デンドログラム(樹形図)とは?データ分析の基本をわかりやすく解説

データ分析の世界に足を踏み入れると、「デンドログラム」という言葉を耳にすることがあります。これは「樹形図(じゅけいず)」とも呼ばれ、一見すると複雑に見えるかもしれませんが、データの関係性を視覚的にわかりやすく表現してくれる非常に便利なツールです。

この記事では、IT初心者の方でも理解できるように、デンドログラムの基本的な意味から、その見方、さらには実際の活用例までを丁寧に解説していきます。

デンドログラムの2つの主な意味

デンドログラムは、主に2つの文脈で使われます。どちらも「何かが階層的に分岐・統合していく様子」を示す図である点は共通しています。

  1. 階層的クラスタリングの結果
    ITやデータ分析の分野で最も一般的に使われるのがこの意味です。クラスタリングとは、たくさんのデータの中から似たもの同士を集めてグループ(クラスタ)に分ける手法のことです。中でも階層的クラスタリングは、最も似ているデータから順番にペアにして、徐々に大きなグループへとまとめていく手法です。 デンドログラムは、この「データが次々とまとめられていく過程」を木の枝が伸びていくような図で表現したものです。 これにより、どのデータとどのデータが似ているのか、いくつのグループに分けるのが適切か、などを直感的に判断することができます。
  2. 系統樹
    生物学や言語学などの分野では、生物の進化の過程や言語の成り立ちを表す「系統樹」としてデンドログラムが使われます。 例えば、様々な生物の遺伝子情報を比較し、どの種がどの種から分岐したのか、その関係性の近さを示すために利用されます。

このブログでは、主にIT分野で使われる「階層的クラスタリングの結果」としてのデンドログラムに焦点を当てて解説を進めます。

デンドログラムの見方

デンドログラムは、その見方さえ分かれば、データに関する多くの情報を読み取ることができます。 基本的な見方のポイントは以下の通りです。

  • 軸の意味
    通常、一方の軸(多くは横軸)には分析対象の各データ(サンプルや個体)が並べられます。もう一方の軸(縦軸)は、データ間の「距離」や「非類似度」を表します。 この距離が小さいほど、データ同士が似ていることを意味します。
  • 枝の結合点
    2つ(またはそれ以上)の枝が1つにまとまる結合点は、そのデータ同士がグループ(クラスタ)として統合されたことを示します。 結合点の縦軸の位置が低い(距離が小さい)ほど、似ている者同士のグループであることを意味します。
  • クラスタの数を決める(カットする)
    デンドログラムをある「高さ(距離)」で水平にカットすることを想像してみてください。 その線が交差する枝の数が、その時点でのクラスタの数になります。どこでカットするかは分析の目的によって変わりますが、縦に長い枝が続く部分(次の結合までの距離が長い部分)でカットすると、性質の異なるグループにうまく分割できることが多いです。

ビジネスや研究での活用例

デンドログラムは、様々な分野でデータの構造を理解し、意思決定に役立てるために活用されています。

分野具体的な活用例
マーケティング顧客の購買履歴、Webサイトの閲覧行動、アンケート回答といったデータから顧客をいくつかのセグメントに分類します。 これにより、各セグメントの特性に合わせた商品開発や広告配信などのマーケティング戦略を立てることができます。
生物学・遺伝子解析様々な生物種の遺伝子情報を比較し、進化の過程でどのように種が分かれていったのかを示す「系統樹」を作成するために使われます。 これにより、種間の遺伝的な関係性を明らかにすることができます。
文書分類・テキストマイニング大量のニュース記事やSNSの投稿などを、内容の類似度に基づいてグループ分けします。これにより、話題のトレンドを把握したり、関連性の高い文書をまとめて要約したりすることが可能になります。
商品開発市場に出ている競合商品のスペックやユーザー評価などを分析し、デンドログラムで可視化します。 これにより、市場のポジショニングを把握し、自社が狙うべき商品の特徴を明確にすることができます。

Pythonによるデンドログラム作成の初歩

プログラミング言語のPythonを使えば、比較的簡単にデンドログラムを作成することができます。ここでは、データ分析でよく使われるライブラリ `scikit-learn` と `scipy` を使った簡単な例を紹介します。

このコードは、いくつかのサンプルデータに対して階層的クラスタリングを行い、その結果をデンドログラムとして描画するものです。(実際の描画部分は省略しています)

# 必要なライブラリをインポート
import numpy as np
from scipy.cluster.hierarchy import dendrogram, linkage
from sklearn.datasets import make_blobs
# サンプルデータを作成
# 10個のサンプルを2次元で生成
X, y = make_blobs(n_samples=10, centers=3, n_features=2, random_state=42)
# 階層的クラスタリングを実行
# linkage関数は、データ間の距離を計算し、クラスタを形成する過程を記録します
# 'ward'はクラスタ内の分散を最小化する方法の一つです
linked = linkage(X, method='ward')
# デンドログラムを描画するための準備
# dendrogram関数にlinkageの結果を渡すことで描画できます
# plt.figure(figsize=(10, 7))
# dendrogram(linked,
# orientation='top',
# labels=np.arange(1, 11), # 各データにラベルを付ける
# distance_sort='descending',
# show_leaf_counts=True)
# plt.show() # 実際にグラフを表示する命令
print("デンドログラムの描画準備が完了しました。")
print("linkageの結果(クラスタリングの過程):")
print(linked)

`linkage` 関数が返す配列には、どのデータ同士が、どの距離で結合されたか、といった情報が格納されており、この情報を元に `dendrogram` 関数が樹形図を描画します。 実際にコードを実行してグラフを表示させると、データがグループ化されていく様子を視覚的に確認できます。

まとめ

デンドログラム(樹形図)は、データ間の類似性や階層構造を直感的に理解するための強力な可視化ツールです。 主に階層的クラスタリングの結果を表すために使われ、マーケティングの顧客分析から生物学の系統樹作成まで、幅広い分野で活用されています。

一見複雑に見えるかもしれませんが、軸の意味や枝の結合点が何を表しているかを理解すれば、誰でもデータの背後にある関係性を読み解くことができます。データ分析の世界への第一歩として、ぜひデンドログラムの考え方に親しんでみてください。

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