初心者向け!MDR(Managed Detection and Response)とは何かをやさしく解説

近年、サイバー攻撃はますます巧妙化・増加しており、企業や組織にとってセキュリティ対策は非常に重要になっています。そんな中、「MDR」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか。

この記事では、IT初心者の方にもわかりやすく、MDRとは何か、どのような役割を果たすのかを解説します。

MDRとは?

MDRは「Managed Detection and Response」の略称です。日本語では「マネージド検知・対応サービス」などと訳されます。

簡単に言うと、MDRはサイバー攻撃の脅威を24時間365日体制で見つけ出し(Detection)、見つけた脅威に対して迅速に対応する(Response)までの一連の流れを、外部のセキュリティ専門家チームが代行してくれるサービスです。

自社だけで高度なセキュリティ体制を構築・維持するのは、専門知識を持つ人材の確保やコスト面で難しい場合があります。MDRは、そうした課題を解決し、企業が本来の業務に集中できるように支援します。

具体的には、以下のような機能を提供します。

  • ネットワークやエンドポイント(PC、サーバーなど)の常時監視
  • 不審な動きやサイバー攻撃の兆候の検知
  • 検知した脅威の分析と危険度の判断(トリアージ)
  • 脅威の封じ込めや除去などの対応
  • インシデント(事故)発生後の調査と報告
  • 再発防止策の提案

これらの作業を、高度なセキュリティ技術と経験豊富な専門家(SOCアナリストなど)が連携して行います。

MDRが注目される背景

MDRが注目されるようになった背景には、いくつかの要因があります。

  • サイバー攻撃の増加と高度化:ランサムウェア(2017年のWannaCryなど)をはじめとするサイバー攻撃は年々増加し、その手口も巧妙になっています。従来の対策だけでは防ぎきれない攻撃が増えています。
  • セキュリティ人材の不足:高度なセキュリティ知識を持つ人材は世界的に不足しており、多くの企業で人材確保が課題となっています。
  • 迅速な対応の必要性(ブレイクアウトタイムの短縮):攻撃者がシステムに侵入してから内部で活動を広げるまでの時間(ブレイクアウトタイム)が短くなっています。被害を最小限に抑えるには、侵入を早期に検知し、迅速に対応することが不可欠です。

これらの課題に対応するため、外部の専門家の力を借りられるMDRサービスの需要が高まっています。調査会社Gartnerは、2025年までに半数の企業がMDRサービスを利用するようになると予測しています。

MDRと他のセキュリティ用語との違い

MDRと混同しやすいセキュリティ関連の用語がいくつかあります。それぞれの違いを理解しておきましょう。

用語主な特徴MDRとの違い
EDR
(Endpoint Detection and Response)
PCやサーバーなどのエンドポイントに特化した脅威検知・対応ツール。侵入後の不審な挙動を検知し、対応を支援する。MDRはEDRを含む様々な技術を活用し、専門家による分析・対応サービスまで提供する点が異なる。EDRはツール、MDRはサービス。
XDR
(Extended Detection and Response)
エンドポイント、ネットワーク、クラウドなど、複数のセキュリティレイヤーから情報を収集・分析し、統合的に脅威を検知・対応する技術・アプローチMDRサービスの中には、XDRの技術基盤を活用しているものもある。XDRは技術やアプローチ、MDRはそれを活用したマネージドサービス。
MSSP
(Managed Security Service Provider)
ファイアウォール管理、脆弱性診断、ログ監視など、幅広いセキュリティ運用管理サービスを提供する事業者。MSSPは幅広い運用管理が中心。MDRは特に脅威の検知と対応(インシデントレスポンス)に特化し、より積極的な脅威ハンティングや対応を行う点が異なる場合が多い。ただし、MSSPがMDRサービスを提供することもある。
SOC
(Security Operation Center)
セキュリティ監視・分析を行う組織やチームのこと。自社内に設置する場合(プライベートSOC)と、外部に委託する場合がある。MDRサービスは、外部のSOC機能を提供する形態の一つと言える。MDRプロバイダーは自社のSOCを活用してサービスを提供する。
NDR
(Network Detection and Response)
ネットワークトラフィックを監視し、不審な通信や脅威を検知・対応するツールまたは技術MDRはNDRの機能を取り込んでサービス提供する場合がある。NDRはネットワークに特化したツール、MDRはより広範なサービス。

MDRのメリット

  • セキュリティレベルの向上: 専門家による24時間365日の監視と最新の脅威インテリジェンス活用により、高度なサイバー攻撃への対応力が向上します。
  • 専門人材不足の解消: 自社で高度なセキュリティ人材を採用・育成する必要がなく、外部の専門知識を活用できます。
  • 迅速なインシデント対応: 脅威検知から対応までのプロセスが効率化され、被害を最小限に抑えるための迅速な初動対応が可能になります。
  • コスト効率: 自社で同レベルのSOCを構築・運用するよりもコストを抑えられる可能性があります。
  • 本来業務への集中: セキュリティ運用を専門家に任せることで、社内IT担当者は他の重要な業務に集中できます。

MDRのサービスタイプ

MDRサービスは、提供される対応範囲によって大きく2つのタイプに分けられることがあります。

  • セミマネージド型:脅威の検知、分析、通知、対応策の提案までを行い、実際の対応(隔離や復旧など)は顧客企業側が行うタイプ。
  • フルマネージド型:脅威の検知から分析、通知、提案に加え、実際の封じ込めや復旧といった技術的な対応までMDRプロバイダーが実施するタイプ。

どちらのタイプが適しているかは、自社のセキュリティ体制やリソース、求めるサポートレベルによって異なります。

「MDR」の他の意味

「MDR」という略語は、IT・セキュリティ分野以外でも使われることがあります。文脈によっては注意が必要です。

  • 医療機器規則 (Medical Device Regulation): 特に欧州(EU)における医療機器に関する規制を指す場合に使われます。IT分野の文脈でなければ、こちらの意味である可能性もあります。

このブログ記事では、主にサイバーセキュリティにおける「Managed Detection and Response」について解説しています。

まとめ

MDR(Managed Detection and Response)は、サイバー攻撃の脅威検知から対応までを外部の専門家チームが支援するサービスです。

人材不足やコスト、専門知識の課題を抱える企業にとって、セキュリティ体制を強化するための有効な選択肢となります。自社の状況に合わせて、MDRサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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