初心者向け解説!RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは?

近年、「RPA」という言葉を耳にする機会が増えましたが、「具体的にどういうものかよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。 このページでは、RPAとは何か、その仕組み、メリットやデメリット、そしてどのような業務で活用できるのかを、IT初心者の方にもわかりやすく解説します。

RPAは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略称です。 簡単に言うと、「パソコンで行う定型的な事務作業を自動化する技術」のことです。 ソフトウェアロボット(デジタルレイバーとも呼ばれる)が、人間が行っていたパソコン上の操作(マウス操作、キーボード入力、クリック、コピー&ペーストなど)を記憶し、正確に再現することで業務を自動化します。

これまで人間が手作業で行ってきた、ルールが決まっている繰り返し作業(ルーチンワーク)をRPAに任せることで、業務の効率化や生産性の向上を目指します。 RPAは物理的なロボットではなく、あくまでソフトウェアとしてパソコンやサーバー上で動作します。

RPAが注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。

  • 労働人口の減少と人手不足: 少子高齢化により、多くの企業で人手不足が深刻化しています。限られた人材で業務を遂行するため、RPAによる自動化が求められています。
  • 働き方改革の推進: 長時間労働の是正や多様な働き方の実現に向け、業務効率化が不可欠です。RPAは、従業員を単純作業から解放し、より創造的な業務に集中させる手段として期待されています。
  • 技術の進化: AI(人工知能)や機械学習といった技術の発展により、RPAができることの幅が広がっています。OCR(光学的文字認識)と連携して紙の書類をデータ化し、そのデータをRPAが処理するといった活用も進んでいます。
  • コスト削減への要求: 経済環境の変化に伴い、企業は常にコスト削減を意識しています。RPAは人件費や採用・教育コストの削減に貢献する可能性があります。

RPAツールは、主にその導入・実行形態によって3つの種類に分けられます。それぞれに特徴があり、自動化したい業務の規模や内容によって適したタイプが異なります。

種類 特徴 メリット デメリット 主な利用シーン
デスクトップ型 (RDA) 個々のパソコンにインストールして利用するタイプ。RDA (Robotic Desktop Automation) とも呼ばれる。 ・導入が比較的容易
・低コストで始められる(スモールスタート向き)
・個人の定型作業を自動化しやすい
・他のPCとの連携が難しい
・管理が分散しやすい
・ロボット稼働中はPCが使えない場合がある
・個人のPC上の作業自動化
・特定の部署や小規模な導入
・RPA導入の第一歩として
サーバー型 自社のサーバーにRPAソフトウェアをインストールし、複数のロボットを集中管理・実行するタイプ。 ・大量の業務を自動化できる
・複数ロボットの一元管理が可能
・部門横断的な大規模導入に適している
・セキュリティ管理がしやすい
・導入・運用コストが高い
・サーバー構築・管理が必要
・導入に専門知識が必要な場合がある
・全社的な業務自動化
・大量データ処理
・基幹システムとの連携
・ガバナンス強化が必要な場合
クラウド型 インターネット経由で提供されるRPAサービスを利用するタイプ。ソフトウェアのインストールは不要。 ・サーバー管理が不要
・場所を選ばずに利用可能
・導入が迅速
・初期費用を抑えやすい
・主にWebブラウザ上の作業が対象
・オフライン環境では利用不可
・カスタマイズ性に制限がある場合がある
・セキュリティポリシーの確認が必要
・Webベースの業務自動化
・テレワーク環境での利用
・迅速な導入が必要な場合

※ツールによっては、複数のタイプに対応しているものもあります。

  • 業務効率化と生産性向上: 定型作業を自動化することで、人間よりも高速かつ24時間365日稼働させることが可能になり、業務時間を大幅に削減できます。
  • コスト削減: 単純作業にかかる人件費、残業代、採用・教育コストなどを削減できます。
  • 品質向上とヒューマンエラー削減: 設定されたルール通りに正確に作業を実行するため、人間が行う場合に起こりがちな入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーを防ぎ、業務品質を高めます。
  • コア業務への集中: 従業員は単純作業から解放され、分析、企画、判断といった付加価値の高い「コア業務」に集中できるようになります。
  • 従業員満足度の向上: 単調な繰り返し作業から解放されることで、従業員のモチベーション向上や労働環境の改善につながる可能性があります。
  • 人材育成: 現場担当者がロボット作成に関わることで、業務プロセス改善の視点が身につき、ITスキルや問題解決能力の向上が期待できます。
  • 導入・運用コスト: RPAツールのライセンス費用や、導入支援、保守、ロボット開発・修正などにコストがかかります。無料ツールもありますが、機能制限がある場合が多いです。
  • 業務停止のリスク: システムの仕様変更やWebサイトのデザイン変更などにより、RPAロボットが正しく動作しなくなる可能性があります。定期的なメンテナンスが必要です。
  • 情報漏洩のリスク: RPAが機密情報や個人情報にアクセスする場合、不正アクセスや設定ミスによる情報漏洩のリスクがあります。適切なアクセス権限管理やセキュリティ対策が不可欠です。
  • 対応できない業務: RPAは基本的にルール化された定型作業を得意とします。人間の判断が必要な業務、頻繁に手順が変わる業務、非定型的な業務には向いていません。
  • ブラックボックス化: 誰がどのようなロボットを作成し、運用しているのか管理されていないと、担当者の異動や退職時に引き継ぎができず、ロボットが管理不能な「ブラックボックス」になる可能性があります。適切な管理体制の構築が重要です。
  • 導入効果が出ない可能性: 自動化する業務の選定ミスや、費用対効果の低い業務を自動化してしまうと、期待した効果が得られないことがあります。

RPAは、さまざまな部門や業界で活用されています。以下に具体的な業務例を挙げます。

部門/業務 自動化される作業例
経理・会計 ・請求書発行、データ入力
・入金消込、仕訳入力
・経費精算チェック
・合計残高試算表作成
・月次決算業務の一部自動化
人事・労務 ・勤怠データの集計、チェック
・給与計算関連データの入力
・従業員情報の登録・更新
・36協定関連の通知
営業・営業事務 ・顧客リスト作成、データ入力
・見積書・契約書作成補助
・Webサイトからの情報収集(競合調査、入札情報チェック)
・日報作成補助、商談記録の転記
総務・情報システム ・備品管理データの更新
・アカウント発行・権限設定
・システムログの監視・レポート作成
・名刺情報のデータ入力
その他 ・複数システム間のデータ転記・連携
・定型的なメールの作成・送信
・帳票のPDF化と保存
・問い合わせ対応の一部(FAQに基づいた一次回答など)

上記以外にも、業界特有の業務(例:金融機関での口座開設処理、製造業での部品表データ入力、小売業での売上データ集計など)でもRPAは活用されています。

RPAは、パソコンで行う定型的な事務作業を自動化する強力なツールです。 導入することで、業務効率化、コスト削減、品質向上など多くのメリットが期待できます。 一方で、導入・運用コストや業務停止リスクなどのデメリットも存在するため、自社の課題や目的に合ったツールを選び、適切な管理体制のもとで導入・活用することが重要です。

まずは、自社の業務の中で「ルールが決まっている」「繰り返し行っている」「時間がかかっている」といった作業がないか見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

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