[COBOLのはじめ方] Part1: COBOLの歴史と用途(業務系での活用)

COBOL

📜 COBOLの誕生とその背景

COBOL(コボル)は、1959年にアメリカで生まれたプログラミング言語です。「Common Business Oriented Language」(共通事務処理用言語)の頭文字をとって名付けられました。その名の通り、ビジネス、特に事務処理を効率的に行うために開発された言語です。

1950年代、コンピューターは主に科学技術計算に使われており、FORTRANなどの言語が存在しましたが、専門知識が必要でした。一方で、企業では会計処理や在庫管理などの事務処理をコンピューター化したいというニーズが高まっていました。しかし、メーカーごとに異なる言語が使われており、互換性がありませんでした。

この状況を解決するため、アメリカ国防総省が主導し、コンピューターメーカーやユーザーが集まってCODASYL(Conference on Data Systems Languages、データシステムズ言語協議会)が設立されました。この協議会によって、特定のコンピューターに依存しない、英語に近く読み書きしやすい事務処理用言語としてCOBOLが設計されました。コンピューター科学者のグレース・ホッパー氏が開発したFLOW-MATIC言語の影響を受けています。

COBOLの登場により、アメリカ政府機関のシステムはCOBOLで開発されるようになり、これが世界的な普及につながりました。

📈 COBOLの発展と標準化

COBOLは、1960年に最初の仕様(COBOL-60)が公開されて以降、時代の要請に合わせて何度も改訂され、進化してきました。

  • ANSI(米国国家規格協会)やISO(国際標準化機構)によって標準化され、異なるメーカーのコンピューターでも動作する移植性が高まりました。
  • COBOL85規格は長らく主流として使われてきました。
  • 新しいバージョン(例: COBOL 2002、COBOL 2014、最新規格 ISO/IEC 1989:2023)では、構造化プログラミングの強化やオブジェクト指向の導入など、現代的なプログラミングスタイルに対応するための機能拡張が行われています。

これらの進化により、COBOLは60年以上の長い歴史を持ちながらも、変化するビジネス要件に対応し続けてきました。

💼 主な用途(業務系での活用)

COBOLは、その設計思想から、特に大量のデータを正確かつ高速に処理する必要がある業務システムの開発に強みを発揮します。具体的には、以下のような分野で広く利用され、現在も多くのシステムが稼働しています。

COBOLが得意とする業務分野

  • 金融機関(銀行、証券、保険): 勘定系システム(口座管理、入出金処理、利息計算)、為替処理、保険契約管理、証券取引処理など。ATM取引の95%以上、対面取引の80%がCOBOLシステムによって支えられているという報告もあります。
  • 官公庁・自治体: 税務システム、社会保障システム(年金、健康保険)、住民記録管理など、国民生活に不可欠な大規模システム。
  • 企業の基幹システム: 会計システム、給与計算、人事管理、在庫管理、受発注システム、生産管理など、企業の根幹を支えるシステム。
  • 予約システム: 航空券やホテルの予約・空席管理など、大量のトランザクション処理が求められるシステム。
  • その他: 流通業の販売管理、製造業の工程管理など、様々な業界の基幹業務。

COBOLは特に、金額計算など10進数の計算を正確に行える(2進化10進数を使用)ため、金融業務との相性が非常に良いとされています。また、帳票出力機能が充実している点も、事務処理で重宝される理由の一つです。

🤔 なぜ今も使われ続けているのか?

JavaやPythonなど新しいプログラミング言語が登場する中で、なぜCOBOLは今でも現役なのでしょうか?主な理由は以下の通りです。

  • 膨大な既存資産: 世界中で何千億行ものCOBOLプログラムが、今も社会や企業の重要インフラを支えています。これらを新しい言語で書き換えるには、莫大なコストと時間がかかり、移行リスクも伴います。
  • 信頼性と安定性: COBOLは長年の実績があり、特に大量の定型業務処理において高い信頼性と安定性を誇ります。金融システムなど、絶対に止めることが許されないシステムで信頼されています。
  • 処理性能: 大規模なバッチ処理など、特定の処理においては依然として高いパフォーマンスを発揮します。
  • 保守性と可読性: 英語に近い自然言語風の構文は、比較的読みやすく、仕様変更などに対応しやすい(保守性が高い)という側面もあります。書き手による差が出にくいとも言われます。
  • モダナイゼーションの進展: COBOL自体も進化しており、クラウド環境での利用や、Javaなど他の言語との連携も可能になってきています。必ずしも「古いまま」ではありません。

一方で、COBOL技術者の高齢化と後継者不足は課題とされており、これがCOBOLシステムの維持・更新におけるリスク要因となっています。しかし、裏を返せば、COBOLスキルを持つエンジニアの需要は依然として存在し、希少価値が高まっているとも言えます。

✨ COBOLの現在と未来

「COBOLは古い言語」というイメージがあるかもしれませんが、それは一面的な見方です。新規開発案件は減少傾向にあるものの、既存システムの維持・保守、機能拡張、そして新しい技術との連携(モダナイゼーション)といった分野で、COBOLは今も重要な役割を担っています。

IPA(情報処理推進機構)の調査でも、日本国内の開発プロジェクトにおいて、Javaに次いでCOBOLが利用されているというデータがあります(特に大規模プロジェクト)。

今後、全てのCOBOLシステムがすぐに他の言語に置き換わることは考えにくく、むしろ既存のCOBOL資産を活かしながら、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく動きが主流になると考えられます。

COBOLを学ぶことは、単に古い技術を学ぶのではなく、社会や企業の基盤を支えるシステムを理解し、その維持・発展に貢献できるスキルを身につけることにつながります。

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