id=client_id,
        code=code['code'],
        redirect_uri=request.redirect_uri,
        _scopes=' '.join(request.scopes),
        user=get_current_user(), # 現在のユーザーを取得
        expires=expires
    )
    db.session.add(grant)
    db.session.commit()
    return grant

@oauth.tokengetter
def load_token(access_token=None, refresh_token=None):
    if access_token:
        return Token.query.filter_by(access_token=access_token).first()
    elif refresh_token:
        return Token.query.filter_by(refresh_token=refresh_token).first()
    return None

@oauth.tokensetter
def save_token(token, request, *args, **kwargs):
    # 既存のトークンを削除 (プロバイダのポリシーによる)
    toks = Token.query.filter_by(client_id=request.client.client_id,
                                 user_id=request.user.id).all()
    for t in toks:
        db.session.delete(t)

    expires_in = token.get('expires_in')
    expires = datetime.datetime.utcnow() + datetime.timedelta(seconds=expires_in)

    new_token = Token(
        access_token=token['access_token'],
        refresh_token=token.get('refresh_token'),
        token_type=token['token_type'],
        _scopes=token['scope'],
        expires=expires,
        client_id=request.client.client_id,
        user_id=request.user.id
    )
    db.session.add(new_token)
    db.session.commit()
    return new_token

@oauth.usergetter
def get_user(username, password, *args, **kwargs):
    # Password Credentials Grant のためのユーザー検証ロジック
    # 本番環境ではパスワードハッシュを比較する
    user = User.query.filter_by(username=username).first()
    if user and user.check_password(password): # check_password は自分で実装する必要がある
        return user
    return None

プロバイダの実装には、クライアント、認可コード (Grant)、トークンなどを永続化するためのデータモデルと、それらを操作するための関数 (clientgetter, grantgetter, grantsetter, tokengetter, tokensetter など) を OAuth2Provider オブジェクトに登録する必要があります。

2. 認可エンドポイントとトークンエンドポイント

クライアントアプリケーションがアクセスするエンドポイントを定義します。

@app.route('/oauth/authorize', methods=['GET', 'POST'])
@oauth.authorize_handler
def authorize(*args, **kwargs):
    # ユーザーがログインしていなければログインページにリダイレクト
    user = get_current_user()
    if not user:
        # Flask-Loginなどのログイン処理へ
        return redirect(url_for('login_page', next=request.url))

    if request.method == 'GET':
        # ユーザーに認可を求めるフォームを表示
        client_id = kwargs.get('client_id')
        client = Client.query.filter_by(client_id=client_id).first()
        kwargs['client'] = client
        kwargs['user'] = user
        # scopes は kwargs['scopes'] にリストで入っている
        return render_template('authorize_form.html', **kwargs) # 認可フォーム用のテンプレート

    # POSTリクエストはユーザーがフォームで許可/拒否した場合
    confirm = request.form.get('confirm', 'no')
    return confirm == 'yes'


@app.route('/oauth/token', methods=['POST'])
@oauth.token_handler
def access_token():
    # この関数自体は通常空で良い
    # @oauth.token_handler がトークン発行処理を行う
    return None
  • /oauth/authorize: ユーザーにクライアントアプリケーションへのアクセス許可を求めるページを表示し、同意を得るエンドポイント。
  • /oauth/token: クライアントアプリケーションが認可コードやリフレッシュトークン、クレデンシャルなどを提示してアクセストークンを要求するエンドポイント。

@oauth.authorize_handler@oauth.token_handler デコレータが、OAuthプロトコルの複雑な処理の多くを担当します。

3. 保護されたリソースエンドポイント

アクセストークンを使ってアクセスできるAPIエンドポイントを定義します。

@app.route('/api/me')
@oauth.require_oauth('email') # 要求するスコープを指定
def me(req):
    # req.user にはアクセストークンに対応するユーザーオブジェクトが入る
    user = req.user
    return jsonify(id=user.id, username=user.username)

@app.route('/api/client')
@oauth.require_oauth() # クライアントクレデンシャル用のエンドポイント例
def client_api(req):
    # req.client にはクライアントオブジェクトが入る
    client = req.client
    return jsonify(client_id=client.client_id, client_secret=client.client_secret) # 注意: シークレットを返すのは通常非推奨

# データベースの初期化 (初回実行時など)
@app.cli.command('init-db')
def init_db_command():
    """Clear the existing data and create new tables."""
    db.create_all()
    print('Initialized the database.')
    # 必要に応じてテスト用のクライアントやユーザーを作成
    if not User.query.filter_by(username='testuser').first():
        test_user = User(username='testuser')
        # test_user.set_password('password') # パスワード設定処理を実装する
        db.session.add(test_user)

    if not Client.query.filter_by(client_id='test_client').first():
         client = Client(
             client_id='test_client',
             client_secret='test_secret', # 本番ではランダム生成する
             _redirect_uris='http://localhost:5000/login/authorized http://127.0.0.1:5000/login/authorized', # 開発用コールバックURL例
             _default_scopes='email profile',
             user=User.query.filter_by(username='testuser').first() # クライアント所有者
         )
         db.session.add(client)
    db.session.commit()
    print('Added test user and client.')


if __name__ == '__main__':
    app.run(debug=True, port=8000) # クライアントと異なるポートで実行

@oauth.require_oauth() デコレータを使用することで、リクエストに有効なアクセストークンが含まれているか、また必要なスコープを持っているかを検証できます。検証が成功すると、リクエストオブジェクト (req) に userclient 属性が追加され、アクセスできるようになります。

注意点:

  • プロバイダの実装はクライアントよりも複雑です。データモデルの設計、ユーザー認証の実装、各getter/setter関数の正確な実装が求められます。
  • セキュリティは非常に重要です。トークンの安全な保存、HTTPSの強制、クライアント認証、スコープの適切な管理などを徹底する必要があります。
  • 上記のコードは基本的な例であり、実際のアプリケーションではエラーハンドリング、ロギング、より堅牢なセキュリティ対策が必要です。
  • ユーザー認証部分はFlask-Loginなどのライブラリと組み合わせることが一般的です。

Flask-OAuthlib の現在と代替ライブラリ

Flask-OAuthlib のメンテナンス状況

Flask-OAuthlib の開発は停滞しており、最後のリリース (バージョン 0.9.6) は 2020年9月 です。GitHubリポジトリやPyPIページでも、作者によって後継ライブラリである Authlib の利用が強く推奨されています。

Authlib は Flask-OAuthlib の作者によって開発されており、よりモダンで、機能が豊富で、活発にメンテナンスされています。

なぜ Authlib なのか?

  • 活発な開発: Authlib は継続的に開発・改善されており、最新のOAuth/OIDC仕様への追従やセキュリティ修正が行われています。
  • より良い設計: Flask-OAuthlib で得られた知見をもとに、より堅牢で拡張性の高い設計になっています。内部的に requests ライブラリを使用しており、HTTPリクエストの扱いが改善されています。
  • 豊富な機能: OAuth 1.0, OAuth 2.0 クライアント/プロバイダに加え、OpenID Connect (OIDC), JSON Web Token (JWT), JWS, JWE, JWK, JWA など、認証・認可に関する幅広い仕様をサポートしています。
  • フレームワーク非依存コア: コア部分は特定のWebフレームワークに依存せず、Flask, Django, Starlette, FastAPI など、様々なフレームワークとの連携が可能です。
  • ドキュメントと例: Flask-OAuthlibよりも充実したドキュメントと豊富なサンプルコードが提供されています。

Flask-OAuthlib から Authlib への移行

Authlib の Flask クライアント API は Flask-OAuthlib と似ている部分が多く、移行は比較的容易に行えるように設計されています。主な変更点はインポートパスや一部の設定方法、デコレータの使用法などです。

例えば、クライアントの登録は以下のようになります。

# --- Flask-OAuthlib ---
# from flask_oauthlib.client import OAuth
# oauth = OAuth(app)
# github = oauth.remote_app(...)

# --- Authlib ---
from authlib.integrations.flask_client import OAuth
oauth = OAuth(app)
# または oauth = OAuth(); oauth.init_app(app) でも可
github = oauth.register(
    name='github',
    client_id='YOUR_GITHUB_CLIENT_ID',
    client_secret='YOUR_GITHUB_CLIENT_SECRET',
    access_token_url='https://github.com/login/oauth/access_token',
    access_token_params=None,
    authorize_url='https://github.com/login/oauth/authorize',
    authorize_params=None,
    api_base_url='https://api.github.com/',
    client_kwargs={'scope': 'user:email'} # スコープ指定方法などが異なる場合がある
)

設定の読み込み方法や authorized_handler デコレータの廃止など、細かい違いについては Authlib のドキュメントや移行ガイドを参照してください。

Authlib のドキュメント: https://docs.authlib.org/en/latest/client/flask.html

Authlib の GitHub リポジトリには、Flask, Django, FastAPI などを使ったサンプルコードも多数含まれています。

GitHub サンプル (クライアント): https://github.com/authlib/demo-oauth-client

GitHub サンプル (サーバー): https://github.com/authlib/example-oauth2-server

結論として、これからFlaskアプリケーションにOAuth機能を実装する場合、または既存のFlask-OAuthlib実装を更新する場合には、Authlib を選択することを強くお勧めします。

まとめ

Flask-OAuthlib は、かつて Flask で OAuth 認証・認可を実装するための便利なライブラリでした。クライアント機能とプロバイダ機能の両方を提供し、Flask との連携も容易でした。

しかし、現在では開発が停滞しており、作者自身が後継ライブラリである Authlib の利用を推奨しています。Authlib はよりモダンで高機能、活発にメンテナンスされており、Flask を含む多くの Python Web フレームワークで利用可能です。

この記事では Flask-OAuthlib の基本的な概念と使い方を解説しましたが、今後の開発においては Authlib を検討することが、より良い選択となるでしょう。OAuth は Web アプリケーションのセキュリティとユーザー体験において重要な役割を果たします。適切なライブラリを選択し、安全な実装を心がけましょう。

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