[PHPのはじめ方] Part19: 継承、インターフェース、トレイト

オブジェクト指向プログラミング(OOP)の世界へようこそ！前回はクラスとオブジェクトの基本について学びましたね。今回は、コードの再利用性を高め、より柔軟で保守しやすいコードを書くための強力な武器、継承 (Inheritance)、インターフェース (Interface)、トレイト (Trait) について詳しく見ていきましょう。✨

これらの概念を理解することで、PHPでの開発がさらに効率的で楽しくなりますよ！

継承は、既存のクラス（親クラスまたはスーパークラス）の機能を引き継いで、新しいクラス（子クラスまたはサブクラス）を作成する仕組みです。これにより、共通の機能を何度も書く必要がなくなり、コードの重複を減らすことができます。

PHPでは、extends キーワードを使ってクラスを継承します。

基本的な使い方

<?php

// 親クラス
class Animal {
    public string $name;
    protected string $sound = '鳴き声'; // 子クラスからアクセス可能

    public function __construct(string $name) {
        $this->name = $name;
    }

    public function makeSound(): void {
        echo $this->name . 'は「' . $this->sound . '」と鳴きます。<br>';
    }
}

// 子クラス (Animalクラスを継承)
class Dog extends Animal {
    // 親クラスのプロパティやメソッドを引き継ぐ
    // 親クラスの protected プロパティを上書き
    protected string $sound = 'ワン！';

    // 新しいメソッドを追加
    public function wagTail(): void {
        echo $this->name . 'は尻尾を振っています。<br>';
    }

    // 親クラスのメソッドをオーバーライド(上書き)
    public function makeSound(): void {
        // 親クラスの同名メソッドを呼び出すことも可能
        // parent::makeSound();
        echo $this->name . 'は元気に「' . $this->sound . '」と鳴きます！ 🐕<br>';
    }
}

$animal = new Animal('どうぶつ');
$animal->makeSound(); // 出力: どうぶつは「鳴き声」と鳴きます。


$pochi = new Dog('ポチ');
$pochi->makeSound(); // 出力: ポチは元気に「ワン！」と鳴きます！ 🐕

$pochi->wagTail(); // 出力: ポチは尻尾を振っています。


?>

継承のポイント 💡

• コードの再利用: 親クラスのコードを子クラスで再利用できる。
• 階層構造: クラス間に「is-a」関係（例: Dog is an Animal）を表現できる。
• protected: 親クラスと子クラス間でのみアクセス可能なメンバーを定義できる。
• オーバーライド: 親クラスのメソッドを子クラスで再定義できる。parent::で親クラスのメソッドを呼び出せる。
• 単一継承: PHPでは、クラスは一つの親クラスしか継承できません（多重継承は不可）。

インターフェースは、クラスが実装すべきメソッドの契約（ルール）を定義するものです。インターフェース自体は具体的な処理（実装）を持ちませんが、「このクラスはこれらのメソッドを持っているべきだ」ということを保証します。

これにより、異なるクラス間で共通の操作を保証したり、設計の柔軟性を高めたりすることができます。

PHPでは、interface キーワードでインターフェースを定義し、implements キーワードでクラスに実装します。

基本的な使い方

<?php

// ログ出力に関するインターフェース
interface Logger {
    // 実装すべきメソッドのシグネチャ（名前、引数、戻り値の型）を定義
    public function log(string $message): void;
}

// ファイルにログを出力するクラス
class FileLogger implements Logger {
    private string $logFile;

    public function __construct(string $logFile) {
        $this->logFile = $logFile;
    }

    // インターフェースで定義されたメソッドを必ず実装する
    public function log(string $message): void {
        $logEntry = date('[Y-m-d H:i:s]') . ' ' . $message . PHP_EOL;
        file_put_contents($this->logFile, $logEntry, FILE_APPEND);
        echo "ファイルにログを記録しました: {$message}<br>";
    }
}

// データベースにログを出力するクラス（例）
class DatabaseLogger implements Logger {
    // データベース接続などのプロパティ（省略）

    public function log(string $message): void {
        // データベースにログを保存する処理（省略）
        echo "データベースにログを記録しました: {$message}<br>";
    }
}

// インターフェース型を使って、異なるロガーを同じように扱える
function processLog(Logger $logger, string $info): void {
    $logger->log($info);
}

$fileLogger = new FileLogger('app.log');
$dbLogger = new DatabaseLogger();

processLog($fileLogger, 'ユーザーがログインしました。');
processLog($dbLogger, 'データベース接続エラーが発生しました。');

?>

インターフェースのポイント 💡

• 契約の強制: インターフェースを実装するクラスは、インターフェースで定義された全てのメソッドを実装しなければならない。
• 実装の分離: インターフェースは「何をするか（What）」を定義し、クラスは「どうやるか（How）」を実装する。
• ポリモーフィズム: 同じインターフェースを実装した異なるクラスのオブジェクトを、インターフェース型として統一的に扱える（上のprocessLog関数の例）。
• 多重実装: クラスは複数のインターフェースを実装できる（implements Interface1, Interface2のようにカンマで区切る）。
• メソッドのみ: インターフェースにはメソッドのシグネチャのみ定義でき、プロパティは定数（const）のみ定義可能。

トレイトは、クラスに特定の機能（メソッド群）を組み込む（ミックスインする）ための仕組みです。継承はクラスの階層構造（is-a関係）を表現しますが、トレイトは特定の機能（has-a機能）を複数の異なるクラス階層で再利用したい場合に便利です。

PHPは単一継承しかサポートしていないため、複数のクラスから機能を継承したいという要求に応えられない場合があります。トレイトは、この単一継承の制約を回避し、コードの再利用性を高めるための効果的な手段です。

PHPでは、trait キーワードでトレイトを定義し、use キーワードでクラスに組み込みます。

基本的な使い方

<?php

// タイムスタンプ機能を提供するトレイト
trait Timestampable {
    protected ?\DateTimeImmutable $createdAt = null;
    protected ?\DateTimeImmutable $updatedAt = null;

    public function setTimestamps(): void {
        if ($this->createdAt === null) {
            $this->createdAt = new \DateTimeImmutable();
        }
        $this->updatedAt = new \DateTimeImmutable();
    }

    public function getCreatedAt(): ?\DateTimeImmutable {
        return $this->createdAt;
    }

    public function getUpdatedAt(): ?\DateTimeImmutable {
        return $this->updatedAt;
    }

    public function getFormattedCreatedAt(string $format = 'Y-m-d H:i:s'): string {
        return $this->createdAt ? $this->createdAt->format($format) : 'N/A';
    }
}

class Article {
    use Timestampable; // トレイトをクラスに組み込む

    public string $title;
    public string $content;

    public function __construct(string $title, string $content) {
        $this->title = $title;
        $this->content = $content;
        $this->setTimestamps(); // トレイトのメソッドを呼び出す
    }
}

class Comment {
    use Timestampable;

    public string $author;
    public string $text;

    public function __construct(string $author, string $text) {
        $this->author = $author;
        $this->text = $text;
        $this->setTimestamps();
    }
}

$article = new Article('トレイト入門', 'トレイトは便利です...');
echo '記事作成日時: ' . $article->getFormattedCreatedAt() . '<br>'; // 出力例: 記事作成日時: 2025-04-05 06:11:00


$comment = new Comment('PHP学習者', 'なるほど！');
echo 'コメント作成日時: ' . $comment->getFormattedCreatedAt() . '<br>'; // 出力例: コメント作成日時: 2025-04-05 06:11:00


?>

トレイトのポイント 💡

• コードの再利用（水平方向）: クラス階層に関係なく、共通の機能を複数のクラスで再利用できる。
• 単一継承の制限回避: 実質的に複数のソースからメソッドを「継承」するような効果を得られる。
• メソッドの提供: トレイトは主にメソッドを提供するために使われる（プロパティも持てる）。
• 複数利用可能: クラスは複数のトレイトを使用できる（use Trait1, Trait2;のようにカンマで区切る）。
• コンフリクト解決: 複数のトレイトで同名のメソッドがある場合、insteadof（どちらのメソッドを使うか指定）やas（メソッドに別名をつける）を使って解決する必要がある。

これらの概念は似ているようで目的が異なります。適切に使い分けることが重要です。

簡単な判断基準:

• クラス間に明確な「is-a」関係があるなら → 継承
• 異なるクラスに共通の「振る舞い（メソッド）」を強制したいなら → インターフェース
• 特定の「機能（メソッド群）」を複数のクラスで使いまわしたいなら → トレイト

今回は、PHPのオブジェクト指向プログラミングにおける重要な概念である継承、インターフェース、トレイトについて学びました。

• 継承はクラスの階層構造を作り、コードを再利用します。
• インターフェースは実装すべきメソッドを定義し、クラス間の契約を結びます。
• トレイトは単一継承の制限を超えて、機能をクラスに組み込みます。

これらの概念を理解し、適切に使い分けることで、より柔軟で、再利用性が高く、保守しやすいPHPコードを書くことができるようになります。💪

次回は、クラスの機能をさらに整理し、大規模な開発でもコードを管理しやすくする名前空間とオートローディングについて学びます。お楽しみに！