サイバー脅威情報を自動交換!TAXIIって何?🤔

初心者向けにTAXIIプロトコルを分かりやすく解説します。

TAXIIとは?

TAXII(タクシーと読みます)は、Trusted Automated eXchange of Indicator Information の略で、サイバー攻撃に関する脅威情報を、組織やシステム間で自動的に交換するための「通信ルール(プロトコル)」です。🚗💨

昔は、新しいサイバー攻撃の情報(例えば、攻撃に使われる不正なIPアドレスやウイルスの特徴など)が見つかっても、メールや電話、人手での情報共有が中心でした。これだと、情報が届くまでに時間がかかったり、形式がバラバラで使いにくかったりしました。

そこで登場したのがTAXIIです! TAXIIを使うことで、脅威情報を標準化された方法で、安全かつ効率的に、リアルタイムでやり取りできるようになります。これにより、最新の脅威に素早く対応できるようになるのです。🛡️

TAXIIは、アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)によって開発が始まり、現在はオープンスタンダード(誰でも利用できる標準規格)としてOASISという非営利団体によって管理されています。

TAXIIの仕組み:どうやって情報を交換するの?

TAXIIは、情報を送る側(TAXIIサーバー)と受け取る側(TAXIIクライアント)の間で通信を行います。クライアントがサーバーに「新しい情報はある?」と問い合わせ(リクエスト)、サーバーが情報を提供する(レスポンス)という、一般的なWebサービスと同じような仕組み(クライアントサーバーモデル)です。通信には安全なHTTPSが使われます。

TAXIIにはいくつかの重要な概念があります。

  • コレクション (Collection): TAXIIサーバーが提供する脅威情報の保管場所のようなものです。クライアントは特定のコレクションを指定して情報を要求します。例えば、「マルウェア情報コレクション」や「フィッシングサイト情報コレクション」のように分類されています。(TAXII 2.xで主に使われます)
  • APIルート (API Root): TAXIIサーバーが提供するAPI(サービスの窓口)のURLです。一つのサーバーが複数のAPIルートを持つこともあります。(TAXII 2.x)
  • チャネル (Channel): 特定のテーマに関する情報をリアルタイムに配信するための仕組みです。(TAXII 1.xで使われていましたが、TAXII 2.1では予約語として定義されており、将来のバージョンで実装される予定です)
  • 共有モデル: TAXIIは、様々な情報共有の形に対応できます。
    • ハブ&スポーク: 中央のサーバー(ハブ)が情報を集約し、各組織(スポーク)に配信するモデル。
    • ピアツーピア: 組織同士が直接情報を交換するモデル。
    • ソース/サブスクライバー: 情報提供者(ソース)から購読者(サブスクライバー)へ一方向に情報を流すモデル。
  • データ共有方式:
    • プル型 (Pull): クライアントが必要な時にサーバーに情報を要求して取得する方式。
    • プッシュ型 (Push): サーバーが新しい情報をクライアントに自動的に送りつける方式。(TAXII 1.xのチャネルなどで使われました)

STIXとの関係:情報はどんな形式?

TAXIIと非常によく一緒に使われるのがSTIX(スティックス: Structured Threat Information eXpression)です。

TAXIIが「情報を運ぶための輸送手段(プロトコル)」だとすると、STIXは「運ばれる情報の中身(データ形式)」を定義する言語です。🚚📦

STIXを使うと、サイバー攻撃に関する様々な情報(攻撃者の情報、攻撃の手法、使用されたマルウェア、脆弱性、対策など)を、構造化された標準的な形式(主にJSON形式)で記述できます。

TAXIIとSTIXは独立した標準ですが、組み合わせて使うことで、脅威情報の「内容」と「伝達方法」の両方を標準化でき、非常に効率的な情報共有が実現します。多くのTAXII実装では、STIX形式のデータをやり取りすることが前提となっています。

TAXIIのバージョン

TAXIIにはいくつかのバージョンがあります。主な違いは以下の通りです。

項目 TAXII 1.x (例: 1.0, 1.1) TAXII 2.x (例: 2.0, 2.1)
主なリリース年 2013年頃~ 2017年頃~ (2.1は比較的新しい)
通信プロトコル HTTP/HTTPS HTTPS (必須)
メッセージ形式 XML JSON
APIスタイル SOAP/RESTに似た独自形式 RESTful API
主な概念 Collection, Channel, Feed API Root, Collection
使いやすさ やや複雑 よりシンプルで導入しやすい

現在では、よりモダンで使いやすい TAXII 2.x (特に2.1) が主流となっています。RESTful APIを採用しているため、他のWebサービスとの連携や開発が容易になっています。

TAXIIを使うメリット ✨

  • 自動化 人手による作業が減り、情報共有プロセスが効率化される。
  • 迅速性 最新の脅威情報がリアルタイムに近い形で共有され、素早い対応が可能になる。
  • 標準化 決まった形式(STIX)と手順(TAXII)で情報が交換されるため、異なるツールや組織間でも互換性が保たれる。
  • 連携強化 ISAC(情報共有分析センター)やセキュリティベンダー、企業間での協力が促進される。
  • 脅威検知・対応の向上 共有された脅威情報(IoCなど)をセキュリティ機器(SIEM, ファイアウォール等)に自動で取り込み、防御力を高めることができる。

どんなところで使われているの?

TAXIIは、以下のような場面で活用されています。

  • ISAC (Information Sharing and Analysis Center): 業界ごと(金融、医療、重要インフラなど)の情報共有センターが、加盟組織間で脅威情報を共有するために利用。
  • セキュリティベンダー: 自社で収集した脅威インテリジェンスを顧客や他のベンダーと共有。
  • 大企業や政府機関: 組織内や関連組織との間で、脅威情報を効率的に流通させるために利用。
  • 脅威インテリジェンスプラットフォーム (TIP): 様々なソースから脅威情報を収集し、TAXIIを通じて提供・受信するプラットフォーム。Microsoft Sentinel なども TAXII フィードの接続をサポートしています。
  • オープンソースの脅威情報: 公開されている脅威情報フィードがTAXIIサーバーを通じて提供されることもあります。

例えば、ある企業が新しいタイプのマルウェアに感染した際、そのマルウェアの特徴(ファイルハッシュ値や通信先のIPアドレスなど)をSTIX形式で記述し、TAXIIサーバーを通じて業界のISACに共有します。ISACは受け取った情報を他の加盟企業にTAXIIで配信し、各企業は自社のセキュリティ対策にその情報を迅速に反映させる、といった活用が行われています。

まとめ

TAXIIは、サイバー脅威情報を自動で交換するための重要なプロトコルです。STIXと組み合わせることで、標準化された脅威情報を効率的かつ迅速に共有でき、組織のセキュリティ対策を強化する上で欠かせない技術となっています。サイバー攻撃が高度化・巧妙化する現代において、TAXIIによる情報連携の重要性はますます高まっています。🤝🌍