ネットワークインターフェース (Link) 管理
ネットワークデバイス(物理/仮想インターフェース)の状態表示や設定変更を行います。
link オブジェクトは、ネットワークデバイス自体の設定(MACアドレス、MTU、状態など)を扱います。省略形は l です。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| 全インターフェース情報表示 | または | システムに存在する全てのネットワークインターフェースの状態(UP/DOWNなど)、MACアドレス、MTUなどの基本情報を表示します。 |
| 特定インターフェース情報表示 | | 指定したインターフェース(この例では eth0)の詳細情報を表示します。 |
| インターフェース統計情報表示 | または | インターフェースごとの送受信パケット数、エラー数、ドロップ数などの統計情報を表示します。-s オプションを複数つける(-ss など)と、より詳細な情報が表示されます。 |
| インターフェース有効化 (UP) | | 指定したインターフェース(eth0)を有効化し、通信可能な状態にします。 |
| インターフェース無効化 (DOWN) | | 指定したインターフェース(eth0)を無効化し、通信を停止します。注意: リモート接続中のインターフェースをDOWNさせると接続が切断されます。 |
| MTU (Maximum Transmission Unit) 変更 | | インターフェース(eth0)のMTU値を1400バイトに変更します。ネットワーク環境に合わせて調整します。 |
| MACアドレス変更 | | インターフェース(eth0)のMACアドレスを指定した値に変更します。変更前にインターフェースを一度DOWNさせる必要があります。 |
| インターフェース名変更 | | インターフェース(eth0)の名前を wan0 に変更します。管理しやすい名前に変更する際に使用します。変更前にインターフェースをDOWNさせる必要があります。 |
| プロミスキャスモード設定 | | インターフェース(eth0)をプロミスキャスモード(無差別モード)に設定します。有効にすると、自身宛でないパケットも受信するようになります。パケットキャプチャなどで使用します。 |
IPアドレス (Address) 管理
インターフェースへのIPアドレス(IPv4/IPv6)の割り当て、削除、表示を行います。
address オブジェクトは、インターフェースに紐づくプロトコルアドレス(主にIPアドレス)を扱います。省略形は addr または a です。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| 全IPアドレス情報表示 | または | 全てのインターフェースに割り当てられているIPアドレス(IPv4, IPv6)、関連情報(スコープなど)を表示します。最もよく使われるコマンドの一つです。 |
| 特定インターフェースのIP表示 | | 指定したインターフェース(eth0)に割り当てられているIPアドレス情報を表示します。 |
| IPv4アドレスのみ表示 | | IPv4アドレスのみを表示します。 |
| IPv6アドレスのみ表示 | | IPv6アドレスのみを表示します。 |
| IPアドレス追加 | | 指定したインターフェース(eth0)にIPアドレス(192.168.1.100)とプレフィックス長(/24)を追加します。 |
| IPアドレス削除 | | 指定したインターフェース(eth0)から指定したIPアドレスとプレフィックス長の組み合わせを削除します。 |
| セカンダリIPアドレス追加(ラベル付き) | | 一つのインターフェース(eth0)に複数のIPアドレスを割り当てる場合に使用します。label オプションでエイリアス名を指定できます(互換性のため)。ラベルなしでも追加可能です。 |
| インターフェースの全IPアドレス削除 (Flush) | | 指定したインターフェース(eth0)に割り当てられている全てのIPアドレス(IPv4/IPv6)を削除します。DHCPで再取得する場合などに使用します。 |
ルーティング (Route) 管理
カーネルのルーティングテーブルの表示、追加、削除を行います。
route オブジェクトは、パケットの経路情報を管理します。省略形は r です。Linuxは複数のルーティングテーブルを持つことができます(main, local など)。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| ルーティングテーブル表示 (main) | または | メインのルーティングテーブル(main テーブル)の内容を表示します。デフォルトゲートウェイや静的ルートなどが含まれます。 |
| 特定のテーブル表示 (例: local) | | 指定したルーティングテーブル(この例では local)の内容を表示します。local テーブルにはローカルインターフェースやブロードキャストアドレスなどが自動的に登録されます。 |
| 特定の宛先への経路表示 | | 指定した宛先IPアドレス(8.8.8.8)へのパケットがどの経路(インターフェース、ゲートウェイ)を通るかを表示します。経路選択の確認に便利です。 |
| デフォルトゲートウェイ追加 | | デフォルトゲートウェイ(192.168.1.1)を経由するルートを、インターフェース eth0 に追加します。 |
| デフォルトゲートウェイ削除 | または | 設定されているデフォルトゲートウェイのルートを削除します。 |
| 静的ルート追加 (ネットワーク宛) | | 10.10.0.0/16 ネットワーク宛のパケットを、ゲートウェイ 192.168.1.254 を経由してインターフェース eth0 から送信するように静的ルートを追加します。 |
| 静的ルート削除 (ネットワーク宛) | | 指定したネットワーク宛の静的ルートを削除します。 |
| 静的ルート追加 (ホスト宛) | | 特定のホスト(172.16.10.5)宛のパケットを指定したゲートウェイ(192.168.1.253)経由で送信するルートを追加します。/32 はホスト指定を意味します。 |
| 静的ルート削除 (ホスト宛) | | 指定したホスト宛の静的ルートを削除します。 |
ポリシーベースルーティング (Rule)
送信元IPアドレスやその他の条件に基づいて、使用するルーティングテーブルを切り替えるルールを設定します。
rule オブジェクトは、どのルーティングテーブルを参照するかのルールを管理します。省略形は ru です。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| ルーティングルール表示 | または | 現在設定されているルーティングポリシーのルールを優先度順に表示します。デフォルトでは local, main, default テーブルを参照するルールが存在します。 |
| ルール追加 | | 新しいルーティングルールを追加します。送信元IP (from)、宛先IP (to)、インターフェース (iif/oif) などの条件と、参照するテーブルID (table)、優先度 (priority) を指定します。小さい優先度値が先に評価されます。テーブルIDは /etc/iproute2/rt_tables で名前を定義できます。 |
| ルール削除 | | 指定した条件に一致するルーティングルールを削除します。表示されたルールと同じ条件を指定します。 |
近隣キャッシュ (Neighbour/ARP) 管理
ARPテーブル (IPv4) や NDISCキャッシュ (IPv6) の表示、追加、削除を行います。
neighbour オブジェクトは、同一リンク上の他のホストのIPアドレスとMACアドレス(レイヤー2アドレス)の対応関係を管理します。省略形は neigh または n です。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| 近隣キャッシュ表示 (ARP/NDISC) | または | 現在の近隣キャッシュ(ARPテーブル/NDISCテーブル)のエントリ一覧を表示します。IPアドレス、MACアドレス、インターフェース、状態(STALE, REACHABLE, PERMANENTなど)が表示されます。 |
| 特定インターフェースのキャッシュ表示 | | 指定したインターフェース(eth0)に関連するキャッシュエントリのみを表示します。 |
| 特定IPアドレスのエントリ表示 | | 指定したIPアドレス(192.168.1.1)に対応するキャッシュエントリを表示します。 |
| 静的エントリ追加 (ARP) | | 指定したIPアドレス(192.168.1.50)とMACアドレス(lladdr、Link-Layer Address)の対応を静的に追加します。nud permanent で永続的なエントリ(削除されない)として登録します。Proxy ARPなどで使用されることがあります。 |
| エントリ削除 | | 指定したIPアドレスとインターフェースに対応するキャッシュエントリを削除します。動的エントリも削除できます。 |
| キャッシュクリア (Flush) | | 指定したインターフェース(eth0)の近隣キャッシュを全て削除します。ネットワーク構成変更後のトラブルシューティングなどで使用します。nud all を指定すると全状態のエントリを削除できます。 |
トンネル (Tunnel) 管理
IPトンネル(GRE, IPIPなど)の作成、設定、削除を行います。
tunnel オブジェクトは、IPトンネリングインターフェースを管理します。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| GREトンネル作成 | | tun0 という名前のGREトンネルインターフェースを作成します。remote で対向側の物理IPアドレス、local で自側の物理IPアドレス、ttl でトンネルパケットのTTLを指定します。 |
| IPIPトンネル作成 | | tun1 という名前のIPIPトンネルインターフェースを作成します。GREと同様に remote と local を指定します。 |
| トンネルインターフェース設定 | | 作成したトンネルインターフェースを有効化し、IPアドレスを割り当てて通信可能にします。 |
| トンネル情報表示 | または | 作成されているトンネルインターフェースの一覧や詳細情報を表示します。-d オプションで詳細表示になります。 |
| トンネル削除 | | 指定したトンネルインターフェース(tun0)を削除します。削除前にインターフェースをDOWNさせるのが一般的です。 |
ネットワーク名前空間 (Netns) 管理
独立したネットワーク環境(ネットワーク名前空間)の作成、管理、操作を行います。
netns オブジェクトは、ネットワーク名前空間を管理します。コンテナ技術などで活用されます。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| 名前空間一覧表示 | | 存在するネットワーク名前空間の一覧を表示します。 |
| 名前空間作成 | | myns1 という名前の新しいネットワーク名前空間を作成します。作成直後はループバックインターフェース (lo) のみが存在します。 |
| 名前空間内でコマンド実行 | | 指定した名前空間(myns1)のコンテキストでコマンドを実行します。これにより、その名前空間内のネットワーク設定を確認・変更できます。 |
| インターフェースを名前空間へ移動 | | 物理または仮想インターフェースを指定した名前空間に移動します。veth ペアを作成して名前空間間を接続する際などによく使われます。 |
| 名前空間削除 | | 指定したネットワーク名前空間(myns1)を削除します。内部にインターフェースが残っている場合は通常削除できません。 |
| 名前空間のプロセスID (PID) 確認 | | 指定した名前空間(myns1)に属しているプロセスのIDを表示します。 |
| 名前空間を識別 (ID取得) | | 指定したプロセスIDが属するネットワーク名前空間の名前を表示します。 |
モニター (Monitor) 機能
ネットワークの状態変化(リンクのUP/DOWN、アドレス変更、ルート変更など)をリアルタイムで監視します。
monitor オブジェクトは、カーネルからのネットワーク関連イベントを継続的に表示します。
| 目的 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| 全てのネットワークイベント監視 | | リンク、アドレス、ルート、近隣キャッシュなど、全てのネットワークオブジェクトの状態変化を監視し、イベントが発生するたびに情報を表示します。Ctrl+C で停止します。 |
| リンクイベント監視 | | ネットワークインターフェース(リンク)の状態変化(UP/DOWN、MTU変更など)のみを監視します。 |
| アドレスイベント監視 | | IPアドレスの追加や削除などのイベントのみを監視します。 |
| ルートイベント監視 | | ルーティングテーブルの変更(ルート追加/削除)イベントのみを監視します。 |
| 近隣キャッシュイベント監視 | | 近隣キャッシュ(ARP/NDISC)の変更イベントのみを監視します。 |