NIST SP800-37って何? 初心者向けリスク管理フレームワーク(RMF)入門

情報セキュリティ対策の「羅針盤」

はじめに: NIST SP800-37とは?

皆さんの会社や組織では、たくさんの情報(データ)を扱っていますよね? 顧客情報、技術情報、財務情報など、どれも大切な資産です。これらの情報が漏洩したり、改ざんされたり、使えなくなったりしたら大変です 。

そこで登場するのが「情報セキュリティ対策」ですが、「具体的に何を、どうすればいいの?」と迷ってしまうこともありますよね。

NIST SP800-37 は、そんな情報セキュリティ対策の進め方を示した「ガイドブック」のようなものです。NIST(ニスト)とは、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)の略称で、様々な技術標準を作っている機関です。SP800-37は、そのNISTが発行している文書の一つで、特にリスク管理フレームワーク(RMF: Risk Management Framework)について詳しく解説しています。

簡単に言うと、RMFは「組織の情報システムを守るために、リスクをきちんと評価して、適切な対策を計画的に実行し、継続的に見直していくための手順」を示したものです。このブログでは、このNIST SP800-37 (RMF) について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます!

リスク管理フレームワーク(RMF)とは?

RMFは、情報セキュリティのリスクを管理するための体系的なアプローチです。場当たり的な対策ではなく、組織全体で、計画的に、そして継続的にセキュリティレベルを維持・向上させることを目指します。

最新版である NIST SP800-37 Revision 2 (2018年12月公開) では、従来のセキュリティリスクに加え、プライバシーリスクやサプライチェーンリスク管理(SCRM)も考慮に入れるなど、より現代的な脅威に対応できるようになっています。また、特定の政府機関だけでなく、民間組織など、より幅広い組織での利用が推奨されています。

RMFは、情報システムのライフサイクル(企画、開発、運用、廃棄など)全体を通じて適用されるべき考え方であり、以下の7つのステップで構成されています。

RMFの7つのステップ

RMFは以下の7つのステップを順番に進めていきます。各ステップを見ていきましょう。

ステップ名称 (英語)やること (概要)ポイント
1準備 (Prepare)RMFを実施するための組織的な準備。役割分担、リスク管理戦略、継続的監視戦略などを確立する。しっかりとした準備が成功の鍵!組織全体で取り組みます。
2分類 (Categorize)情報システムや扱う情報を、機密性・完全性・可用性への影響度に基づいて分類する。守るべきものの重要度を決めます。何が一番大事?
3選択 (Select)分類結果に基づき、適切なセキュリティ管理策(対策)を選択・調整する。(NIST SP800-53などが参考にされる)重要度に合わせて、必要な対策を選びます。過剰でも不足でもダメ
4実装 (Implement)選択した管理策を情報システムに導入し、どのように導入したかを文書化する。計画した対策を実行に移します。ちゃんと動くように設定!
5評価 (Assess)実装した管理策が、意図した通りに機能し、要件を満たしているかを評価する。対策がちゃんと効果を発揮しているかチェック! テストも重要です。
6承認 (Authorize)評価結果に基づき、情報システムの運用に伴うリスクを受容できるか、責任者が判断し、運用を承認(または否認)する。責任者が「この状態でシステムを動かしてOK」と判断します。
7監視 (Monitor)情報システムと管理策の状態を継続的に監視し、リスクの変化に対応する。必要に応じてステップ1~6を見直す。一度承認されたら終わりじゃない!常に状況をチェックし続けます

ポイント: この7つのステップは一度やったら終わりではなく、継続的に監視 (Monitor) し、状況の変化に合わせて見直しを行うライフサイクルアプローチが重要です。

なぜRMFが重要なのか?

RMFを導入・実践することには、以下のようなメリットがあります。

  • 体系的なリスク管理: 場当たり的な対策ではなく、組織全体で一貫したアプローチでリスクに対応できます。
  • セキュリティレベルの向上: 重要な情報資産を特定し、適切な対策を講じることで、セキュリティインシデントの発生確率や影響を低減できます。
  • コンプライアンス対応: 法規制や業界標準などが求めるセキュリティ要件への対応がしやすくなります。
  • コスト効率の改善: リスクに応じた適切な対策を選択・実装することで、無駄な投資を避け、コスト効率の良いセキュリティ対策が実現できます。
  • 継続的な改善: 監視ステップを通じて、常にセキュリティ対策の有効性を評価し、改善し続ける文化を醸成できます。
  • プライバシー保護の強化: Revision 2 ではプライバシーリスク管理も統合されており、個人情報保護への取り組みも強化できます。

まとめ

NIST SP800-37 (RMF) は、情報セキュリティ対策を進める上で非常に強力な「羅針盤」 となります。7つのステップを通じて、組織はリスクを効果的に管理し、情報資産を保護するための堅牢な基盤を築くことができます。

最初は難しく感じるかもしれませんが、ステップごとに着実に進めていくことで、組織のセキュリティは確実に向上します。ぜひ、このフレームワークを理解し、自社のセキュリティ対策に活かしてみてください!

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